128th JGS: 2021

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Oral

T3.[Topic Session]Collaboration and advance of geological, experimental, and seismological research on slow earthquakes

[1ch113-20] T3.[Topic Session]Collaboration and advance of geological, experimental, and seismological research on slow earthquakes

Sat. Sep 4, 2021 1:00 PM - 3:30 PM ch1 (ch1)

Chiar:Kohtaro Ujiie, Ken-ichi Hirauchi, Simon Richard Wallis

2:00 PM - 2:15 PM

[T3-O-12] Temporal changes in pore fluid pressure during slow earthquake cycle estimated from foliation-parallel extension veins

*Makoto Otsubo1, Kohtaro Ujiie2, Hanae Saishu1, Ayumu Miyakawa1 (1. Geological Survey of Japan, 2. University of Tsukuba)

Keywords:Slow earthquake, Fluid, Extension crack, Quartz, Subduction

間隙流体圧(Pf)はスロー地震発生域での力学を理解する上で重要な要素の一つであり,石英の濃集と間隙流体圧の上昇プロセスが沈み込み帯でのスロー地震発生を制御している可能性が議論されている(例えば,Hyndman et al., 2015).
我々は,沈み込み帯スロー地震発生域における間隙流体圧と流体移動に注目し,九州東部の白亜紀後期の四万十帯である槙峰メランジュにおいて,モードIクラックを埋めるfoliationに平行の石英脈(foliation parallel extension veins, 以下FPEVとする)の形成中の間隙流体圧を推定した.ここでは,比較的若くて温かい海洋地殻が深度10〜15 kmの摩擦-粘性遷移に沈み込んだ際のプレート境界の変形として考えられており,槙峰メランジュでは最高被熱温度は300〜350度に達する(Palazzin et al., 2016).宮崎県延岡市直海の海岸露頭では,槙峰メランジュは石英で満たされた3タイプの脈,剪断脈(shear veins, 以下SVとする),foliationに平行な伸長脈(FPEV),および雁行状の伸長亀裂を充填する脈(echelon extension veins, 以下EEVとする)が認められる(Ujiie et al., 2018).鉱物脈は過去の岩石中の流体通路の化石であり,北北西方向に低角な傾斜をもつSVとFPEVは“切りつ切られつの関係”であることから,これらの亀裂は同じσ1が水平に近い逆断層形成応力場の下でのメランジュ内の流体経路として機能している可能性がある.これらのメランジュで石英脈のうち,特にSVとFPEVでは露頭において明瞭な分布の空間的な不均一が認められ,これらの脈が濃集している領域とそうでない領域が認められた.
グリフィスの条件に基づくと,モードIクラック中の間隙流体圧がσ3を超えた時にそれらの亀裂を埋める鉱物脈が形成される(Jolly and Sanderson, 1997).σ3を超える間隙流体圧をここでは間隙流体圧の過剰分ΔPf(ΔPf = Pf – σ3)とする.本研究ではFPEV形成時の間隙流体圧の過剰分を推定するために,FPEVのアスペクト比に二次元の多孔質弾性体モデル(Gudmundsson, 1999)を採用した.その結果,槙峰メランジュの場合でのPfとΔPfは約280 MPaと80〜160 kPaであった(深さ= 10 km,密度= 2750 kg / m3,引張強度= 1 MPa,ヤング率= 7.5〜15 GPaと仮定).クラック中に流体が流れて間隙流体圧の過剰分が解放されるとクラックが閉じて間隙水圧の低下が停止するが,槙峰メランジュの場合では間隙流体圧が低下した後に正規化された間隙流体圧比λ*(λ* =(Pf – Ph)/(Pl – Ph),Pl:静岩圧; Ph:静水圧)は約1.01(Pf > Pl)であった.この結果は,foliationに平行なモードIクラック形成後でも間隙流体圧が常にメランジュ内で静岩圧を維持していることを示す.
さらに,我々が取り扱う二次元の多孔質弾性体モデルでは,鉱物脈群の間隔は,亀裂中の間隙流体圧の過剰分,ヤング率,および鉱物脈の開口幅に依存する(Price and Cosgrove, 1990).間隙流耐圧を見積もった際の上記の条件においては,鉱物脈の間隔が大きい場合(~10 m)と間隔が小さい場合(~1 m)では,間隙流体圧の過剰分に最大500 kPa程度の差が生じしていることが明らかとなった.それらの鉱物脈の間隔はスロー地震発生サイクル内での間隙流体圧の過剰分の時間変化の結果である可能性があり,間隙流体圧の過剰分がスロー地震のサイズを規定する可能性がある.

[引用文献] Gudmundsson (1999) Geophys. Res. Lett., 26, 115–118; Hyndman et al. (2015) Jour. Geophys. Res., 120, 4344–4358; Jolly and Sanderson (1997) Jour. Struct. Geol., 19, 887–892; Palazzin et al. (2016) Tectonophysics, 687, 28–43; Price and Cosgrove (1990) Analysis of Geological Structures. Cambridge University Press, Cambridge, 502 p; Ujiie et al. (2018) Geophys. Res. Lett., 45, 5371–5379.