9:30 AM - 9:45 AM
[R18-O-4] Temporal and special variations of land subsidence in Yachimata-Tomisato Area, Chiba Prefecture
Keywords:Land Subsidence, InSAR
はじめに
地盤沈下は地下水や天然ガスかん水等の採取や自然圧密等に起因していると考えられ、これらの要因を特定しその寄与度を明らかにすることは地盤沈下の防止を考える上で非常に重要である。千葉県による精密水準測量の結果から、近年、八街市や富里市付近に複数箇所の中心を持つ広域的な地盤沈下が確認されている(荻津・八武崎, 2019)。本発表では当該地域の最近の地盤変動について、地盤沈下の要因解明のための基礎資料とすることを目的にInSAR解析を実施したのでその結果について予察的な報告を行う。
地盤沈下の概要
精密水準測量の結果(千葉県, 1976-2019)によると、1年間変動量図では1996年頃からは八街市に中心をもつ沈下が確認されはじめ、2000年代の始めからは沈下が富里市付近でも明瞭になっている。この傾向は現在まで続き2019年の沈下量は佐倉市と八街市の境界付近及び富里市の芝山町側境界付近に沈下の中心を確認できる。5年間累積変動量分布ではより顕著にこの地域の沈下を確認することができる。2012年-2017年に5cm以上沈下した地域は佐倉市から芝山町まで東北東・西南西方向に伸長した長さ約10km幅約5kmの範囲に分布している。佐倉市と八街市の境界付近、八街市と富里市の境界付近及び八街市の芝山町との境界付近の合計3カ所に沈下の中心が確認できる(荻津・八武崎, 2019)。
InSAR解析について
InSARは人工衛星等により2回以上の地表観測を行い、反射波の位相差から地表の変動を把握する技術である。近年、InSAR解析により千葉県内を対象とした地盤沈下の報告がなされている(e.g.,出口・他, 2009; 山中・他, 2013; 石塚・松岡, 2016; 環境省, 2017)が、本研究では本地域の地盤沈下について時空間的により詳細に把握することを目的にInSAR時系列解析を行った。2017年7月から2021年4月までの欧州宇宙機関(ESA)のSentinel-1A及び1Bのデータを用いてStaMPS/MTI(Hooper et al., 2012)によりPSInSAR解析を行った。
InSAR解析結果
2018年及び2019年の年間変動量の分布は精密水準測量結果と概ね整合的であった。精密水準測量で確認されている3カ所の沈下の中心は今回InSAR解析で得られた1年間変動量の分布でも認められた。また、富里市北西部から成田市にかけての地域及び富里市北東部から成田市と芝山町の境界付近に伸びる地域で若干の沈下が確認されたが、精密水準測量結果では水準点の配置の関係からこの沈下についてはとらえきれていない。
三か月毎の変動量の分布では、各時期の変動量分布の変化が大きく毎年同じ時期に同じような変動を示すような明瞭な周期変動は確認できなかった。しかし、佐倉市と八街市の境界付近に中心をもつ沈下は、4~6月に沈下範囲が南側に広がる傾向が認められた。
各地点の変動の時系列変化については、沈下の中心に近い地盤沈下の顕著な場所において単調な沈下傾向がみられた。しかし、その周辺部では時間とともに沈下と隆起を繰り返し、長期的にみると沈下傾向または隆起傾向を示していた。これらの変化は場所によって様々に異なり一様ではなかった。
まとめ
八街市・富里市周辺においてInSAR解析を実施したところ、精密水準測量では把握出来なかった地盤沈下の時空間変化を確認できた。今後、精密水準測量に加えInSAR解析やGNSS観測により詳細な地盤変動の把握を目指すとともその要因解明を進めることが必要である。
引用文献
千葉県, 1976-2019, 精密水準測量成果.
出口知敬・六川修一・松島潤, 2009, 干渉SARの時系列解析による長期地盤変動計測. 日本リモートセンシング学会誌, 29, 418-428.
Hooper, A., D. Bekaert, K. Spaans, and M. Arikan, 2012, Recent advances in sar interferometry time series analysis for measuring crustal deformation. Tectonophysics, 514-517, 1–13.
石塚師也・松岡俊文, 2016, ALOS/PALSARデータを用いたPS干渉SAR解析の精度評価—千葉県九十九里地域の地表変動を例として. 日本リモートセンシング学会誌, 36, 328-337.
環境省, 2017, 地盤沈下観測等における衛星活用マニュアル.
荻津達・八武崎寿史, 2019, 日本地質学会第126年学術大会講演要旨.
