128th JGS: 2021

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R9 [Regular Session]Origin, texture and composition of sediments

[1poster43-50] R9 [Regular Session]Origin, texture and composition of sediments

Sat. Sep 4, 2021 4:30 PM - 7:00 PM poster (poster)

4:30 PM - 7:00 PM

[R9-P-2] Storm Surge Deposits from the East Japan Typhoon(2019) at Samejima Beach, Iwata City, Shizuoka Prefecture, Japan

*Akira Aoshima1, Hiroyuki Kurematsu1, Takeshi Tostuka1, Yuya Takahashi1, Kosuke Arimura1, Koki Suzuki1, Syun Ichikawa1, Rabu Kato1 (1. Shizuoka Prefectural Iwata Minami High School)

Keywords:Storm Surge Deposit, Typhoon, Enshunada Sea

1.はじめに
 2019年10月12日に令和元年東日本台風(以下,東日本台風)が静岡県東部を通過した.この台風により,各地で高潮が発生した(気象庁,2019).  筆者らは,遠州灘に面する磐田市鮫島海岸にて,海岸浸食の変化を明らかにすることを目的に,定期的に水準測量を行ってきたが,台風後の10月17日の調査では,海岸入口より西側150m地点で,高潮により海岸に沿う遊歩道が破壊され,その陸側には高潮による堆積物が見られた(戸塚ほか,2021).そこで,特に高潮による堆積物に着目して,その浸食,運搬,堆積作用について検討することにした.
2.方法
 始めに2019年に静岡県に接近した台風の通過前後24時間の平均風速,平均気圧,総雨量の比較を行った.気象観測記録は磐田南高校の自記風速計,自記気圧計,雨量計の記録を用いた.次に台風前後の微地形の比較を行った.通過前はGoogle Earthの衛星写真(同年1月14日撮影)を用いた.通過後は,ドローン(DJI製Phantom3 Advance)を用いて2019年11月2日に上空150mから空撮を行った.また,台風通過前後の地形断面の比較を行った.通過前は,磐田市都市計画図(2,500分の1,2017年11月測量)の標高と等高線を読み取り作成した.通過後は,現地でハンドレベルとオートレベルを併用して水準測量を実施した.断面図の作成側線は,鮫島海岸入口西150mの汀線に垂直な方向である.さらに高潮堆積物の鉱物組成と粒度組成を調べた.鉱物組成は,採取した砂200粒を双眼実体顕微鏡で鉱物の種類を同定した. 粒度組成は,ふるいを用いて調べた.砂の採集地点は,汀線に垂直な方向1側線と汀線に平行な3側線に沿って,10m間隔で採取した.最後に高潮堆積物の堆積構造を調べるために,トレンチ掘削を行った.掘削地点は鮫島海岸入口西側の防風林で,L字型に東西方向1.5m,南北方向1.5m,幅0.5m,深さ0.7mの溝を掘削した.
3.結果と考察
 東日本台風は,同年に上陸した他の台風と比較しても平均風速,平均気圧,総雨量の全てが上回り,大きな勢力のまま鮫島海岸に接近したことがわかった. 微地形の比較では,台風通過後の防風林と遊歩道の破壊が顕著であった.また,遊歩道の陸側には,高潮によって防風林がなぎ倒され,運搬された海浜砂が半円状に堆積していた.また,防風林の高さ1.5m付近の枝には,高潮によって運ばれたポチエチレンの紐が多数付着していたことから,高潮は防風林の内部まで,侵入したことがわかった. 地形断面の比較では,通過前には遊歩道を挟んだ陸側には防風林に覆われた緩やかに高まる斜面と,その陸側には土手状の高まりが存在していた.しかし,通過後には図のとおり緩やかな斜面上には,扇状に長さ50m,幅70m厚さ0.6mほどの高潮による堆積物が一面に渡って堆積していた(図1).この高潮堆積物の末端には,葦などの単子葉植物が一定の方向になぎ倒された領域があり,さらにその陸側には帯状に幅5~6mの海岸漂着物が散乱する領域が高潮堆積物を取り囲むように堆積していた. 高潮堆積物の鉱物組成では,汀線付近の砂と汀線から陸側100m地点の砂の鉱物組成を比較すると,どちらとも石英28%,長石18~31%,岩片36~40%,有色鉱物5~14%で似た傾向となった.このことから,汀線付近の砂が高潮により内陸の140m地点まで運搬・堆積したもとのと考えられる. 粒度組成では,汀線に垂直な側線の平均粒径を比較すると,汀線から遠ざかるほど,0.8mmから0.4mmへと細粒になる傾向が見られた.一方,汀線に平行な3側線では,平均粒径に大きな差はみられなかった.このことから高潮は汀線に対してほぼ垂直に侵入し,海浜砂が運搬され堆積したものと考えられる. トレンチ掘削調査では,最下部は防風林の根が張った褐色の腐食土層で,台風前の地形面であった.その上位に厚さ40cnの新鮮な高潮堆積物の砂層が4層観察された(図2).1層目は腐食土層の根を大きく巻き上げていた.また,上位の3層ではそれぞれに上方細粒化の傾向と,ラミナやクロスラミナがみられた.
4.まとめ
 令和元年東日本台風は大きな勢力のまま鮫島海岸に接近し,その高潮によって海側から砂が浸食作用を受けた.浸食された砂は内陸側に運搬されて,粒径の大きいものから堆積した.その際,上方細粒化やクロスラミナなどの堆積構造を形成した.
文献 気象庁ホームページ,https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/d ata/bosai/report/2019/20191012/20191012.html 戸塚ほか,2021,令和元年東日本台風の高潮による鮫島海岸の微地形の変化,日本地球惑星科学連合2021年大会,O07-P14.