1:00 PM - 1:15 PM
[R3-O-1] Chronology of lahar deposits in the Sukawa basin and linkage to the past eruptions at Adatara volcano, northeast Japan
Keywords:Adatara volcano, lahar, small-scale eruption, phreatic eruption, cohesive debris flow
御嶽山2014年噴火で発生したような小規模噴火は,山頂周辺から近傍域のテフラ層序により復元されることが多い.しかしながら,近傍域はテフラの保存ポテンシャルが低く,地質記録から検知できない噴火も多い.一方で,小規模噴火といえども,それに密接に関連し発生するラハールの堆積物が下流の陸水成層や湖成層に挟まることが知られており(Cronin et al., 1997; 片岡ほか,2015; Kataoka et al., 2018),その解析から過去の噴火の発生時期や様式を復元する試みも近年なされている(Van Daele et al., 2014; Kataoka and Nagahashi, 2019; Minami et al., 2019).
安達太良火山における過去1万年間の近傍テフラ層序では,ブルカノ式噴火と水蒸気噴火によるテフラ層がそれぞれ6層(Ad-NT1〜6)と5層(Ad-p1〜5)報告されており(山元・阪口,2000),長橋・片岡(2019)は新たに2層の水蒸気噴火によるテフラ層(Ad-p4.5,-p4.7)を認定した.火山近傍で認められた同火山の小規模噴火由来のテフラ層は過去1万年前までが多く,比較的規模の大きな噴火による2層のテフラ(Ad-NH,-JM)を除けば,ブルカノ式に由来するものを含めたより古いテフラは,最終氷期における侵食作用で消失した可能性も指摘されている(山元・阪口,2000).一方,沼ノ平火口から約7 km下流に位置する酸川盆地には,酸川沿いの露頭調査により,過去約14000年間に堆積した18層のラハール堆積物が認められ(山元,1998;片岡ほか,2015),そのうち17層は泥質ラハール堆積物で,安達太良山の過去の水蒸気噴火を起源とする(片岡ほか,2015).さらに下流に位置する猪苗代湖の湖底堆積物からは,過去約5万年間にさかのぼり,安達太良火山の水蒸気噴火に由来するラハールの遠方相となる湖底密度流堆積物が多数見つかっている(Kataoka and Nagahashi, 2019).
本研究では,酸川盆地の若宮木地小屋で掘削されたボーリングコア堆積物(SKW2018コア:掘削深度32 m)を検討した.コア上部(深度0〜16.5 m)は,ラハールを含むイベント堆積物,有機質土壌層,河川成砂礫層からなる.コア下部(深度16.5 mから32 m)は河川成砂礫層と中新統の火砕岩(木地小屋層:山元,1994)のブロック(数10 cm〜数 m)の互層となる.上部のイベント堆積物は,泥質ラハール堆積物が13層,砂質イベント堆積物が6層,礫質(巨礫を含む)イベント堆積物が1層,認められた.そのうち,泥質ラハール堆積物は,層厚が13 cm〜2.7 mで,灰色や青灰色で粘土分の多い泥を基質とし,塊状・不淘汰・基質支持で,中礫から大礫サイズの安山岩亜円礫および角張った白色変質岩片を含む.堆積物の特徴は,酸川沿いの露頭で認められるラハール堆積物(山元,1998;片岡ほか,2015)と同じであり,粘着性土石流による堆積物と解釈できる.また,粘土や変質岩片に富む特徴は,安達太良火山の変質帯を起源とする水蒸気噴火によるものと考えられる.
泥質ラハール堆積物中に含まれる有機物または上下に挟在する古土壌層から14C年代値を得た.その結果,酸川沿いの露頭から発見された既存のラハール堆積物よりも,より古い年代値を示す約31,000年前頃(暦年値)のものが少なくとも5層あることが明らかとなった.この5層は年代値が近接しているが,それぞれの間に土壌層を挟むことから,火山噴出物やラハール堆積物を母材とした繰り返しの再堆積ではなく,個別の噴火に対応したラハールイベントが発生したことが考えられる.猪苗代湖の湖底堆積物に挟まる安達太良火山の個々の小規模噴火に由来するラハール堆積物の遠方相は,その挟在間隔は数年から数十年単位のものが数多く捉えられていることから(Kataoka and Nagahashi, 2019),ラハールの起因となった安達太良火山での小規模水蒸気噴火は,短周期で繰り返し発生していた可能性が高い.
