128th JGS: 2021

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R6 [Regular Session]Geopark

[1poster38-39] R6 [Regular Session]Geopark

Sat. Sep 4, 2021 4:30 PM - 7:00 PM poster (poster)

4:30 PM - 7:00 PM

[R6-P-1] Survey and research activities of Itoigawa UNESCO Global Geopark in cooperation with research institutes. Efforts to connect research to value discovery, protection and conservation, and outreach activities

*Takahiko Ogawara1, Takuma Katori2, Yousuke Ibaraki1, Ko Takenouchi1, Takeo Kobayashi2 (1. Fossa Magna Museum, 2. Itoigawa City Hall Geopark Promotion Office)

Keywords:Itoigawa UNESCO Global Geopark, Fossa Magna Museum, Kosmochlor, Mt. Asahi

新潟県糸魚川市は,国石に認定された宝石「ヒスイ」や,日本列島を東西に分断する大断層である糸魚川-静岡構造線など,地質資源に恵まれた町である.2009年には,日本初の世界ジオパークに認定され,地質資源を活かした研究・教育を基礎にした地域社会づくりを実践している.

 糸魚川市には,地質系の学芸員が5名在席し,各々の専門分野を活かした研究活動を推進している.専門分野の内訳は,構造地質学2名,古生物学1名,堆積学1名,鉱物学1名であり,年齢層は,50代が1名,40代が1名,30代が1名,20代が2名と専門分野の多様性とともに,年齢層においても重複がないよう計画的に雇用し,持続的な研究活動が推進できる体制を構築している.
 糸魚川ジオパーク協議会では,研究活動において,研究機関との連携を強化してきた. 2013年には,新潟県内の上越教育大学と包括連携協定を締結し,0才から18才までの子ども一貫教育方針のもとでのジオパーク学習の推進において連携している.環境省信越自然環境事務所とは2013年に連携協定を締結し,記念講演会や国立公園写真展の開催,体験イベントや体験学習などで連携している.新潟大学とは,2016年に包括連携協定を締結し,さらに2020年に糸魚川フォッサマグナミュージアムが新潟大学理学部のサテライトミュージアムとなった.恐竜化石の発見をめざした中生界の地質・化石調査やダブルホーム活動,シンポジウムの開催,こども学迎員による糸魚川ジオパークの解説パネルの理学部サイエンスミュージアムへの展示,理学部のインターン生の受入など幅広い分野で連携を深めている.
 本稿では,研究機関と協力した調査研究活動によって生まれた新発見が,その後の保護保全活動やアウトリーチ活動に繋がった例を紹介する.

 2020年に,糸魚川市内でコスモクロア輝石と呼ばれる貴重な鉱物の露頭が発見された.この露頭は,アマチュア鉱物研究家の大木氏と鈴木氏により発見され,糸魚川ジオパークにもその情報がもたらされた.フォッサマグナミュージアムでは,露頭の現場を確認し,島根大学の高須名誉教授,新潟大学の植田准教授とともに,露頭の科学的価値を検討した.
 その結果を踏まえて,2020年7月3日に市の天然記念物に露頭を指定し,監視カメラや柵の設置を実施した.今回のコスモクロア輝石の露頭の発見では,大学の研究者とうまく連携することにより,露頭の科学的価値を解明し,迅速に保護保全活動に結びつけることができた.
 この露頭では,現在でも大学による調査研究活動が続けられており,その成果の一部は糸魚川フォッサマグナミュージアムでの講演会や現地見学会にも活かされている.

 2021年は,糸魚川市内の日本海に面する親不知から北アルプスの朝日岳や白馬岳へと続く,縦走路「栂海(つがみ)新道」が開通し50周年の節目の年となる.糸魚川ジオパーク協議会と糸魚川フォッサマグナミュージアムは,文化庁の「地域と協働した博物館活動助成事業」に採択され,栂海岳友会など地元山岳団体や糸魚川市観光協会,新潟大学,上越教育大学,糸魚川市理科教育センターと協力し,博物館での特別展の開催と,栂海新道の学術調査を実施している.
 栂海新道の朝日岳(標高2,418m)付近は,急峻な地形のため,地質調査や動植物の調査がほとんど実施されていない.今回,文化庁の補助事業を活用し,新潟大学,上越教育大学,産業技術総合研究所,糸魚川市理科教育センター,糸魚川フォッサマグナミュージアムでの合同調査を実施することができた.これは,糸魚川ジオパーク協議会が締結してきた連携協定の成果であり,調査結果は,地域の保護保全活動やジオサイトの認定に活用される予定である.

 ジオパーク活動は,学術的知見をジオサイトや発行する印刷物や展示物,講演会など幅広い内容で活用し,多くの方に普及できる仕組みがある.また,地域の博物館など研究施設には,地元住民やアマチュア研究者を含めたコミュニティが形成されており,分野を問わず地域課題を探求し蓄積していくことができ,天然記念物や国立公園の範囲など,研究をする上で必要な許可申請についても豊富な知識を持つ.
 ジオパークが進めている活動は,研究機関の調査研究活動の助けになるだけではなく,アウトリーチ活動の場としても研究機関にとって重要であるといえる.