4:30 PM - 7:00 PM
[R3-P-1] Along-axis variation of eruptive styles on the spreading ridge inferred from the V1 unit in the northern Oman Ophiolite
Keywords:Pillow lava, Ridge segment, Oman Ophiolite, Volcanic stratigraphy
はじめに
1990年代以降,水深500 m以上の深海底で発生した爆発的な噴火が直接観察され,大洋中央海嶺でも噴火発生から間もなく観察することができるようになった(e.g. Rubin et al., 2012).これらの深海底における噴火活動の観測は,1回の噴火における噴出物の産状とその分布を描き出すことを可能にし,噴火の継続時間,噴出量や噴出率をより詳細に明らかにしてきた.しかし,これらの溶岩の層厚や噴火履歴,すなわち海洋地殻の成長発達過程を現代の深海底で明らかにすることは非常に難しい.そこで我々は,中生代の海洋リソスフェアが陸上に衝上することによって形成された中東のオマーンオフィオライトにおいて,溶岩層序を地質学的・岩石学的に解析し,海嶺軸上及びその周辺の噴火活動を復元した.
火山岩の産状
Wadi Fizh地域におけるV1層の火山岩層序はKusano et al. (2012)で報告され,溶岩の産状に基づく岩相組み合わせによって,これらが海嶺軸上で形成され,その後海嶺拡大に伴って海嶺翼部に移動し,オフアクシス火山活動によってさらに上部地殻の層厚を増していたことが明らかになった.
Bani Ghayth地域では,層厚約900 mのV1層が確認できる.溶岩は,パホイホイ溶岩,ロベートシート溶岩,シート溶岩,マシブ溶岩に区分される.溶岩層の下部では,パホイホイ溶岩が上下方向に圧縮・癒着したレンズ上の形態で産し,遠目にはマシブ溶岩のように見える.ここではマシブ溶岩に伴われるごく薄い枕状溶岩を除くと,枕状溶岩は確認されない.海底で噴出した溶岩の産状は主に原地形(斜度),噴出率と冷却率によって変化する(White et al., 2015)ので,この地域の溶岩はかなり平坦な地形に噴出したことが推定される.そこで,パホイホイ溶岩が袋状に産する層厚を,枕状溶岩が形成される噴出率に疑似近似して,Wadi Fizh地域で確認された岩相組み合わせを適用する.その結果,下部は海嶺軸部で,上部は海嶺翼部~オフアクシスで形成されたと考えられる.最上部の層厚400 mは,溶岩層下部との化学組成の違いからオフアクシス火成活動によって形成された可能性が高い.
海嶺セグメントによる溶岩の産状変化
Wadi Fizh地域とBani Ghayth地域は, 2~3次の海嶺セグメント(Adachi and Miyashita, 2003; Miyashita et al. 2003; Umino et al. 2003)の境界部と中心部に相当する.プレート拡大速度を一定とみなすと,マグマ供給率の高いセグメント中心部ではマグマの貫入・噴出が拡大を担い,供給率が低い境界部ではマグマの貫入よりも構造的な拡大が先行すると考えられ,この違いは火山岩の産状の変化などに現れると期待される.
両地域の溶岩の産状を比較すると,1)溶岩層序における枕状溶岩の比率の違い,2)1枚の溶岩の厚さの違い,3)どちらにもオフアクシス火成活動が起こっていることが認められる.これらの違いから海嶺セグメント位置による火成活動の系統的な変化を推定してみる.セグメント境界部では枕状溶岩が全体の30%を占めるが,中心部ではほとんど形成されていないことから,セグメント境界部のほうがより地形の起伏に富み,相対的に噴出率が低かったと考えられる.また,セグメント境界部では溶岩ユニット1層が厚くユニット数は少ないが,中心部では溶岩ユニット1層が薄く,ユニット数は多い.これは,噴出イベントの規模と頻度の違いによると考えられ,セグメント境界部では噴出イベントは少ないものの1回のイベントは大規模になる一方,中心部では小規模な噴出イベントが頻繁に発生することを示唆している.
双方でオフアクシス火成活動が認められるものの,セグメント境界部では軸上火成活動とは異なる化学組成の溶岩を噴出しているのに対して,中心部はほとんど化学組成に変化がない.マグマ供給率が低いセグメント境界部では,海嶺軸下マグマ溜まりを経由しなかったマグマがオフアクシスで噴出するのに対して,供給率が高いセグメント中心部では海嶺軸部で噴出できなかった余剰のマグマをオフアクシスで噴出させているのかもしれない.
引用文献
Adachi and Miyashita, 2003, G3.,4, 8619.
Kusano et al., 2012, G3., 13, Q05012.
Miyashita et al. 2003, G3.,4, 8617.
Rubin et al., 2012, Oceanography, 25, 142-157.
