128th JGS: 2021

Presentation information

Oral

T2.[Topic Session]Submarine Mass Movements and Their Consequences

[1ch211-13] T2.[Topic Session]Submarine Mass Movements and Their Consequences

Sat. Sep 4, 2021 1:00 PM - 2:15 PM ch2 (ch2)

Chiar:Kiichiro KAWAMURA

1:00 PM - 1:30 PM

[T2-O-1] [Invited]Risk assessment of submarine landslide tsunami for important coastal facilities

*Masafumi Matsuyama1 (1. Central Research Institute of Electric Power Industry)

Keywords:submarine landslide, tsunami, risk evaluation, Probabilistic evaluation

海底地盤変動学に関係する自然災害の一つに海底地すべりによる発生する津波があげられる。日本周辺において、このように津波を発生させる海底地すべりが発生する可能性が指摘されている。この海底地すべりによる津波のように沿岸の重要施設に影響を与える自然災害は、地震等に加えて沿岸立地であるため台風時等の高波浪や高潮、津波があげられる。沿岸の重要施設には、具体的には港湾、原子力発電所等が代表的である。これらの沿岸重要施設の安全性を高める上で、このような自然災害によるリスクを評価することが必要である。(図1) 自然災害によるリスク評価は、沿岸重要施設自身の設計、その防護施設の設計、もしくはそれらを含めた沿岸重要施設全体の防護戦略に活用される。例えば、津波や高波浪の沿岸重要施設への影響を軽減する防潮堤は防護施設の代表例である。リスク評価手法の分類の一つとして、決定論的な手法と確率論的な手法があげられる(表1)。決定論的手法では、ある一つの事象(自然災害)による影響を評価する。例えば、沿岸の防潮堤の高さを、ある地震波源(断層運動の場所、形状、エネルギーなどを設定)による沿岸での津波高を基に決定した場合である。この場合には、事象の規模や事象進展のシナリオは、より悪い方向へ事象が進展していくとの仮定で作成されることが多く、事象に対する影響を増幅させる安全率はその仮定の一つと考えられる。確率論的手法では、複数の事象による影響を取扱い、各事象の発生確率とその影響を定量的に確率的に表現する。例えば、沿岸のある場所の津波高について、複数の津波波源を設定して、各波源に対する津波高とその発生確率(頻度)を一つ一つ算出し、それを処理して津波高(x軸)とその発生確率(頻度) (y軸)を2次元グラフに表したものが確率論的津波ハザード曲線である(図2)。このようなハザード曲線は、原子力発電所の確率論的リスク評価(PRA)ではその入力条件となり、炉心損傷頻度(CDF)と津波高の関係(レベル1PRA)が評価される。この結果は、多くの津波による事象進展シナリオを統合的に処理して表現されており、シナリオの見落としを防ぐことが目的の一つである。また、この処理過程における不確実さを定量的に評価することも大きな特徴の一つである。この不確実さは、現象のランダム性に基づく偶然的な不確実さと、データや知識の不足による認識論的不確実さに分類されて、定量化される。特に認識論的不確実さは、評価段階において専門家などで意見の分かれる評価項目について、そのわかれた意見をそれぞれ一つのシナリオとして取り込み、リスク評価結果に反映する。このようにPRAは事象進展を確率的に表現するだけでなく、その評価過程の不確実さを定量的に評価することがポイントである(図3)。(「PRA」という名称には不確実さの評価を表現できておらず、ネーミングとして適切ではないかもしれない。) 原子力発電所の安全性の評価においては、2011年の福島第一原子力発電所の事故を契機に、これまでの経験していない自然災害についてより広くリスクを評価することとなり、津波については、地震のみならず地震以外の要因による津波として、陸上や海底の地すべり、火山のカルデラ陥没、これらの原因による津波を考慮することとなった。陸上や海底の地すべりの津波については、日本において事例は少なく、明確な被害例としては、陸上の山体崩壊の突入(広義の地すべりの一つ)による津波が少なくとも3例ある。海底地すべりの痕跡や駿河湾での海底地すべりの発生事例報告があるものの、明確に海底地すべりを主な原因とした津波の被害事例は見られない。しかし、将来の海底地すべりによる津波災害を否定するものではなく、世界的には事例も存在するので、リスク評価の一項目として必要である。 こういった観点では、日本周辺における海底地すべりのリスク評価が必要である。具体的には、日本周辺海域で海底地すべりの規模と発生確率の関係を設定することが必要である。しかし、陸域と比較して、海域においては地質をはじめとして多くの情報が少なく、海底地すべりの規模と発生確率を評価する上で、地震による津波と比較して不確実さが大きい。特に津波の発生源として海底地すべりの規模と発生確率の情報は沿岸の津波高に第一義的な影響があり、今後の進展が急務である。そのために海域の詳細調査や海底地すべり津波の数値解析モデルの高度化など多くの課題の解決が望まれる。