128th JGS: 2021

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R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

[1poster21-29] R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

Sat. Sep 4, 2021 4:30 PM - 7:00 PM poster (poster)

4:30 PM - 7:00 PM

[R4-P-8] (entry) Relation between existence of ca. 1.9–1.85 Ga metamorphic zircons and metamorphic facies in the Yeongnam Massif, South Korea

*Kenichiro IWAMIZU1,2, Yasutaka HAYASAKA1, Ji-Hoon KANG3, Kosuke KIMURA1,4, Tomoyuki SHIBATA1 (1. Hiroshima Univ., 2. The Univ. of Tokyo, 3. Andong Nat. Univ., 4. Nat. Inst. of Tech., Kure College)

Keywords:South Korea, Yeongnam Massif, greenschist facies, granite, zircon

背景
 韓国の先カンブリア時代の基盤岩は、北西部の京畿地塊と南東部の嶺南地塊に分布する。嶺南地塊の基盤岩の変成相の大部分は低圧型の角閃岩相だが、南西部・北中部にはそれぞれ、低圧型のグラニュライト相・緑色片岩相の領域が広く分布する(Lee, S.-M., 1973)。嶺南地塊の基盤をなす約 2–1.96 Ga の花崗岩類はいずれも、約 1.9–1.85 Ga の変成年代を持つ(Kim, N. et al., 2014; Lee, B.-C. et al., 2019; Cho, D.-L. et al., 2020)。この約 1.9–1.85 Ga の変成年代は、嶺南地塊における、約 1.9–1.85 Ga の優白質花崗岩の貫入を伴う角閃岩相の広域変成作用の時期を示す(Cho, M. et al., 2017)。また、嶺南地塊・南西部において、約 1.88 Ga の貫入岩は、約 1.86 Ga のグラニュライト相の変成年代を持つ(Lee, B.-C. et al., 2017)。これら約 1.9–1.85 Ga の変成年代はいずれも、ジルコンの変成リムから得られている。
 一般にジルコンの変成リムは、角閃岩相以上の高温の変成作用に伴って形成される(早坂, 2011; 猪川, 2016)。よって、嶺南地塊における角閃岩相~グラニュライト相の変成作用に伴うジルコンの変成リムの形成は、前文と整合的である。

目的
 早坂 (2011); 猪川 (2016) に基づくと、緑色片岩相の変成作用では、ジルコンの変成リムは形成されないと考えられる。よって、緑色片岩相が広く分布する嶺南地塊・北中部の雪川地域においては、約 2–1.96 Ga の花崗岩類のジルコンは、約 1.9–1.85 Ga の変成リムを持たないと予想されるが、先行研究は無い。よって我々はこの問題に取り組むため、嶺南地塊の雪川地域で花崗岩を採取した。

手法
 花崗岩からジルコンを分離し、SEM を用いてジルコンの CL 像を撮影し、分析点を選定した。その後、LA-ICP-MS を用いてジルコン U–Pb 年代を測定した。本システムは勝部ほか (2012) に基づく。また、薄片の観察と全岩化学組成の分析を行った。一連の分析は広島大学で行った。

結果
 主要造岩鉱物は、石英・斜長石・アルカリ長石・角閃石である。花崗岩は全体的に優白質である。全岩化学組成について、花崗岩は metaluminous の領域に存在する。これは、嶺南地塊の約 2–1.96 Ga の花崗岩類を全て peraluminous とする先行研究(Kim, N. et al., 2014; Lee, B.-C. et al., 2019; Cho, D.-L. et al., 2020)と異なる。
 ジルコンは、コア・マントルの 2 層構造を示すものと、マントルのみの 1 層構造を示すものに大別される。コアは、均質または縞状の内部構造を示し、約 2.5–2.4 Ga のコンコーダントな U–Pb 年代を示し、Th/U 比が全て 0.1 以上と高い。マントルは、波動累帯構造または縞状構造を示し、約 2 Ga 付近にコンコーダントな U–Pb 年代が集中し、Th/U 比が全て 0.1 以上と高い。約 2 Ga に集中するコンコーダントなマントルの年代の加重平均は 1997 ± 10 Ma である。ジルコンのリムは確認できなかった。

考察
 全岩化学組成が例外的に metaluminous である原因は不明である。
 前述の加重平均(1997 ± 10 Ma)が、マグマの固結年代だと考えられる。よって、約 2.5–2.4 Ga のコアは、inherited ジルコンだと考えられる。実際、嶺南地塊の inherited ジルコンの U–Pb 年代分布は、約 2.5 Ga 付近に最大の極大値を持つ(Kim, N. et al., 2014)。嶺南地塊に広く分布する約 2–1.96 Ga の花崗岩としては例外的に、約 1.9–1.85 Ga の変成年代(ジルコンの変成リム)が得られなかった。その原因は、嶺南地塊・雪川地域の変成相が緑色片岩相であるため、ジルコンの変成リムの形成に必要な 530 ℃ 以上の温度(猪川, 2016)に達しなかったからだと考えられる。

文献
Cho, D.-L. et al., 2020, Precambrian Res., 340, 105631.
Cho, M. et al., 2017, Geosci. J., 21, 845–865.
早坂 康隆, 2011, 日本地質学会 第118年 学術大会 講演要旨, R7-O-3.
猪川 千晶, 2016, 総研大 修士論文
勝部 亜矢ほか, 2012, 地質雑, 118, 762–767.
Kim, N. et al., 2014, Precambrian Res., 242, 1–21.
Lee, B.-C. et al., 2017, Precambrian Res., 298, 439–461.
Lee, B.-C. et al., 2019, Gondwana Res., 72, 34–53.
Lee, S.-M., 1973, J. Geol. Soc. Korea, 9, 11–23.