4:30 PM - 7:00 PM
[R12-P-4] (entry) Effects of host rock on strength and thickness of fault zones
はじめに
天然の断層には様々なスケールにおいて幅があることが知られている(例えばChoi et al., 2016)。また、断層の累積変位量と断層帯の幅には6桁にもわたって正の相関があることが様々な断層のコンパイルから明らかにされている(Childs et al., 2009)。一方で、同じ変位量であっても断層帯の幅には3桁程度の差があることも知られており、断層帯の幅を決定づける要因として変位量以外のものが存在すると考えられる。幅の広がりにくい断層帯については、断層ガウジ中の弱い鉱物が連続した組織を形成し、スリップゾーンが局所化することによって形成されることが摩擦実験から明らかになっている(Oohashi et al., 2013)。しかし、幅の広がりやすい断層帯がどのような要因によって形成されるのかは明らかになっていない。そこで本研究では、幅の広い断層帯の形成要因を明らかにすることを目的とし、摩擦実験において模擬断層ガウジを挟むシリンダーの岩種が断層帯の幅に与える影響を調べた。
研究手法
本研究では、先行研究(Oohashi et al., 2013)に準じて石英とグラファイトの混合物を模擬断層ガウジとし、垂直応力2 MPa、等価変位速度(嶋本・堤, 1994)250 μm/sで回転式摩擦実験を行なった。その後、実験によって形成された模擬断層ガウジ中の組織を光学顕微鏡とSEMで観察し、変形の程度により非変形帯、弱変形帯、変形帯、変形集中帯の4つに区分した。
結果・議論
その結果、シリンダーに斑れい岩を使用した実験では摩擦強度がすべり始めの半分まで弱化する(定常摩擦係数0.25~0.42)が、砂岩を使用した実験では高い定常状態(摩擦係数0.62~0.8)のまますべり続けた。また、組織観察では砂岩シリンダーの実験は斑れい岩シリンダーの実験に比べ、変形帯の幅が約4倍に広がることがわかった。さらに、砂岩を用いた実験で幅が広がった原因を明らかにするため、検証実験を行なった。検証実験では、摩擦実験後にシリンダーの表面が削られていることから、砂岩と斑れいの性質の違いのうち、表面の削れやすさに着目し、砂岩シリンダーの表面の粗さを変えた。その結果、幅が広がった要因として、累積変位量の他にシリンダー表面の粗さが関係していることがわかり、同変位量(あるいは同摩擦仕事量)の実験において、表面の粗さが粗くなるほど変形帯や変形集中帯の幅が広がることが明らかになった。 このことから、天然の断層帯の中でも変形の集中した部分の厚さに関しては、母岩との境界面の粗さ(表面形状)が影響を与えていると考えられる。
引用文献
Childs, C., Manzocchi, T., Walsh, J., Bonson, C., Nicol, A. and Schopfer, M. (2009) Journal of Structural Geology 31, 117-127.
Choi, J., Edwards, P., Ko, K. and Kim, Y. (2016) Earth-Science Reviews., 152, 70-87.
Oohashi, K., Hirose, T. and Shimamoto, T. (2013) Journal of Geophysical Research Solid Earth 118(5), 2067-2084.
嶋本利彦・堤昭人 (1994) 構造地質研究会誌, 39, 65–78.
天然の断層には様々なスケールにおいて幅があることが知られている(例えばChoi et al., 2016)。また、断層の累積変位量と断層帯の幅には6桁にもわたって正の相関があることが様々な断層のコンパイルから明らかにされている(Childs et al., 2009)。一方で、同じ変位量であっても断層帯の幅には3桁程度の差があることも知られており、断層帯の幅を決定づける要因として変位量以外のものが存在すると考えられる。幅の広がりにくい断層帯については、断層ガウジ中の弱い鉱物が連続した組織を形成し、スリップゾーンが局所化することによって形成されることが摩擦実験から明らかになっている(Oohashi et al., 2013)。しかし、幅の広がりやすい断層帯がどのような要因によって形成されるのかは明らかになっていない。そこで本研究では、幅の広い断層帯の形成要因を明らかにすることを目的とし、摩擦実験において模擬断層ガウジを挟むシリンダーの岩種が断層帯の幅に与える影響を調べた。
研究手法
本研究では、先行研究(Oohashi et al., 2013)に準じて石英とグラファイトの混合物を模擬断層ガウジとし、垂直応力2 MPa、等価変位速度(嶋本・堤, 1994)250 μm/sで回転式摩擦実験を行なった。その後、実験によって形成された模擬断層ガウジ中の組織を光学顕微鏡とSEMで観察し、変形の程度により非変形帯、弱変形帯、変形帯、変形集中帯の4つに区分した。
結果・議論
その結果、シリンダーに斑れい岩を使用した実験では摩擦強度がすべり始めの半分まで弱化する(定常摩擦係数0.25~0.42)が、砂岩を使用した実験では高い定常状態(摩擦係数0.62~0.8)のまますべり続けた。また、組織観察では砂岩シリンダーの実験は斑れい岩シリンダーの実験に比べ、変形帯の幅が約4倍に広がることがわかった。さらに、砂岩を用いた実験で幅が広がった原因を明らかにするため、検証実験を行なった。検証実験では、摩擦実験後にシリンダーの表面が削られていることから、砂岩と斑れいの性質の違いのうち、表面の削れやすさに着目し、砂岩シリンダーの表面の粗さを変えた。その結果、幅が広がった要因として、累積変位量の他にシリンダー表面の粗さが関係していることがわかり、同変位量(あるいは同摩擦仕事量)の実験において、表面の粗さが粗くなるほど変形帯や変形集中帯の幅が広がることが明らかになった。 このことから、天然の断層帯の中でも変形の集中した部分の厚さに関しては、母岩との境界面の粗さ(表面形状)が影響を与えていると考えられる。
引用文献
Childs, C., Manzocchi, T., Walsh, J., Bonson, C., Nicol, A. and Schopfer, M. (2009) Journal of Structural Geology 31, 117-127.
Choi, J., Edwards, P., Ko, K. and Kim, Y. (2016) Earth-Science Reviews., 152, 70-87.
Oohashi, K., Hirose, T. and Shimamoto, T. (2013) Journal of Geophysical Research Solid Earth 118(5), 2067-2084.
嶋本利彦・堤昭人 (1994) 構造地質研究会誌, 39, 65–78.