Umino et al. 2003, G3.,4, 8618.
White et al., 2015, In The Encyclopedia of Volcanoes, 2nd Ed, 363-375.
1990年代以降,水深500 m以上の深海底で発生した爆発的な噴火が直接観察され,大洋中央海嶺でも噴火発生から間もなく観察することができるようになった(e.g. Rubin et al., 2012).これらの深海底における噴火活動の観測は,1回の噴火における噴出物の産状とその分布を描き出すことを可能にし,噴火の継続時間,噴出量や噴出率をより詳細に明らかにしてきた.しかし,これらの溶岩の層厚や噴火履歴,すなわち海洋地殻の成長発達過程を現代の深海底で明らかにすることは非常に難しい.そこで我々は,中生代の海洋リソスフェアが陸上に衝上することによって形成された中東のオマーンオフィオライトにおいて,溶岩層序を地質学的・岩石学的に解析し,海嶺軸上及びその周辺の噴火活動を復元した.
火山岩の産状
Wadi Fizh地域におけるV1層の火山岩層序はKusano et al. (2012)で報告され,溶岩の産状に基づく岩相組み合わせによって,これらが海嶺軸上で形成され,その後海嶺拡大に伴って海嶺翼部に移動し,オフアクシス火山活動によってさらに上部地殻の層厚を増していたことが明らかになった.
Bani Ghayth地域では,層厚約900 mのV1層が確認できる.溶岩は,パホイホイ溶岩,ロベートシート溶岩,シート溶岩,マシブ溶岩に区分される.溶岩層の下部では,パホイホイ溶岩が上下方向に圧縮・癒着したレンズ上の形態で産し,遠目にはマシブ溶岩のように見える.ここではマシブ溶岩に伴われるごく薄い枕状溶岩を除くと,枕状溶岩は確認されない.海底で噴出した溶岩の産状は主に原地形(斜度),噴出率と冷却率によって変化する(White et al., 2015)ので,この地域の溶岩はかなり平坦な地形に噴出したことが推定される.そこで,パホイホイ溶岩が袋状に産する層厚を,枕状溶岩が形成される噴出率に疑似近似して,Wadi Fizh地域で確認された岩相組み合わせを適用する.その結果,下部は海嶺軸部で,上部は海嶺翼部~オフアクシスで形成されたと考えられる.最上部の層厚400 mは,溶岩層下部との化学組成の違いからオフアクシス火成活動によって形成された可能性が高い.
海嶺セグメントによる溶岩の産状変化
Wadi Fizh地域とBani Ghayth地域は, 2~3次の海嶺セグメント(Adachi and Miyashita, 2003; Miyashita et al. 2003; Umino et al. 2003)の境界部と中心部に相当する.プレート拡大速度を一定とみなすと,マグマ供給率の高いセグメント中心部ではマグマの貫入・噴出が拡大を担い,供給率が低い境界部ではマグマの貫入よりも構造的な拡大が先行すると考えられ,この違いは火山岩の産状の変化などに現れると期待される.
両地域の溶岩の産状を比較すると,1)溶岩層序における枕状溶岩の比率の違い,2)1枚の溶岩の厚さの違い,3)どちらにもオフアクシス火成活動が起こっていることが認められる.これらの違いから海嶺セグメント位置による火成活動の系統的な変化を推定してみる.セグメント境界部では枕状溶岩が全体の30%を占めるが,中心部ではほとんど形成されていないことから,セグメント境界部のほうがより地形の起伏に富み,相対的に噴出率が低かったと考えられる.また,セグメント境界部では溶岩ユニット1層が厚くユニット数は少ないが,中心部では溶岩ユニット1層が薄く,ユニット数は多い.これは,噴出イベントの規模と頻度の違いによると考えられ,セグメント境界部では噴出イベントは少ないものの1回のイベントは大規模になる一方,中心部では小規模な噴出イベントが頻繁に発生することを示唆している.
双方でオフアクシス火成活動が認められるものの,セグメント境界部では軸上火成活動とは異なる化学組成の溶岩を噴出しているのに対して,中心部はほとんど化学組成に変化がない.マグマ供給率が低いセグメント境界部では,海嶺軸下マグマ溜まりを経由しなかったマグマがオフアクシスで噴出するのに対して,供給率が高いセグメント中心部では海嶺軸部で噴出できなかった余剰のマグマをオフアクシスで噴出させているのかもしれない.
引用文献
Adachi and Miyashita, 2003, G3.,4, 8619.
Kusano et al., 2012, G3., 13, Q05012.
Miyashita et al. 2003, G3.,4, 8617.
Rubin et al., 2012, Oceanography, 25, 142-157.
Umino et al. 2003, G3.,4, 8618.
White et al., 2015, In The Encyclopedia of Volcanoes, 2nd Ed, 363-375.