11:15 AM - 11:30 AM
[R12-O-7] Antigorite deformation mechanism and coupling depth of shallow wedge mantle
Keywords:Antigorite, Deformation mechanism, Slab-mantle coupling, CPO pattern, Wedge mantle
沈み込み帯の熱モデリングから、火山弧の長期的な火成活動を説明するためには、沈み込むスラブとウェッジマントル間のカップリング(固着)に誘起されたマントル流動が必要であることを示されている。またこの固着深度は、多くの活動的な沈み込み帯で同様の値を取り、70-80kmとされている。これは、固着深度が沈み込むプレートの年齢など温度構造に依存していないことを意味し、その理由は沈み込み帯のダイナミクスを理解する上で重要な未解決問題となっている。この深度では、ウェッジマントルに主にアンチゴライトからなる蛇紋岩が存在していると考えられている。そのため、ウェッジマントルにおけるアンチゴライトの変形メカニズムを明らかにすることは、1) 沈み込み帯の浅部含水マントル領域のレオロジー特性の解明、2) 熱モデリングによって予想されるプレート間固着深度の物質学的な理解につながると考えられる。本研究では、ウェッジマントルにおける蛇紋岩の変形メカニズムを解明することで、プレート間固着深度が沈み込み帯の温度構造に依存しない理由を明らかにすること目的とする。
これまで、アンチゴライトの変形メカニズムは複数提案されており、(1) 転位クリープ、(2) キンクやリップロケーションによる変形、粒界すべりに伴う機械的回転(GBS)、流体促進下での拡散クリープや、溶解-沈殿クリープが提案されている。変形実験的手法は変形条件をコントロールすることで変形初期から変形途中までの変形組織が進行していく過程を追うことができる一方、天然での変形における歪み速度を再現して実験を行うことができない難点がある。本研究では、アンチゴライト蛇紋岩に存在する天然剪断帯における観察を使用する。その剪断帯で見られる歪み勾配は低歪み領域から高歪み領域の各領域の観察を可能にする。このような累進変形を代表する組織を観察することで、天然の歪み速度での変形過程の観察を行うことができると考えられる。本研究では、このような変形実験での利点を保ちつつ、天然の歪み速度での変形組織を観察することで新しい知見を得ることができた。具体的には剪断帯周辺の低歪み領域から剪断帯中心の高歪領域への各歪み領域における結晶軸選択配向(CPO)や鉱物化学組成を含む微細構造の特徴の比較・変化からアンチゴライトの変形メカニズムを推定した。天然剪断帯は四国中央部三波川変成帯別子地域及び白髪山地域から採取したアンチゴライト蛇紋岩中の微小剪断帯を用いた。
その結果、別子および白髪山ともにひずみの増加に伴う漸進的な微細構造の変化が明らかになった: (1) 歪みの増加に伴い、アンチゴライトの(001)結晶面が剪断面に平行になるように明確に回転する。 ii) 歪みの増加に伴い、鉱物伸長方向であるb軸が剪断方向に平行なB-typeアンチゴライトCPOが明確に形成される。 iii) CPOの強度や(001)面の回転と一致して、歪みの増加に伴いアンチゴライト粒子の形状はその長軸がより集中しながら剪断面に向かって回転する。 iv) 歪量にかかわらず、アンチゴライトは結晶内の結晶方位差、粒径、アスペクト比、主要元素の化学組成に有意な差異は見られない。以上から、アンチゴライトは歪みの増加に伴って再配向する一方で、結晶内の変形や粒径減少は見られないことが明らかになった。そのため、アンチゴライトのGBSによって、B-typeアンチゴライトCPOを形成・発達させながら、アンチゴライト蛇紋岩が変形したと考えられる。
天然試料から報告されているアンチゴライトCPOの多くはB-typeを示し、これらの配列強度も本研究のB-type CPOの強度と一致する。またアンチゴライトのGBSは室内条件からも報告されてため、本研究で使用した試料の周囲の変成岩のピーク温度・圧力などから、本研究ではウェッジの先端から~500-550℃、~0.8-1.0GPaまでのウェッジマントルで、GBSによるアンチゴライトの変形が広く卓越し、GBSの変形によってB-type CPOが形成することを提案する。アンチゴライトはその結晶構造から(001)面上で低摩擦係数を示し、(001)面上でもa軸方向に比べb軸方向で特に低摩擦係数を示す摩擦異方性の強い鉱物である。そのため、B-type CPOの形成過程は、この摩擦異方性に起因してすべりやすいb軸が剪断方向に平行になるように結晶が回転することで説明できる。
