128th JGS: 2021

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Oral

R11 [Regular Session]Geology and geochemistry of petroleum and coal

[1ch203-05] R11 [Regular Session]Geology and geochemistry of petroleum and coal

Sat. Sep 4, 2021 9:00 AM - 10:00 AM ch2 (ch2)

Chiar:Yuya Yamaguchi, Yoshikazu Sampei

9:15 AM - 9:45 AM

[R11-O-2] [Invited]Recent developments in natural gas evaluation using stable and clumped isotopes

*Amane Waseda1 (1. Japan petroleum exploration co., ltd.)

Keywords:Natural gas, Origin, Stable isotope, Clumped isotope

世話人からのハイライト紹介:シェールガスや微生物起源ガスなど、生成起源の異なる新たなターゲットに対応すべく、データ解釈方法は日々進展している。本講演では、特に炭素・水素安定同位体組成から天然ガス探鉱に必須の情報(ガスの起源、熟成度、変質等)を如何に解釈するかに注目し、その方法を詳細にレビューするとともに、ガスの生成温度計として研究・応用の進むメタンクランプト同位体についても最新の知見を紹介する。参考:ハイライトについて
天然ガスの起源分類
1960年代頃から天然ガスの炭素・水素同位体組成が測定され始めると,メタンの炭素同位体組成とC1/(C2+C3)との二成分図がバーナード図(Bernard et al., 1976)として微生物起源と熱分解起源の区別に使われるようになった。メタンの炭素同位体組成と水素同位体組成の二成分図も同様に広く使われている。この図では,微生物起源と熱分解起源の区別に加えて,微生物起源ガスの主要な生成経路である二酸化炭素還元と酢酸分解の二種類の区別に使われている。1980年代のドイツでは,熱分解起源ガスについてバーナード図上で起源有機物の種類(海洋有機物と陸源有機物)を区別できるとする報告がなされたが,現在では一般的に広く適用できる分類ではないことが明らかになっている。
 Milkov and Etiope (2018)はその時点までに公表されていた20,000試料を越えるデータを用いて,ガスの起源を以下の5つに大分類している:熱分解起源,微生物起源(CO2還元),微生物起源(酢酸分解),二次的微生物起源,非生物起源。個数としては熱分解起源が半数以上を占め,次に多いのが微生物起源(CO2還元)と二次的微生物起源である。二次的微生物起源については,主に2000年以降にその存在が認識されてきた分類である。詳細は次に述べる。
二次的微生物起源ガス
微生物起源ガスの多くは地層中の有機物が埋没して分解される過程で生成した二酸化炭素,水素,酢酸などを基にメタン生成菌がメタンを生成する過程でできる。一方,二次的微生物起源ガスとは油の生物分解(biodegradation)に伴ってメタン生成菌が作るガスである。油・ガスの貯留層中で油が生物分解を受けると二酸化炭素が生成する。メタン生成菌は生成した二酸化炭素を水素で還元することによってメタンを生成する。したがって,共存する油・ガスの組成には通常,生物分解の影響が認められる。また,貯留層中には油とともに熱分解起源ガスが共存していることが多いため,二次的微生物起源ガスは熱分解起源ガスと混合している場合が多い。
シェールガス
シェールガスの主要な起源は熱分解起源と,二次的微生物起源である(Milkov et al., 2020)。米国のMarcellus, Haynesville, Eagle Ford, BarnettやアルゼンチンのVaca Muerta,中国のWufeng-Longmaxiなど,経済的に最も成功しているシェールガスは熱分解起源である。特にMarcellus, Haynesvilleなどガスの埋蔵量が多いと推定されているシェールガスは熟成が進んだ(熟成後期の)ガスを主体とする。一方,米国のAntrim,New Albanyなどの二次的微生物起源に分類されるシェールガスは比較的埋蔵量が少ないものが多い。
メタンのクランプト同位体
近年ガスの生成深度(温度)に有力な情報をもたらすと期待されている技術の一つにメタンのクランプト同位体がある。一つの分子に重い同位体が二つ以上含まれる分子をクランプト同位体とよぶ。メタンの場合,CH4のCとHに13CとDが同時に入った13CH3Dが最も存在度の高いクランプト同位体である。重い同位体は高い結合エネルギーを持つため,凝集(Clumping)しやすい性質をもつ。生成時に分子内部での同位体平衡が成り立っていれば,メタンのクランプト同位体の存在度は生成温度の関数となり,起源を問わず生成温度を知ることができる。
 メタン・クランプト同位体のデータは2015年頃から公表され始めた。これまでの公表データをまとめたStolper et al.(2018)では,湖沼などの地表近くや牛の胃なで生成した微生物起源ガスの場合,クランプト同位体は異常な値を示し,温度を反映していないことが明らかになっている。一方,熱分解起源や地下深部の微生物起源ガスの場合は,想定される温度を示す場合が多い。この違いはメタンの生成速度が地表近くの環境では速いために同位体非平衡に,地下深部の環境では地質時間をかけてメタン生成が起こるために同位体平衡になりやすいことが指摘されている。
引用文献
Bernard et al. (1976) Earth Planet. Sci. Lett. 31, 48–54., Milkov and Etiope (2018) Org. Geochem. 125, 109-120., Milkov et al., (2020) Org. Geochem. 143, 103997., Stolper et al., (2018) Geol. Soc. London, Sp. Publ. 468, 23-52.