<文献> Cronin et al. (1997) JVGR, 76, 47–61.片岡ほか(2015)火山,60,461–475.Kataoka et al. (2018) EPS, 70, 113.Kataoka and Nagahashi (2019) Sedimentology, 66, 2784–2827. Minami et al. (2019) JVGR, 387, 106661.長橋・片岡(2019)地球科学,73,47–48.Van Daele et al. (2014) GSAB, 126, 481–498.山元(1994)地調月報,45,135–155.山元(1998)火山,43,61-68.山元・阪口(2000)地質雑,106,865–882.
安達太良火山における過去1万年間の近傍テフラ層序では,ブルカノ式噴火と水蒸気噴火によるテフラ層がそれぞれ6層(Ad-NT1〜6)と5層(Ad-p1〜5)報告されており(山元・阪口,2000),長橋・片岡(2019)は新たに2層の水蒸気噴火によるテフラ層(Ad-p4.5,-p4.7)を認定した.火山近傍で認められた同火山の小規模噴火由来のテフラ層は過去1万年前までが多く,比較的規模の大きな噴火による2層のテフラ(Ad-NH,-JM)を除けば,ブルカノ式に由来するものを含めたより古いテフラは,最終氷期における侵食作用で消失した可能性も指摘されている(山元・阪口,2000).一方,沼ノ平火口から約7 km下流に位置する酸川盆地には,酸川沿いの露頭調査により,過去約14000年間に堆積した18層のラハール堆積物が認められ(山元,1998;片岡ほか,2015),そのうち17層は泥質ラハール堆積物で,安達太良山の過去の水蒸気噴火を起源とする(片岡ほか,2015).さらに下流に位置する猪苗代湖の湖底堆積物からは,過去約5万年間にさかのぼり,安達太良火山の水蒸気噴火に由来するラハールの遠方相となる湖底密度流堆積物が多数見つかっている(Kataoka and Nagahashi, 2019).
本研究では,酸川盆地の若宮木地小屋で掘削されたボーリングコア堆積物(SKW2018コア:掘削深度32 m)を検討した.コア上部(深度0〜16.5 m)は,ラハールを含むイベント堆積物,有機質土壌層,河川成砂礫層からなる.コア下部(深度16.5 mから32 m)は河川成砂礫層と中新統の火砕岩(木地小屋層:山元,1994)のブロック(数10 cm〜数 m)の互層となる.上部のイベント堆積物は,泥質ラハール堆積物が13層,砂質イベント堆積物が6層,礫質(巨礫を含む)イベント堆積物が1層,認められた.そのうち,泥質ラハール堆積物は,層厚が13 cm〜2.7 mで,灰色や青灰色で粘土分の多い泥を基質とし,塊状・不淘汰・基質支持で,中礫から大礫サイズの安山岩亜円礫および角張った白色変質岩片を含む.堆積物の特徴は,酸川沿いの露頭で認められるラハール堆積物(山元,1998;片岡ほか,2015)と同じであり,粘着性土石流による堆積物と解釈できる.また,粘土や変質岩片に富む特徴は,安達太良火山の変質帯を起源とする水蒸気噴火によるものと考えられる.
泥質ラハール堆積物中に含まれる有機物または上下に挟在する古土壌層から14C年代値を得た.その結果,酸川沿いの露頭から発見された既存のラハール堆積物よりも,より古い年代値を示す約31,000年前頃(暦年値)のものが少なくとも5層あることが明らかとなった.この5層は年代値が近接しているが,それぞれの間に土壌層を挟むことから,火山噴出物やラハール堆積物を母材とした繰り返しの再堆積ではなく,個別の噴火に対応したラハールイベントが発生したことが考えられる.猪苗代湖の湖底堆積物に挟まる安達太良火山の個々の小規模噴火に由来するラハール堆積物の遠方相は,その挟在間隔は数年から数十年単位のものが数多く捉えられていることから(Kataoka and Nagahashi, 2019),ラハールの起因となった安達太良火山での小規模水蒸気噴火は,短周期で繰り返し発生していた可能性が高い.
<文献> Cronin et al. (1997) JVGR, 76, 47–61.片岡ほか(2015)火山,60,461–475.Kataoka et al. (2018) EPS, 70, 113.Kataoka and Nagahashi (2019) Sedimentology, 66, 2784–2827. Minami et al. (2019) JVGR, 387, 106661.長橋・片岡(2019)地球科学,73,47–48.Van Daele et al. (2014) GSAB, 126, 481–498.山元(1994)地調月報,45,135–155.山元(1998)火山,43,61-68.山元・阪口(2000)地質雑,106,865–882.