8:45 AM - 9:15 AM
[T4-O-4] [Invited]Review of detrital zircon studies and chronology: Perspectives on the history of geotectonic evolution and growth of continents
Keywords:detrital zircon, chronology, sandstone
砕屑性ジルコンのウラン鉛年代測定は, 2000年頃からレーザー焼灼誘導結合プラズマ質量分析器(LA-ICPMS)の普及によって国内外で広く行われるようになった. 各地の多様な構造場で形成された砂岩などの堆積岩およびそれを原岩とする変成岩の中に含まれる砕屑性ジルコンの大量のデータが供給された. これらのデータは, 様々なスケールの地質研究の進展に大きく貢献した. それらを空間スケールの小さなものから順に列挙すると, (1)堆積年代制約, (2)後背地推定, そして(3)大陸地殻消長史などがあるが, 本発表では(2)および(3)についてレビューし, さらに今後の発展について議論する.
砕屑性ジルコン年代分布は, 堆積当時の後背地の地殻を構成する岩石の年代分布をおおよそ反映すると考えられている. このことを用いて, 古地理復元や大陸地殻消長の議論が行われてきた. 世界各地の地球史を通じた様々な年代の堆積岩から得られた砕屑性ジルコン年代分布のコンパイルを通じて, 大陸地殻消長史が議論されてきた.
当初は現世の世界各地の大河川の河口から得られた砕屑性ジルコン年代分布を用いて現在の大陸地殻の年代分布が議論されていたが(e.g. Rino et al., 2004; 2008), 後には年代や地域, 構造場などを区別せずにコンパイルした巨大なデータから, 大陸地殻の形成または保存の卓越した時期を探す試みが行われた(e.g. Condie et al., 2009; Hawkesworth et al., 2009). このような研究は定性的には非斉一的な大陸地殻成長を示す証拠となったものの, 形成と消失を繰り返す大陸地殻の進化を詳細に解読するにはこのような手法は不適であるとし, 堆積年代ごとに区別してデータをコンパイルした砕屑性ジルコン年代の多様性から大陸サイズの変遷を推定することが提案された(Sawada et al., 2018). 約34~32億年前以前の堆積岩には堆積年代以前の数億年程度の間の砕屑性ジルコンしか含まれていないのに対して, 32~23億年前頃には8~10億年程度の間の砕屑性ジルコンが含まれるようになり, さらに23億年前以降は20億年以上の間のものが普遍的に含まれるようになることが示された. このような砕屑性ジルコン年代分布パターンの変化は, 大陸サイズの変化を表していると推定された. 約34億年前以前は海洋性島弧のような細長く年代多様性の少ない大陸地殻が主体で, それらのマントルへの消失も活発であった. このような未熟な大陸地殻が衝突・合体を繰り返し, 32億年前頃には数百~数千kmスケールの萌芽的大陸が現れ, さらに23億年頃には現代の大陸に匹敵する10,000 kmスケールの大陸が現れたと考察される. 一方で, 近年, このような砕屑性ジルコン年代分布パターンの変化を大陸サイズそのものではなく, 大陸地殻の厚さの変化に依存した海面から上に露出している陸地部分の変化でしか無いという見方も提案されている(Reimink et al., 2021). 2020年代となった今でも砕屑性ジルコン分析に依拠した研究は進行しているが, 理解の進展を得るにはこれまでの単純な延長, 拡大では限界に達している. 特に弧海溝系での大陸地殻形成についてはこれまで単純化して議論されてきたが, それらの構造的な個性や地質時代の違いによる区別した議論しなければならず, それを可能とするためには現状の砕屑性ジルコン年代分布以外の判別指標の構築をする必要がある. このような観点から(1)ジルコン以外の鉱物の年代測定, (2)砂岩の全岩組成, (3)LA-ICPMSでは直接分析不可能な微細サイズのジルコン粒子の分析, 等についても紹介する予定である.
