128th JGS: 2021

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Oral

R7 [Regular Session]Cenozoic geological records of Japan

[1ch417-22] R7 [Regular Session]Cenozoic geological records of Japan

Sat. Sep 4, 2021 2:30 PM - 4:00 PM ch4 (ch4)

Chiar:Jun Hosoi, Toshiki Haji

3:00 PM - 3:15 PM

[R7-O-3] Period of activities of the Setouchi Volcanic Rocks in the Kii Peninsula

*Hironao Shinjoe1, Yutaka Wada2, Yuji Orihashi3 (1. Tokyo Keizai University, 2. Department of Earth Sciences, Nara University of Education, 3. Graduate School of Earth and Environmental Sciences, Hirosaki University)

Keywords:middle Miocene, southwest Japan, arc magmatism, Philippine Sea Plate

世話人からのハイライト紹介:中新世中頃の西南日本は,前弧域では複数の巨大カルデラが形成し,瀬戸内では瀬戸内火山岩類と呼ばれる特徴的な化学組成を持った火成活動が起こるなど,特異なテクトニックセッティングにあった.新正氏はこの火山岩類の岩石学的・年代学的研究を精力的に行い,生成過程の解明を目指している.本発表では,これまでに蓄積された高分解能の年代データを基に「如何にしてそれらの特異な火山岩類が生成したのか」,また「火成活動の時空間的な広がり」について議論する.そして,火成活動の時空間史に基づいて,日本海拡大のテクトニクスや当時のプレート配置の議論を展開する.参考:ハイライトについて
瀬戸内火山岩類の活動時期は,かつては主に全岩のK-Ar法で拘束され,Tatsumi (2006; Ann. Rev. Earth Planet. Sci.)による全域的なコンパイルでは13.7 ±1.0 Maとまとめられた.珪長質な火成活動が苦鉄質な火成活動に先行するという主張もあり,巽ほか(2010; 地質雑)による小豆島の試料のマルチ年代測定では下位の珪長質な岩相が14.3~14.4 Ma, 上位の安山岩・玄武岩が13.1~13.4 Maの活動とされた.一方,近年の九州東部,四国西部,備讃瀬戸地域のジルコンU-Pb法や40Ar/39Ar法による検討では,多くの年代が14.3~15.1 Maの範囲に入るが(新正・折橋,2017; 地質雑; 新正ほか,2017; 地質学会予稿; Nakaoka et al., 2021; Isl.Arc; Sato and Haji, 2021; Isl.Arc),讃岐平野のデイサイトのジルコンU-Pb年代が13.8 Maにピークをもつという報告もある(Gao et al., 2021; Lithos).本報告では,これまでの層序関係,放射年代等の情報を整理して,紀伊半島の瀬戸内火山岩類の分布の主体である二上層群の活動時期とその意義を論ずる.二上層群についてはTatsumi et al.(2001; Geophys. J. Int.)は高Mg安山岩を含むサヌキトイドを産する原川累層につき5試料のK-Ar年代の荷重平均として13.6 ±0.7 Maを与えていた.一方,Hoshi et al. (2000; JMPS)は原川累層とその上位の定ヶ城累層の境界付近に正・逆の地磁気極性境界を見いだし,吉川ほか(1996; 地質雑)のK-Ar年代を参照して該当しうる極性サブクロンから二上層群の年代は14.6~15.2 Maに入るとした.さらに星ほか(2002: 地質雑)で二上層群の全体からほぼ14.5-15.0 Maの範囲のジルコンフィッション・トラック(FT)年代を報告し,1500万年前頃の数十万年以内の短期間の活動を強調した.その後,新正ほか(2011; 地質学会予稿)は14.9~15.0 Maの二上層群のジルコンU-Pb年代を報告し星ほか(2002)のFT年代と整合的であるとした.二上層群の最上部の定ヶ城累層の上部の玉手山凝灰岩は室生火砕流堆積物に対比される(星ほか,2002;岩野ほか,2007; 地質雑;山下ほか,2007; 地質雑; 新正ほか,2010; 地質雑).さらに和田ほか(2012; 地質学会予稿)は室生火砕流堆積物直下の山辺層群中の凝灰岩層から溶結した火砕岩片を見いだし,重希土類元素に枯渇する瀬戸内火山岩類の流紋岩にみられる全岩組成の特徴を持つことから二上層群のドンズルボー累層に由来するものと推定した(新正ほか,2012; 地質学会予稿).なお,Takashima et al. (2021; Isl. Arc)はアパタイト組成により室生火砕流堆積物の下部を外帯の大台カルデラの噴出物と対比した.また房総半島の木ノ根層の凝灰岩のアパタイト組成による対比から,大台カルデラの噴火後すぐに熊野カルデラが噴火したことが推定された(高嶋ほか,2018; 地質学会予稿).すなわち二上層群は紀伊半島外帯のカルデラ形成を伴う大規模珪長質火成活動に先行して形成されたことになる.外帯の大規模カルデラ形成に伴う火成活動の時期はShinjoe et al. (2021; Geol. Mag.)のジルコンU-Pb年代では14.5~15.0 Maの範囲に入る.以上より,二上層群の活動時期はHoshi et al. (2000)や星ほか(2002)の提案のように1500万年前頃の数十万年以内の短期間の活動と見られる.二上層群を形成した火成活動は外帯の大規模カルデラ噴火に先行するが,放射年代からは明確に区別できず,フィリピン海プレートの沈み込みの進行に伴って火成活動の領域が北進したのではなく(Kimura et al.,2005; Bull. Geol. Soc. Am.),島弧横断方向に少なくとも幅80 km程度の領域でほぼ同時期に火成活動が生じたとみられる.瀬戸内地域ではマントル深度での堆積物融解による重希土類元素に枯渇した流紋岩マグマやスラブメルトとマントルの反応による高Mg安山岩マグマなどスラブ融解に由来するマグマ生成が,外帯地域では付加体深部あるいは沈み込むスラブ表層の堆積物融解によるSタイプ花こう岩の特徴を持つ大規模珪長質マグマの生成があり,日本海拡大に関連したマントルウェッジの高温状況と拡大直後の四国海盆スラブの沈み込みのもとで海溝寄り地域での広範な火成活動が引き起こされたものと考えられる.