128th JGS: 2021

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Oral

R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

[1ch314-18] R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

Sat. Sep 4, 2021 2:30 PM - 4:00 PM ch3 (ch3)

Chiar:Kentaro Yoshida, Tomoki Taguchi, Tatsuro Adachi

3:30 PM - 3:45 PM

[R4-O-4] Reaction kinetics and size-dependent growth of garnets in high-pressure metamorphic rocks

*Kazuhiro Miyazaki1 (1. Geological Survey of Japan)

Keywords:Metamorphic rocks, Metamorphic reaction, Garnet, Reaction kinetics

変成反応動力学の決定は,地殻-マントル内部における流体の生成・移動・吸収とこれらと不可分な岩石組織の時間発展を予測するために必要である.さらに,流体の生成・移動・吸収は,沈み込み帯造山帯の構造進化を制御している.本研究では,沈み込み帯造山帯深部で形成された高圧型変成コンプレックス泥質片岩中のざくろ石を用いて反応動力学を推定した.ざくろ石は緑泥石などの含水鉱物が脱水して生じる代表的脱水反応生成物である.  本研究の反応動力学判別では,ざくろ石形態及び累帯構造と粒径を用いた判別を行った.ざくろ石形態及び累帯構造を用いた動力学判別では以下の性質を利用した.1)過飽和度(非平衡度)の大きな拡散律速型成長では,Mullins-Sekerka不安定性が観測される(Miyazaki,2015),2)拡散律速成長では近接する2粒子間で拡散成分の取り合いが起こるため,2つの核を持つ粒子は存在しない,の2点である.粒径を用いた判別では,初期粒径a0を横軸に,最終粒径aを縦軸に取りプロットする (Miyazaki et al., 2017).拡散律速型では,粒界が小さいほど成長量が多く,判別図上で,粒径が小さいほど傾き1の直線より上方へずれる.一方,界面律速型では,粒径によらず傾き1の直線上に配列する.以下では,ざくろ石累帯構造の同MnO量面を同時間面と仮定して初期粒径a0を計測した.この計測を行うためには,泥質片岩から単離したざくろ石を使用しなければならないが.単離作業継続中のため,今回は薄片上で計測した.単離したざくろ石の累帯構造プロファイルは,三波川コンプレックスからはBanno et al. (1986)で,三波川コンプレックス西方延長の長崎変成コンプレックスからはMiyazaki (1991)で,先行研究がなされている.いずれの場合も,以下の2点が明らかとなっている.1)粒径によらず,ざくろ石コアはMnOに富む,2)ざくろ石MnOプロファイルから,初期粒径が大きい粒子ほど大きく成長している.ただし,2については,計測された粒子数が2〜3個と少なく,より多数の粒子の測定が必要である.本研究では,1)の性質を利用して,薄片上でMnOに富むコアを持つざくろ石は,中心を通る断面に近い断面で作成されているとして,粒径の計測を行った.  研究に使用した泥質片岩は,高圧型変成コンプレックスである三波川コンプレックス高知県汗見川沿いのアルバイト黒雲母帯から採集した.試料中のざくろ石では,外形が凸凹になるMullins-Sekerka不安定性は観測されず,かつEPMAによるざくろ石累帯構造の観察の結果,2つ以上のMnOに富む核をもつざくろ石が観察された.以上の観察結果は,ざくろ石が界面律速型成長したことを示唆している.  粒径を用いた判別では,初期粒径a0として,MnO 量が8, 6, 4, 及び2 wt%と,外縁部に認められるMnOスパイクを使用した.プロットの結果,いずれのa0を用いても,初期粒径が大きいほど成長量が多くなる関係が得られた.このような関係は,オストワルド成長でもできるが,より詳細に見ると粒径の大きなところで,粒径と成長量がほぼ線形関係にあり,オストワルド成長で期待される粒径が大きいほど成長量増加が頭打ちになる関係が認められない.一方,ヒマラヤの衝突型造山帯泥質片岩中のざくろ石(Geroge and Gaidies, 2017)の粒径を用いた動力学判別では,傾き1の直線上にほぼ配列し,通常の界面律速型反応を示唆する.今回の沈み込み帯三波川コンプレックスの結果は,ヒマラヤの変成岩の結果と大きく異なる.  粒径に依存した成長量の増大の原因は今のところ不明である.しかしながら,弾性歪みを組み込んだオストワルド成長では,析出物が基質にくらべ固い場合,析出物間に斥力が働き,大きい粒子の成長が加速されると理論的に予測されている(Kawasaki and Enomoto, 1984).弾性歪み効果が現れるためには,弾性歪みが塑性変形で緩和されるより早くオストワルド成長が進行する必要がある.弾性歪み効果が実在すれば,変成岩の構造形成及び反応進行速度に影響を及ぼすことになる.
文献:Banno et al. (1986) Lithos, 91,51-63. George and Gaidies (2017) Contrib Mineral Petrol, 175:57. Kawasaki and Enomoto (1988) Physica A, 150,463-498. Miyazaki (1991) Contrib Mineral Petrol,108,118-128. Miyazaki (2015) Progress in Earth and Planetary Science, 2:25. Miyazaki et al. (2017) Terra Nova, 30: 162-168.