128th JGS: 2021

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T7.[Topic Session]Advance in geochronology applied for high resolution eruption and evolution history of volcanoes

[1poster10-11] T7.[Topic Session]Advance in geochronology applied for high resolution eruption and evolution history of volcanoes

Sat. Sep 4, 2021 4:30 PM - 7:00 PM poster (poster)

4:30 PM - 7:00 PM

[T7-P-2] K-Ar dates of rocks from Nekoma Volcano, Fukushima Prefecture, Japan using mass fractionation correction procedure

*Naoyoshi Iwata1, Kouji Iwatare1,2, Kazuo Saito1,3 (1. Faculty of Science, Yamagata University, 2. BWR Operator Training Center, 3. Professor Emeritus, Yamagata University)

Keywords:K-Ar dating, Nekoma Volcano, mass fractionation correction procedure

100万年より若い火山岩のK-Ar年代測定において放射起源40Arを正確に定量しようとする場合,試料がもつ初生Arの同位体比(40Ar/36Ar)が大気のAr同位体比と同一であると仮定できるかどうかが問題になる(高岡,1989など).38Arスパイクを使用しない感度法(ピーク値比較法ともいう)でAr同位体分析を行い,試料の38Ar/36Ar比と大気の38Ar/36Ar比を比較することで,初生Arの同位体分別の有無を確認することができる.そして同位体分別の大きさが質量差に依存すると仮定することで,初生Arが同位体分別を受けた大気成分であっても,質量分別補正を行うことで正確に放射起源40Arを定量することが可能である(高岡,1989・松本ほか,1989など).このことから,若い火山で高精度火山噴火史・発達史を作成するためには,質量分別補正を施したK-Ar年代値を利用することが望ましいと考えられる.質量分別補正を行った感度法K-Ar年代測定の例として,東北日本・猫魔火山での結果を紹介する.
猫魔火山の形成史は三村(2002)によってまとめられている.三村(2002)は地質調査と放射年代測定の結果から,猫魔火山の活動を古猫魔火山(>1 Ma-0.7 Ma)と新猫魔火山(0.5 Ma-0.4 Ma)に区分し,両者の間に山体崩壊によるカルデラ形成があったとした.猫魔火山の放射年代はNEDO(1991)と三村(2002)によって報告されている.NEDO(1991)は9試料に対してK-Ar年代測定を行い,1.11 Ma-0.47 Maの年代値を得た.三村(2002)は5試料に対してK-Ar年代測定を行い,そのうち2試料で1.43 Maと0.68 Maという年代値を得た.ただし,NEDO(1991)と三村(2002)にはAr定量方法に関する詳細な記述がないため,示されているK-Ar年代値に質量分別補正が行われていたかどうかは不明である.
猫魔火山の岩石試料に対して,岩垂(1992MS)が感度法によるK-Ar年代測定を行った.その結果を整理してIwata et al. (2021)が報告した.質量分別補正を行って得られたK-Ar年代値は古猫魔火山相当の試料で0.68 Ma-0.40 Ma,新猫魔火山相当の試料で~0.2 Maであり,1 Maを超える年代値は得られなかった.
NEDO(1991)は猫魔火山の古地磁気測定を行っている.猫魔火山の噴出物は,帯磁方向のばらつきが大きい1試料を除いて9試料が正帯磁を示すとし,Brunhes Normal Epoch (0.773 Ma~現在)もしくはJaramillo Event(1.071 Ma-0.990 Ma)に対比できるとした(NEDO,1991;境界の年代値はCohen and Gibbard, 2019).質量分別補正を行った感度法K-Ar年代値に1 Maより古いものがなかったことは,猫魔火山の噴出物がBrunhes Normal Epochに形成されたということを支持すると考えられる.
引用文献
Cohen, K. M. and Gibbard, P. L. (2019) Quaternary International, 500, 20-31.
岩垂巧二(1992MS) 山形大学理学部地球科学科卒業論文,35 p.
Iwata, N., Iwatare, K. and Saito, K. (2021) Bull. Yamagata Univ. (Natl. Sci.), 19(4),15-25.
松本哲一・宇都浩三・柴田賢(1989) 質量分析,37(6),353-363.
三村弘二(2002) 火山,47(4),217-225.
NEDO(1991)広域熱水流動系調査 磐梯地域 火山岩分布・年代調査報告書要旨,201 p.
高岡宣雄(1989) 質量分析,37(6),343-351.