8:30 AM - 8:45 AM
[R13-O-3] The thermal structure and thermal properties around the Ashizuri granite.
Keywords:Granite, Thermal conductivity
花崗岩は、生成に水の関与が不可欠であることから、太陽系の中で唯一それが豊富に確認存在している地球に特有な要素の一つとされ、その過程が注目されている。足摺岬花崗岩体は、中期中新世に西南日本外帯で上昇した多くの花崗岩体の1つである。その化学組成や生成年代は明らかにされている一方、その貫入様式は詳細が明らかになっていない。本研究では、花崗岩の定置メカニズムを知るために、古第三系四万十帯とその上に堆積した中新統三崎層群(前弧海盆)において、応力解析と被熱解析を行った。
応力解析
足摺岬花崗岩体の北方から西方に分布する四万十帯と三崎層群下部にはスレート劈開が発達している。その走向は花崗岩体の北方に位置する窪津漁港でほぼ東―西(N89.9±2.2°E)を示し、西に向かって北東―南西に変化し、西方に位置する片粕大橋では南―北に近づく(N25.9±2.0°E)。この分布が各地点における花崗岩分布近似円に沿っていることから、これらの構造は花崗岩上昇時に形成された可能性がある。調査地域は、沈み込み帯に位置していることから、付加に伴うスレート劈開である可能性があり、より広い範囲における同様の解析から、これらを明確に区別する必要がある。
被熱解析
被熱解析では、最高被熱温度、熱伝導度、それに空隙率の測定を行った。被熱時間を100万年と仮定して、ビトリナイト反射率から見積もった最高被熱温度は、花崗岩近傍の下部〜中部三崎層群で一様に300℃程度の高い温度を示す一方、上部(竜串層)において特徴的に低い値を示した。両者の境界付近では、竜串層に向かって連続的に温度が急減する。
さらに同地域における地質体の熱伝導度を、Hot-Disk法(Gustafsson, 1991; Iso, 2008)を用いて測定した。このとき測定面は、均質で異方性がないことを仮定した。下部〜中部三崎層群の砂岩は一様に高い熱伝導度(3.2〜3.5 Wm-1K-1)を示す一方、上部の竜串層(軟質砂岩)では特徴的に低い値(2.77±0.33 Wm-1K-1)を示した。これは前述の最高被熱温度と整合的である。さらに、熱伝導度と空隙率の間には負の相関(R2=0.76)が認められ、熱伝導度は空隙率に規制されていることが示された。これらの結果は、調査地域における熱の伝わり方が一様ではなく、竜串層の特徴的に低い熱伝導度によって花崗岩からの被熱を効率的に伝導できなかったことを示す。
以上のことから、本地域における花崗岩からの被熱モデルを以下の2つに区分することができる。1)高い熱伝導度を持ち、一様に300℃程度まで温度が上昇する花崗岩近傍の被熱モデルと、2)低い熱伝導度を持ち、最高被熱温度が特徴的に低い竜串層における被熱モデルである。この境界を花崗岩からの被熱フロントであるとみなし、それぞれに異なる被熱モデルを適応することによって、今後足摺岬花崗岩体の上昇メカニズムを明らかにすることができると期待される。
Gustafsson, S. E., 1991 Transient plane source techniques for thermal conductivity and thermal diffusivity measurements of solid materials., Review of Scientific Instruments, 62, 797–804. doi: 10.1063/1.1142087
ISO, 2008 Plastics–determination of thermal conductivity and thermal diffusivity–part 2: transient plane heat source (hot disc) method, International Standard ISO 22007-2. International Organization for Standardization, Geneva, Switzerland.
応力解析
足摺岬花崗岩体の北方から西方に分布する四万十帯と三崎層群下部にはスレート劈開が発達している。その走向は花崗岩体の北方に位置する窪津漁港でほぼ東―西(N89.9±2.2°E)を示し、西に向かって北東―南西に変化し、西方に位置する片粕大橋では南―北に近づく(N25.9±2.0°E)。この分布が各地点における花崗岩分布近似円に沿っていることから、これらの構造は花崗岩上昇時に形成された可能性がある。調査地域は、沈み込み帯に位置していることから、付加に伴うスレート劈開である可能性があり、より広い範囲における同様の解析から、これらを明確に区別する必要がある。
被熱解析
被熱解析では、最高被熱温度、熱伝導度、それに空隙率の測定を行った。被熱時間を100万年と仮定して、ビトリナイト反射率から見積もった最高被熱温度は、花崗岩近傍の下部〜中部三崎層群で一様に300℃程度の高い温度を示す一方、上部(竜串層)において特徴的に低い値を示した。両者の境界付近では、竜串層に向かって連続的に温度が急減する。
さらに同地域における地質体の熱伝導度を、Hot-Disk法(Gustafsson, 1991; Iso, 2008)を用いて測定した。このとき測定面は、均質で異方性がないことを仮定した。下部〜中部三崎層群の砂岩は一様に高い熱伝導度(3.2〜3.5 Wm-1K-1)を示す一方、上部の竜串層(軟質砂岩)では特徴的に低い値(2.77±0.33 Wm-1K-1)を示した。これは前述の最高被熱温度と整合的である。さらに、熱伝導度と空隙率の間には負の相関(R2=0.76)が認められ、熱伝導度は空隙率に規制されていることが示された。これらの結果は、調査地域における熱の伝わり方が一様ではなく、竜串層の特徴的に低い熱伝導度によって花崗岩からの被熱を効率的に伝導できなかったことを示す。
以上のことから、本地域における花崗岩からの被熱モデルを以下の2つに区分することができる。1)高い熱伝導度を持ち、一様に300℃程度まで温度が上昇する花崗岩近傍の被熱モデルと、2)低い熱伝導度を持ち、最高被熱温度が特徴的に低い竜串層における被熱モデルである。この境界を花崗岩からの被熱フロントであるとみなし、それぞれに異なる被熱モデルを適応することによって、今後足摺岬花崗岩体の上昇メカニズムを明らかにすることができると期待される。
Gustafsson, S. E., 1991 Transient plane source techniques for thermal conductivity and thermal diffusivity measurements of solid materials., Review of Scientific Instruments, 62, 797–804. doi: 10.1063/1.1142087
ISO, 2008 Plastics–determination of thermal conductivity and thermal diffusivity–part 2: transient plane heat source (hot disc) method, International Standard ISO 22007-2. International Organization for Standardization, Geneva, Switzerland.