山中雅之・森下遊・大坂優子, 2013, 干渉SAR時系列解析による地盤沈下の検出. 国土地理院時報, 124, 1-14.
地盤沈下は地下水や天然ガスかん水等の採取や自然圧密等に起因していると考えられ、これらの要因を特定しその寄与度を明らかにすることは地盤沈下の防止を考える上で非常に重要である。千葉県による精密水準測量の結果から、近年、八街市や富里市付近に複数箇所の中心を持つ広域的な地盤沈下が確認されている(荻津・八武崎, 2019)。本発表では当該地域の最近の地盤変動について、地盤沈下の要因解明のための基礎資料とすることを目的にInSAR解析を実施したのでその結果について予察的な報告を行う。
地盤沈下の概要
精密水準測量の結果(千葉県, 1976-2019)によると、1年間変動量図では1996年頃からは八街市に中心をもつ沈下が確認されはじめ、2000年代の始めからは沈下が富里市付近でも明瞭になっている。この傾向は現在まで続き2019年の沈下量は佐倉市と八街市の境界付近及び富里市の芝山町側境界付近に沈下の中心を確認できる。5年間累積変動量分布ではより顕著にこの地域の沈下を確認することができる。2012年-2017年に5cm以上沈下した地域は佐倉市から芝山町まで東北東・西南西方向に伸長した長さ約10km幅約5kmの範囲に分布している。佐倉市と八街市の境界付近、八街市と富里市の境界付近及び八街市の芝山町との境界付近の合計3カ所に沈下の中心が確認できる(荻津・八武崎, 2019)。
InSAR解析について
InSARは人工衛星等により2回以上の地表観測を行い、反射波の位相差から地表の変動を把握する技術である。近年、InSAR解析により千葉県内を対象とした地盤沈下の報告がなされている(e.g.,出口・他, 2009; 山中・他, 2013; 石塚・松岡, 2016; 環境省, 2017)が、本研究では本地域の地盤沈下について時空間的により詳細に把握することを目的にInSAR時系列解析を行った。2017年7月から2021年4月までの欧州宇宙機関(ESA)のSentinel-1A及び1Bのデータを用いてStaMPS/MTI(Hooper et al., 2012)によりPSInSAR解析を行った。
InSAR解析結果
2018年及び2019年の年間変動量の分布は精密水準測量結果と概ね整合的であった。精密水準測量で確認されている3カ所の沈下の中心は今回InSAR解析で得られた1年間変動量の分布でも認められた。また、富里市北西部から成田市にかけての地域及び富里市北東部から成田市と芝山町の境界付近に伸びる地域で若干の沈下が確認されたが、精密水準測量結果では水準点の配置の関係からこの沈下についてはとらえきれていない。
三か月毎の変動量の分布では、各時期の変動量分布の変化が大きく毎年同じ時期に同じような変動を示すような明瞭な周期変動は確認できなかった。しかし、佐倉市と八街市の境界付近に中心をもつ沈下は、4~6月に沈下範囲が南側に広がる傾向が認められた。
各地点の変動の時系列変化については、沈下の中心に近い地盤沈下の顕著な場所において単調な沈下傾向がみられた。しかし、その周辺部では時間とともに沈下と隆起を繰り返し、長期的にみると沈下傾向または隆起傾向を示していた。これらの変化は場所によって様々に異なり一様ではなかった。
まとめ
八街市・富里市周辺においてInSAR解析を実施したところ、精密水準測量では把握出来なかった地盤沈下の時空間変化を確認できた。今後、精密水準測量に加えInSAR解析やGNSS観測により詳細な地盤変動の把握を目指すとともその要因解明を進めることが必要である。
引用文献
千葉県, 1976-2019, 精密水準測量成果.
出口知敬・六川修一・松島潤, 2009, 干渉SARの時系列解析による長期地盤変動計測. 日本リモートセンシング学会誌, 29, 418-428.
Hooper, A., D. Bekaert, K. Spaans, and M. Arikan, 2012, Recent advances in sar interferometry time series analysis for measuring crustal deformation. Tectonophysics, 514-517, 1–13.
石塚師也・松岡俊文, 2016, ALOS/PALSARデータを用いたPS干渉SAR解析の精度評価—千葉県九十九里地域の地表変動を例として. 日本リモートセンシング学会誌, 36, 328-337.
環境省, 2017, 地盤沈下観測等における衛星活用マニュアル.
荻津達・八武崎寿史, 2019, 日本地質学会第126年学術大会講演要旨.
山中雅之・森下遊・大坂優子, 2013, 干渉SAR時系列解析による地盤沈下の検出. 国土地理院時報, 124, 1-14.