4:30 PM - 7:00 PM
[R7-P-1] Post-rift extensional stresses detected from meso-scale faults in the Miocene Hokutan Group, northern Kami Town, San'in region
Keywords:Miocene, paleostress, meso-scale fault, zircon U-Pb age, Japan Sea Opening
中新世の西南日本のテクトニクスは,日本海の拡大の終了が起こった1500万年前を境に,転換を遂げたと考えられてきた(例えばYamaji and Yoshida, 1998).すなわち,日本海拡大期(シンリフト期)の伸張場と拡大終了後(ポストリフト期)の圧縮場である.しかし最近,西南日本陸域のリフト期の終了は従来の想定よりも100万年ほど古く,1600万年前頃と示された(Haji and Yamaji, 2020).また他方で,それより若い引張応力も発見され始めた(Haji and Yamaji, 2021; Sato, D. and Haji, 2021).このように西南日本の変動史は上記の描像のように単純ではなく,修正が必要なことが明らかとなった.
発表者らはこの変動史の修正を目指し,小断層や岩脈といった小構造の方位解析から応力史の再検討を進めている.今回,山陰東部の中新統北但層群中の小断層を対象として古応力解析を行い,ポストリフト期の引張応力を得た.本講演ではその結果を示すとともに,その意義を議論する.
調査対象としたのは,兵庫県香美町北部の海岸沿いに露出する中新統北但層群である.調査地域の北但層群は凝灰質の陸成~海成の砕屑岩からなり,従来はシンリフト期の地層である八鹿層および豊岡層(1650~2150万年前頃の地層;羽地ほか,2019)と考えられてきた(例えば,池辺, 1963).しかし,本研究で我々は火山礫凝灰岩のジルコンU-Pb年代測定を行い,15.4 Ma頃の年代を得た.したがって,同地域の砕屑岩はポストリフト期の地層であると示唆される.
香住北東地域で119条,香住北西地域で71条,鎧地域で35条,餘部地域で22条の小断層データを得た.小断層解析にはHough変換を用いた解析法であるHIM(Yamaji et al., 2006; Sato, K., 2006)を使用した.小断層を測定した母岩の地層は傾斜が最大15度程度と緩傾斜であったため,傾動補正は行っていない.応力解析の結果,いずれの地域のデータからもNNE~NE方向に最小圧縮主応力軸を持つ,応力比が低めの正断層型応力を得た.
山陰東部地域では過去にFournier et al. (1995)によって中新統の小断層から古応力が検討されており,彼らはNW-SE引張のtranstensionalな応力が記録されていると結論した.本研究の得た応力はこれと引張方向が異なる.彼らは今回の我々の調査地域は対象としておらず,周辺の火山岩主体の地域で小断層データを採取している.この火山岩主体の地層は,本研究の砕屑岩の下位と想定されるため,得られた応力の差は引張方向の転換を示している可能性がある.山陰東部は既存の中新統層序に問題があることが知られており,この応力差の検討のためにも層序の解明は今後の課題である.
最近,Haji and Yamaji (2021)は北但層群の分布域南縁に分布する岩脈と小断層を用いて応力史を検討し,ポストリフト期に引張応力場が存在したことを指摘した.彼らの得た応力は,NE-SW方向に最小主応力軸を持ち,応力比が低い応力であった.本研究の調査地域は北但層群の陸域の分布域北縁に位置するが,得た応力はこれと調和的である.したがって,北但層群の分布する広い範囲においてポストリフト期にNE-SW方向の引張応力状態にあったと考えられる.
<引用文献>
Fournier et al., 1995, Jour. Geophys. Res., 100, 24295–24314./ 羽地ほか,2019,地質雑,125, 867–875./ Haji and Yamaji, 2020, Isl. Arc, 29, e12366./ Haji and Yamaji, 2021, Isl. Arc, 30, e12412./ 池辺,1963,日本自然保護協会調査報告,7. / Sato, D. and Haji, 2021, Isl. Arc, 30. E12405./ Sato, K., 2006, Tectonophysics, 421, 319–330. / Yamaji and Yoshida, 1998, Jour. Min. Petr. Econ. Geol., 93, 389–408. / Yamaji et al., 2006, Jour. Struct. Geol., 28, 980–990.
発表者らはこの変動史の修正を目指し,小断層や岩脈といった小構造の方位解析から応力史の再検討を進めている.今回,山陰東部の中新統北但層群中の小断層を対象として古応力解析を行い,ポストリフト期の引張応力を得た.本講演ではその結果を示すとともに,その意義を議論する.
調査対象としたのは,兵庫県香美町北部の海岸沿いに露出する中新統北但層群である.調査地域の北但層群は凝灰質の陸成~海成の砕屑岩からなり,従来はシンリフト期の地層である八鹿層および豊岡層(1650~2150万年前頃の地層;羽地ほか,2019)と考えられてきた(例えば,池辺, 1963).しかし,本研究で我々は火山礫凝灰岩のジルコンU-Pb年代測定を行い,15.4 Ma頃の年代を得た.したがって,同地域の砕屑岩はポストリフト期の地層であると示唆される.
香住北東地域で119条,香住北西地域で71条,鎧地域で35条,餘部地域で22条の小断層データを得た.小断層解析にはHough変換を用いた解析法であるHIM(Yamaji et al., 2006; Sato, K., 2006)を使用した.小断層を測定した母岩の地層は傾斜が最大15度程度と緩傾斜であったため,傾動補正は行っていない.応力解析の結果,いずれの地域のデータからもNNE~NE方向に最小圧縮主応力軸を持つ,応力比が低めの正断層型応力を得た.
山陰東部地域では過去にFournier et al. (1995)によって中新統の小断層から古応力が検討されており,彼らはNW-SE引張のtranstensionalな応力が記録されていると結論した.本研究の得た応力はこれと引張方向が異なる.彼らは今回の我々の調査地域は対象としておらず,周辺の火山岩主体の地域で小断層データを採取している.この火山岩主体の地層は,本研究の砕屑岩の下位と想定されるため,得られた応力の差は引張方向の転換を示している可能性がある.山陰東部は既存の中新統層序に問題があることが知られており,この応力差の検討のためにも層序の解明は今後の課題である.
最近,Haji and Yamaji (2021)は北但層群の分布域南縁に分布する岩脈と小断層を用いて応力史を検討し,ポストリフト期に引張応力場が存在したことを指摘した.彼らの得た応力は,NE-SW方向に最小主応力軸を持ち,応力比が低い応力であった.本研究の調査地域は北但層群の陸域の分布域北縁に位置するが,得た応力はこれと調和的である.したがって,北但層群の分布する広い範囲においてポストリフト期にNE-SW方向の引張応力状態にあったと考えられる.
<引用文献>
Fournier et al., 1995, Jour. Geophys. Res., 100, 24295–24314./ 羽地ほか,2019,地質雑,125, 867–875./ Haji and Yamaji, 2020, Isl. Arc, 29, e12366./ Haji and Yamaji, 2021, Isl. Arc, 30, e12412./ 池辺,1963,日本自然保護協会調査報告,7. / Sato, D. and Haji, 2021, Isl. Arc, 30. E12405./ Sato, K., 2006, Tectonophysics, 421, 319–330. / Yamaji and Yoshida, 1998, Jour. Min. Petr. Econ. Geol., 93, 389–408. / Yamaji et al., 2006, Jour. Struct. Geol., 28, 980–990.