128th JGS: 2021

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Oral

R18 [Regular Session]Environmental geology

[1ch501-06] R18 [Regular Session]Environmental geology

Sat. Sep 4, 2021 8:45 AM - 10:15 AM ch5 (ch5)

Chiar:Yoshiyuki Tamura

9:00 AM - 9:15 AM

[R18-O-2] Inverse analysis of groundwater modeling: An example of the contamination site in Mobara City

*Katsuhiro Fujisaki1 (1. Geo-environmental Consultant)

Keywords:Inverse Analysis, Groundwater Modeling, Grid Design

地下水モデルのパラメータ(透水係数など)を観測値(地下水位など)から求める逆解析は,数学的に難しいことと適当な解析ソフトがないことから,わが国での普及は進んでいない.筆者は,汎用ソフトPEST(Doherty, 2018)を用いて,静岡市の汚染事例(藤崎他,2005)について解析をおこなった(藤崎,2019a;2019b;2020).濃度観測値をそのまま使用した場合,格子幅を小さくするにつれて小さい透水係数と大きな涵養量,大きな透水係数と小さい涵養量が交互に求められる不自然な結果となった.また,計算濃度分布も観測値の分布と異なっている.高濃度観測値の方が目的関数への寄与が大きいため,それらに偏ってパラメータが修正されると考え,観測値を対数変換した.透水係数・分散長は元のパラメータに近い値が求められ,計算濃度分布も観測値に近いものとなった. 茂原市の汚染事例(藤崎他,2005)について,地下水位観測値12個(定常状態),TCE濃度観測値214個(1989/11~1998/2)に対応する出力値を地下水流モデル(MODFLOW)と物質移動モデル(MT3DMS)で計算し,PESTで観測値を対数変換して透水係数・縦方向分散長・横方向分散長・涵養量・生物分解半減期の5パラメータを逆解析した.格子幅を25mからその1/2~1/5へと細かくしていくと,目的関数・AIC(赤池情報量基準)とも小さくなり,精度が向上するようにみえる.しかし,12.5m格子(1/2)ではPESTは収束せず,6.25m格子(1/4)では長大な計算時間を要し非常に大きな縦方向分散長が求められる.計算濃度分布も観測値と一致しない.8.333m格子(1/3)では,やや大きい縦方向分散長と短い半減期が得られるが,計算濃度分布は観測値にくらべてプリュームが下流方向に伸びている.5m格子(1/5)でもやや大きい縦方向分散長と短い半減期が求められるが,計算濃度分布は観測値と調和的である.静岡市の例では格子幅によらずほぼ同じ結果が得られたが,この場合の格子幅による差の原因はよく分からない.25m格子で観測点数を214点,154点,106点,59点と減らしていくと,目的関数・AICとも大きくなり,観測点数が多くなるとともに精度が高くなるようである.106点を例外として,観測点数が少なくなると縦方向分散長が大きく,半減期が短くなる傾向がある.計算濃度分布は観測値とほぼ一致する.観測値数が106点の場合,透水係数が大きく,半減期が短く求められ,計算濃度分布は観測値とことなり100mg/l以上の高濃度部がなくなっている.106点の前後の118点と94点では,他の場合と同様の結果を示しており,なぜ106点の場合のみ特異な値が得られるのかは原因が不明である.以上の結果は,特定の観測値群を使用した場合に,パラメータ推定精度が低下することを示していて,観測値の選択についても注意しなければならないことが示されている.観測値には検出限界(0.02mg/l)未満のデータが多く含まれる.対数変換するにあたって,ゼロにはできないので仮に検出限界の1/20の1E-4mg/lとした.実際の濃度は分からないが,幅広い値となっていると考えられる.そこで,検出限界の1/2(1E-3mg/l)と1/200(1E-5mg/l)とした場合についても検討したが,それらに大きな差はみられない.
 参考文献
Doherty, J., 2018, PEST: Model-independent parameter estimation user manual 7th ed., Watermark Numerical Computing, 368p. 藤崎克博,2019a,日本地質学会第126年学術大会講演要旨,134. 藤崎克博,2019b,第29回環境地質学シンポジウム論文集,49-52. 藤崎克博,2020,第30回環境地質学シンポジウム論文集,1-4. 藤崎克博他,2005,社会地質学会誌,Vol.1, no.1, 1-18.