GBSは本質的には摩擦現象であり、固着深度付近を含むプレート境界に沿って分布する蛇紋岩では、変形を引き起こすのに必要な剪断応力は、温度の依存性は低く、主に深さに比例する垂直応力に依存していると考えられる。これは温度構造に関係なく、ほぼ全ての沈み込み帯で固着深度が同様していることを説明できる。
これまで、アンチゴライトの変形メカニズムは複数提案されており、(1) 転位クリープ、(2) キンクやリップロケーションによる変形、粒界すべりに伴う機械的回転(GBS)、流体促進下での拡散クリープや、溶解-沈殿クリープが提案されている。変形実験的手法は変形条件をコントロールすることで変形初期から変形途中までの変形組織が進行していく過程を追うことができる一方、天然での変形における歪み速度を再現して実験を行うことができない難点がある。本研究では、アンチゴライト蛇紋岩に存在する天然剪断帯における観察を使用する。その剪断帯で見られる歪み勾配は低歪み領域から高歪み領域の各領域の観察を可能にする。このような累進変形を代表する組織を観察することで、天然の歪み速度での変形過程の観察を行うことができると考えられる。本研究では、このような変形実験での利点を保ちつつ、天然の歪み速度での変形組織を観察することで新しい知見を得ることができた。具体的には剪断帯周辺の低歪み領域から剪断帯中心の高歪領域への各歪み領域における結晶軸選択配向(CPO)や鉱物化学組成を含む微細構造の特徴の比較・変化からアンチゴライトの変形メカニズムを推定した。天然剪断帯は四国中央部三波川変成帯別子地域及び白髪山地域から採取したアンチゴライト蛇紋岩中の微小剪断帯を用いた。
その結果、別子および白髪山ともにひずみの増加に伴う漸進的な微細構造の変化が明らかになった: (1) 歪みの増加に伴い、アンチゴライトの(001)結晶面が剪断面に平行になるように明確に回転する。 ii) 歪みの増加に伴い、鉱物伸長方向であるb軸が剪断方向に平行なB-typeアンチゴライトCPOが明確に形成される。 iii) CPOの強度や(001)面の回転と一致して、歪みの増加に伴いアンチゴライト粒子の形状はその長軸がより集中しながら剪断面に向かって回転する。 iv) 歪量にかかわらず、アンチゴライトは結晶内の結晶方位差、粒径、アスペクト比、主要元素の化学組成に有意な差異は見られない。以上から、アンチゴライトは歪みの増加に伴って再配向する一方で、結晶内の変形や粒径減少は見られないことが明らかになった。そのため、アンチゴライトのGBSによって、B-typeアンチゴライトCPOを形成・発達させながら、アンチゴライト蛇紋岩が変形したと考えられる。
天然試料から報告されているアンチゴライトCPOの多くはB-typeを示し、これらの配列強度も本研究のB-type CPOの強度と一致する。またアンチゴライトのGBSは室内条件からも報告されてため、本研究で使用した試料の周囲の変成岩のピーク温度・圧力などから、本研究ではウェッジの先端から~500-550℃、~0.8-1.0GPaまでのウェッジマントルで、GBSによるアンチゴライトの変形が広く卓越し、GBSの変形によってB-type CPOが形成することを提案する。アンチゴライトはその結晶構造から(001)面上で低摩擦係数を示し、(001)面上でもa軸方向に比べb軸方向で特に低摩擦係数を示す摩擦異方性の強い鉱物である。そのため、B-type CPOの形成過程は、この摩擦異方性に起因してすべりやすいb軸が剪断方向に平行になるように結晶が回転することで説明できる。
GBSは本質的には摩擦現象であり、固着深度付近を含むプレート境界に沿って分布する蛇紋岩では、変形を引き起こすのに必要な剪断応力は、温度の依存性は低く、主に深さに比例する垂直応力に依存していると考えられる。これは温度構造に関係なく、ほぼ全ての沈み込み帯で固着深度が同様していることを説明できる。