128th JGS: 2021

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R9 [Regular Session]Origin, texture and composition of sediments

[1poster43-50] R9 [Regular Session]Origin, texture and composition of sediments

Sat. Sep 4, 2021 4:30 PM - 7:00 PM poster (poster)

4:30 PM - 7:00 PM

[R9-P-5] (entry) Where is the sedimentary environment of the Nakaminato Group, if modern time? Reexamination on the basis of ocean drilling sciences and sequence stratigraphy

*Jumpei SAIGAN1 (1. Yamaguchi university)

Keywords:Late cretaceous, Sequence stratigraphy, Nakaminato Group, High seaーlevel, Ocean drilling, Submarine fan, continental shelf

はじめに
 白亜系那珂湊層群は、1970年代からその堆積環境が研究されてきた。その後、シークエンス層序学によって堆積学に革命が起きる1990年代から現在まで、那珂湊層群の堆積環境についての新しい考察はなかった。そこで、本論では、いままでの那珂湊層群の堆積環境の研究結果を基に、近年発達してきたシークエンス層序学の知識を用いて、那珂湊層群の堆積環境について再検討することを目的とする。さらに、近年データが蓄積されてきた地球科学掘削による研究成果と比較し、那珂湊層群の堆積環境について、深く掘り下げることも同時に目的とする。
研究背景
 那珂湊層群は、茨城県ひたちなか市の那珂川河口北方に位置する平磯海岸に分布し、下部より築港(ちっこう)層、平磯(ひらいそ)層、磯合(いそあい)層からなる海成層である。ただし港湾工事により築港層は現在確認できない。
 田中(1970)によると、那珂湊層群は、全体的にタービダイトの砂岩泥岩互層からなり、スランプ構造が頻繁にみられる。堆積環境について、田中(1970)では、平磯層を大陸棚沖合、磯合層をトラフ縁辺部とし、Masuda and Katsura(1978)では平磯層を海底扇状地下部、磯合層を扇状地上部と推定している。
 その年代については、産出化石に基づいて推定されており、Masukawa and Ando(2018)では産出したアンモナイト、イノセラムスに基づいて、平磯層を後期白亜紀のカンパニアン上部、磯合層をマーストリヒシアン下部と推定している。
 那珂湊層群が堆積した白亜紀後期のカンパニアン~マーストリヒシアンは現在より約200mあまり海水準が高かったといわれている。しかしながら、Okada(1997)では通常、高海水準であれば、堆積量は減少するはずであるのに、日本列島のもととなる地域周辺の海洋では堆積量が増加しているとした。これは当時の日本列島のもととなる地域では高海水準を上回るような隆起が起こっていたのではないかと推定している。
地質調査結果
 那珂湊層群の主な構成岩は細礫~中礫の礫岩、砂岩、シルト岩、含礫シルト岩であり、多くが級化構造を呈する。平均の走向はNW-SE、傾斜は25°~40°NEで、全体的に同斜構造を示す。ただし、傾斜が45°~70°SW方向の地層が磯合層の中部にみられ、これは海底地すべりの可能性がある。 平磯層は、下部ではシルト岩が卓越しているが、上部に行くにしたがって、シルト岩を薄く挟む砂岩層もしくは礫岩層が卓越する。さらに上位の磯合層は、下部では級化構造を伴う砂岩層が卓越し、中礫の礫岩層を挟む数メートルの砂岩層が存在している。中部から上部に行くに従い、砂岩層が支配的であるが、シルト岩層もところどころにみられ、亜角礫~亜円礫の小礫から中礫を含むことが多い。このように、全体的に上方粗粒化の傾向があると言える。
 また、これらの地層には化石が多く産出し、それらは過去の研究例にも報告されている。今回の調査では、二枚貝、生痕化石、植物片が発見され、二枚貝、生痕化石は磯合層上部にて卓越しており、植物片は平磯層、磯合層問わず広くみられた。
 まとめると、平磯層から磯合層にかけてそれぞれの層によって多少変化はあるものの、概ね上方粗粒化の傾向にあるといえる。また、全体的に同斜構造を示すなか、一部地層で傾斜方向が大きく異なることから、海底地すべりの発生が示唆される。堆積域については植物片が各層より頻繁に見られることから那珂湊層群は一貫してあまり陸から離れていない地域で堆積したと推察される。
研究展望
 先行研究により、那珂湊層群の堆積環境は大陸棚沖合部からトラフ縁辺部、海底扇状地であると推測されている。また、先行研究によると、那珂湊層群が堆積していた後期白亜紀は、高い海水準、高い隆起量、高い堆積量であったとされる。これらのすべての条件に比較的近いと考えられる海域は、インド亜大陸衝突によるヒマラヤ山脈の隆起・浸食により形成されたベンガルファンやアンデス山脈に沿った南米大陸西岸の大陸棚や陸棚斜面、海底扇状地などが類似する堆積環境の候補として挙げられる。本論では、これら類似環境の蓄積されてきた海洋掘削結果と地質調査結果をシークエンス層序学的に堆積相の比較を行いながら、那珂湊層群の堆積環境の考察・検討を行っていきたい。
《引用文献》
Katsura, Y. and Masuda, F., 1978,Ann. Rep. Inst. Geosci. Univ. Tsukuba, 4, 26-29.
Masukawa, G. and Ando, H., 2018. Cretaceous Res, 91, 362-381.
Okada, H., 1997, Mem. Geol. Soc. Japan, 48, 1-6.
田中啓策, 1970, 地質調査所月報, 21, 579-593.