3:15 PM - 3:30 PM
[T3-O-16] Fracturing in paleo-mantle wedge serpentinite at high pore fluid pressures and implications for cycles of deep slow earthquakes
Keywords:slow earthquake, mantle wedge, serpentinite, deformation
深部低周波微動とスロースリップが同期して発生するepisodic tremor and slip(以下、ETS)の一部は前弧マントルウェッジ先端(深さ約30 km)付近において発生し、異常間隙水圧下での剪断すべりに起因する(例えば、Obara, 2011)。したがって、浅部マントルウェッジ蛇紋岩体の流体および変形プロセスを調べることは、ETSの発生機構の理解を理解する上で重要である。これまでは深部(約60 km以上)マントルウェッジ起源の蛇紋岩体について主に構造解析が行われており、蛇紋岩体の変形は蛇紋石集合体の延性流動によって特徴付けられている(例えば、Mizukami and Wallis, 2005; Hirauchi et al., 2010)。そこで本研究は、ETSの震源域に相当する温度圧力条件下(温度約500°C、圧力約1 GPa)で形成した浅部マントルウェッジ起源の蛇紋岩体(Aoya et al., 2013)を研究対象とし、構造岩石学的解析を行った。
四国中央部三波川帯には大小様々な蛇紋岩体が散在的に分布する。本研究では、富郷地域におけるざくろ石帯と曹長石・黒雲母帯の境界(深さ約30 km;Aoya et al., 2013)の泥質片岩および塩基性片岩に囲まれた幅数10 mからなる蛇紋岩体に着目した。この蛇紋岩体には無数の開口破壊および開口・剪断破壊が発達し、レンズ状のブロック(最大長さ1 m)と周囲のマトリックスからなるblock-in-matrix構造が認められる。ブロックの形状は亜円礫状から円礫状をなし、ブロックの表面が溶解した構造をもつ。ブロックとマトリックスはともに蛇紋石(アンチゴライト)からなる。マトリックスからなるアンチゴライトの一部は幅数10 μmの局所的な剪断帯を形成しており、動的再結晶による粒径減少が認められる。
上記の解析結果は、前弧マントルウェッジ先端付近において、蛇紋岩体が静岩圧を超える間隙水圧下において開口および開口・剪断破壊していたことを示唆する。そして、破壊後の比較的低い間隙水圧下において、アンチゴライトの溶解・沈殿プロセスが起こり、マトリックスが形成されたと考えられる。このプロセスは再び破壊に必要な高間隙水圧条件の達成を促すことから、破壊イベントの発生サイクルがアンチゴライトのカイネティクスに依存することを示唆する。また、一部のマトリックスに存在する局所的な剪断帯の発達は、破壊直後における低間隙水圧および高歪速度下でのアンチゴライトの転位クリープの結果として考えられる。したがって、本地域で観察された破壊イベントとETSに関連性があると仮定した場合、ETSは静岩圧を超える高間隙水圧下での数多くの破壊面(モードI型およびモードI–II型)の形成(微動)と引き続き起こる局所的な粘性クリープ(スロースリップ)であると理解することができる。
引用文献:Aoya et al. (2013), Geology, 41, 451–454. Hirauchi et al. (2010), Earth Planet. Sci. Lett., 299, 196–206. Mizukami and Wallis (2005), Tectonics, 24, TC6012.
四国中央部三波川帯には大小様々な蛇紋岩体が散在的に分布する。本研究では、富郷地域におけるざくろ石帯と曹長石・黒雲母帯の境界(深さ約30 km;Aoya et al., 2013)の泥質片岩および塩基性片岩に囲まれた幅数10 mからなる蛇紋岩体に着目した。この蛇紋岩体には無数の開口破壊および開口・剪断破壊が発達し、レンズ状のブロック(最大長さ1 m)と周囲のマトリックスからなるblock-in-matrix構造が認められる。ブロックの形状は亜円礫状から円礫状をなし、ブロックの表面が溶解した構造をもつ。ブロックとマトリックスはともに蛇紋石(アンチゴライト)からなる。マトリックスからなるアンチゴライトの一部は幅数10 μmの局所的な剪断帯を形成しており、動的再結晶による粒径減少が認められる。
上記の解析結果は、前弧マントルウェッジ先端付近において、蛇紋岩体が静岩圧を超える間隙水圧下において開口および開口・剪断破壊していたことを示唆する。そして、破壊後の比較的低い間隙水圧下において、アンチゴライトの溶解・沈殿プロセスが起こり、マトリックスが形成されたと考えられる。このプロセスは再び破壊に必要な高間隙水圧条件の達成を促すことから、破壊イベントの発生サイクルがアンチゴライトのカイネティクスに依存することを示唆する。また、一部のマトリックスに存在する局所的な剪断帯の発達は、破壊直後における低間隙水圧および高歪速度下でのアンチゴライトの転位クリープの結果として考えられる。したがって、本地域で観察された破壊イベントとETSに関連性があると仮定した場合、ETSは静岩圧を超える高間隙水圧下での数多くの破壊面(モードI型およびモードI–II型)の形成(微動)と引き続き起こる局所的な粘性クリープ(スロースリップ)であると理解することができる。
引用文献:Aoya et al. (2013), Geology, 41, 451–454. Hirauchi et al. (2010), Earth Planet. Sci. Lett., 299, 196–206. Mizukami and Wallis (2005), Tectonics, 24, TC6012.