4:30 PM - 7:00 PM
[R5-P-1] Early Triassic accretionary unit recognized in the Nedamo Belt and correlation with Southwest Japan
Keywords:Nedamo Belt, Takinosawa Unit, U-Pb age, zircon, Early Triassic
北上山地中西部に位置する根田茂帯は,かつては南部北上帯と北部北上帯を境する構造帯と考えられ,早池峰構造帯と呼ばれていた(例えば,吉田・片田,1964).しかし,21世紀に入り,岩相の特徴や泥岩より見出された放散虫化石から,根田茂帯に分布する地質体は前期石炭紀の付加体と考えられるようになった(内野ほか,2005;永広ほか,2005).この付加体は根田茂コンプレックスと定義され,更に岩相の違いから南西部の綱取ユニットと北東部の滝ノ沢ユニットに区分された(内野ほか,2008).滝ノ沢ユニットからは化石を含め年代が得られておらず,同ユニットは前期石炭紀根田茂コンプレックスの下位階層に属するものの,前期石炭紀とジュラ紀の付加体間に位置することから,ペルム紀付加体の可能性も指摘されていた(内野ほか,2008). 綱取ユニットは,泥岩珪長質凝灰岩互層,珪長質凝灰岩,玄武岩が卓越し,チャートや石灰岩,石英長石質砂岩をほとんど含まないことを特徴とする.滝ノ沢ユニットは綱取ユニットと似た岩相を示すが,層状チャートや石英長石質砂岩,砂岩泥岩互層を含んでくる.なお,両ユニットの分布域(根田茂帯)には,高圧変成岩の岩塊や南部北上帯基盤と考えられる蛇紋岩・角閃石斑れい岩・石英閃緑岩の岩塊が産する. 本公演では,滝ノ沢ユニットの珪長質凝灰岩2試料と砂岩3試料から得られたジルコンのU–Pb年代を報告する(一部は,内野・大藤,2014で発表).結果としては,前者からは前期ペルム紀の,後者からは後期ペルム紀~前期三畳紀の最若クラスター年代が得られた.珪長質凝灰岩の方が有意に古い値を示すが,本岩には砂岩が堆積した際の堆積同時性ジルコンが含まれなかったと解釈し,滝ノ沢ユニットの付加年代を前期三畳紀と判断した(Uchino, 2021). 日本列島において,前期三畳紀の付加体はほとんど知られておらず,同時代の付加体がマッパブルに示せるのは根田茂帯のみである.近年,四国黒瀬川帯の後期ペルム紀付加体(新改ユニット及び檜曽根ユニット)の砂岩から後期ペルム紀のみならず前期三畳紀の砕屑性ジルコンが見出され(Hara et al., 2018; Ohkawa et al., 2021),黒瀬川帯にも滝ノ沢ユニットと同様の年代の付加体が分布する可能性がある. 北上山地には南から南部北上帯の中古生代島弧陸棚層およびオルドビス紀~シルル紀火成岩基盤岩類,母体–松ヶ平帯の高圧変成岩,根田茂帯の前期石炭紀および前期三畳紀付加体,北部北上帯の前期ジュラ紀~最前期白亜紀付加体が分布する.また,釜石地域の北部北上帯南西端部では後期ペルム紀付加体の存在が指摘されている(Nakae and Kurihara, 2011).黒瀬川帯には,前期石炭紀付加体は認められていないが,それ以外は北上山地の地質体と同様の組み合わせを示している.今回の前期三畳紀付加体の認定は,磯﨑・丸山(1991)などによってかねてから指摘されていた東北日本と西南日本の対比について,よりサポートできる材料となった.また,データが少ない前期三畳紀の島弧海溝系テクトニクスについても貴重な情報をもたらすと考えられる.
[引用文献]
永広ほか(2005)日本の地質増補版編集委員会編,日本の地質増補版,49–50,共立出版.
Hara et al. (2018) J. Asian Earth Sci., 151, 112–130. https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2017.10.025
磯﨑・丸山(1991)地学雑誌,100,697–761.https://doi.org/10.5026/jgeography.100.5_697
Nakae and Kurihara (2011) Palaeoworld, 20, 146–157. https://doi.org/10.1016/j.palwor.2010.12.003
Ohkawa et al. (2021) J. Asian Earth Sci., 212, 104724. https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2021.104724
Uchino (2021), Island Arc, 30, e12397. doi:10.1111/iar.12397
内野・大藤(2014)日本地質学会第121年学術大会講演要旨.228.
内野ほか(2005)地質雑,111, 249–252.https://doi.org/10.5575/geosoc.111.249
内野ほか(2008)地質雑,114, S141–S157. https://doi.org/10.5575/geosoc.114.S141
吉田・片田(1964)1/5万地質図幅「大槌・霞露岳」.
[引用文献]
永広ほか(2005)日本の地質増補版編集委員会編,日本の地質増補版,49–50,共立出版.
Hara et al. (2018) J. Asian Earth Sci., 151, 112–130. https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2017.10.025
磯﨑・丸山(1991)地学雑誌,100,697–761.https://doi.org/10.5026/jgeography.100.5_697
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Ohkawa et al. (2021) J. Asian Earth Sci., 212, 104724. https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2021.104724
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内野・大藤(2014)日本地質学会第121年学術大会講演要旨.228.
内野ほか(2005)地質雑,111, 249–252.https://doi.org/10.5575/geosoc.111.249
内野ほか(2008)地質雑,114, S141–S157. https://doi.org/10.5575/geosoc.114.S141
吉田・片田(1964)1/5万地質図幅「大槌・霞露岳」.