Rino et al. (2004). Physics of the Earth and Planetary Interiors, 146, 369-394.
Rino et al. (2008). Gondwana Research, 14, 51-72.
Condie et al. (2009). Gondwana Research, 15, 228-242.
Hawkesworth et al. (2009).Science, 323, 49-50.
Sawada et al. (2018). Geoscience Frontiers, 9, 1099-1115.
Reimink et al. (2021). Earth and Planetary Science Letters, 554, 116654.
砕屑性ジルコン年代分布は, 堆積当時の後背地の地殻を構成する岩石の年代分布をおおよそ反映すると考えられている. このことを用いて, 古地理復元や大陸地殻消長の議論が行われてきた. 世界各地の地球史を通じた様々な年代の堆積岩から得られた砕屑性ジルコン年代分布のコンパイルを通じて, 大陸地殻消長史が議論されてきた.
当初は現世の世界各地の大河川の河口から得られた砕屑性ジルコン年代分布を用いて現在の大陸地殻の年代分布が議論されていたが(e.g. Rino et al., 2004; 2008), 後には年代や地域, 構造場などを区別せずにコンパイルした巨大なデータから, 大陸地殻の形成または保存の卓越した時期を探す試みが行われた(e.g. Condie et al., 2009; Hawkesworth et al., 2009). このような研究は定性的には非斉一的な大陸地殻成長を示す証拠となったものの, 形成と消失を繰り返す大陸地殻の進化を詳細に解読するにはこのような手法は不適であるとし, 堆積年代ごとに区別してデータをコンパイルした砕屑性ジルコン年代の多様性から大陸サイズの変遷を推定することが提案された(Sawada et al., 2018). 約34~32億年前以前の堆積岩には堆積年代以前の数億年程度の間の砕屑性ジルコンしか含まれていないのに対して, 32~23億年前頃には8~10億年程度の間の砕屑性ジルコンが含まれるようになり, さらに23億年前以降は20億年以上の間のものが普遍的に含まれるようになることが示された. このような砕屑性ジルコン年代分布パターンの変化は, 大陸サイズの変化を表していると推定された. 約34億年前以前は海洋性島弧のような細長く年代多様性の少ない大陸地殻が主体で, それらのマントルへの消失も活発であった. このような未熟な大陸地殻が衝突・合体を繰り返し, 32億年前頃には数百~数千kmスケールの萌芽的大陸が現れ, さらに23億年頃には現代の大陸に匹敵する10,000 kmスケールの大陸が現れたと考察される. 一方で, 近年, このような砕屑性ジルコン年代分布パターンの変化を大陸サイズそのものではなく, 大陸地殻の厚さの変化に依存した海面から上に露出している陸地部分の変化でしか無いという見方も提案されている(Reimink et al., 2021). 2020年代となった今でも砕屑性ジルコン分析に依拠した研究は進行しているが, 理解の進展を得るにはこれまでの単純な延長, 拡大では限界に達している. 特に弧海溝系での大陸地殻形成についてはこれまで単純化して議論されてきたが, それらの構造的な個性や地質時代の違いによる区別した議論しなければならず, それを可能とするためには現状の砕屑性ジルコン年代分布以外の判別指標の構築をする必要がある. このような観点から(1)ジルコン以外の鉱物の年代測定, (2)砂岩の全岩組成, (3)LA-ICPMSでは直接分析不可能な微細サイズのジルコン粒子の分析, 等についても紹介する予定である.
Rino et al. (2004). Physics of the Earth and Planetary Interiors, 146, 369-394.
Rino et al. (2008). Gondwana Research, 14, 51-72.
Condie et al. (2009). Gondwana Research, 15, 228-242.
Hawkesworth et al. (2009).Science, 323, 49-50.
Sawada et al. (2018). Geoscience Frontiers, 9, 1099-1115.
Reimink et al. (2021). Earth and Planetary Science Letters, 554, 116654.