128th JGS: 2021

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Oral

R13 [Regular Session]Subduction zones and on-land accretionary complexes

[3ch101-11] R13 [Regular Session]Subduction zones and on-land accretionary complexes

Mon. Sep 6, 2021 8:00 AM - 11:45 AM ch1 (ch1)

Chiar:Yositaka Hashimoto, Yasuyuki Nakamura, Arito Sakaguchi

10:15 AM - 10:45 AM

[R13-O-8] [Invited]Overview of IODP drilling active backarc basin, Okinawa Trough: ongoing rifting of Eurasian continental margin

*Makoto Otsubo1, Co-proponents of scientific drilling Okinawa Trough (1. Geological Survey of Japan)

Keywords:Ryukyu arc, Backarc basin, Normal fault, Fluid, Scientific drilling

世話人からのハイライト紹介:背弧海盆の拡大履歴とメカニズムを理解することは地球規模のテクトニクスにおいて大きな課題の一つである。沖縄トラフは数少ない活動的な大陸縁辺背弧海盆であり、拡大軸の構造、流体移動、物性を海洋掘削によって直接的に理解しようとするのみならず、将来的に琉球孤陸域のテクトニクスとの関係の理解も視野に入れたプロジェクトを紹介する。参考:ハイライトについて
本発表では,IODP沖縄トラフ南部掘削計画の概要について紹介する.活動的な背弧海盆は,大陸の縁を分割して複雑な沈み込み形状を生成しながら,独特の鉱物生成と多様な生物群集を宿す多数の熱水系を持つ特徴をもつ.背弧海盆の開始と進化を支配するメカニズムは地球規模のテクトニクスにおいて長年の問題であった.例えば,リフト活動に注目すると,アフリカ大地溝帯のような大陸リフトでは107年程度のオーダーで発達する(例えば,Naliboff, J.B. et al., 2017)のに対して,背弧海盆では105-6年オーダーで発達している(例えば,Sibuet et al., 1995).なぜ背弧海盆の拡大は大陸リフトより速いのだろうか?その速い原因は何であろうか?そこで,我々は琉球弧の背弧海盆である沖縄トラフを対象にIODP掘削計画「Drilling the Okinawa Trough, a backarc basin with ongoing rifting of a continental margin: Riserless drilling to sample fresh faults, volcanics and fluids」のpre-proposalを2020年4月に提出した.
琉球弧では琉球海溝にてフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでおり,その背弧には琉球弧と平行に長さ約1500 kmの背弧海盆(沖縄トラフ)が存在する.沖縄トラフは6~4 Ma頃に現在の大枠が形成され,1.5 Ma頃に拡大を再開して現在も引き続き拡大している(Sibuet et al., 1998).沖縄トラフの中では南部において拡大プロセスがより進行し,0.1 Ma頃から現在の拡大運動となっている(Sibuet et al., 1995).沖縄トラフは,気象条件が厳しい南極半島近傍のBransfield Straitとともに現時点においてまだ海洋性玄武岩が海洋底に露出していない地球上で数少ない活動的な大陸縁辺の背弧海盆として,背弧海盆の拡大プロセスの理解のために科学掘削を行う有望なターゲットである.沖縄トラフはリフト活動によって上中部地殻の厚さが10 kmほどに薄くなりつつある(Arai et al., 2017; Nishizawa et al., 2019).
我々は,沖縄トラフでの科学掘削に向けて背弧拡大部の原動力に関する新しい仮説を提案する.「背弧拡大は断層沿いの流体移動と熱によって引き起こされる地殻の弱体化とリフトゾーンでの歪み集中によって加速する.」と考え,沖縄トラフ南部に3地点の浅い掘削(海底下200〜700 m)によってそれらの仮説を検証する.これらの掘削は,堆積物,火山岩,および間隙流体・ガスを採取し,さらに掘削方向への各種物理検層を行う.我々の沖縄トラフ南部での掘削計画の目的は次の2つである:[目的1]トラフ軸周辺の断層の物理的,水文地質学的および化学的特性,岩相,形状,微細構造,および熱状態を把握および分析することによって,地殻浅部内の流体循環プロセスを調べる.[目的2]トラフ軸(八重山地溝)の下の,先行研究の地震波調査でよって把握された潜在的な玄武岩質マグマの上部を含む,海洋底に露出する前の火山岩とその岩相を直接把握する.これらの我々の掘削提案は,沖縄トラフのリフトゾーン内での正断層型地震の地震発生域および琉球弧陸域の両方でコアリングとモニタリングを行うことを目指すための最初の第一歩となる.

[引用文献]Arai, R. et al. (2017) J. Geophys. Res., 122, 622–641; Naliboff, J.B. et al. (2017) Nat. Commun. 8, 1179; Nishizawa, A. et al. (2019) Earth, Planets and Space, 71:21; Sibuet, J..C. et al. (1995) In: Backarc basins: tectonics and magmatism, Taylor B (ed), Plenum Press, New York, pp 343–378; Sibuet, J.C. et al. (1998) J Geophys Res., 103, 30245–30267.