128th JGS: 2021

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Oral

R14 [Regular Session]Tectonics

[3ch112-19] R14 [Regular Session]Tectonics

Mon. Sep 6, 2021 1:00 PM - 3:45 PM ch1 (ch1)

Chiar:Asuka Yamaguchi, Ayumu miyakawa, Rina Fukuchi

2:00 PM - 2:30 PM

[R14-O-4] [Invited]Geological study for the Cretaceous subduction mega-complexes on the central Kii Peninsula, SW Japan: For unraveling the tectonics at plate convergent margins

*Yusuke Shimura1, Tetsuya Tokiwa2, Makoto Takeuchi3 (1. Geological Survey of Japan, AIST, 2. Shinshu University, 3. Nagoya University)

Keywords:tectonics, plate convergent margins, Sanbagawa, Shimanto, SW Japan

世話人からのハイライト紹介:紀伊半島中央部において,三波川変成岩類と四万十付加体の境界部の詳細な地質構造を検討した発表である.岩相・地質構造・変形構造,変成温度,砕屑性ジルコンU–Pb年代から,前期白亜紀末期~暁新世初期に沈み込んだ物質が,深部のものほどより構造的上位に上昇するテクトニクスが暁新世初期以降に生じたことを示した.これは近年提案されている60-50 Maのイザナギ-太平洋海嶺の沈み込みに関連する可能性のある重要な成果である.参考:ハイライトについて
【はじめに】西南日本外帯には,一般的に北から南へ,三波川(高圧型)変成岩類,秩父付加体,および四万十付加体が帯状に分布している.近年,砕屑性ジルコンU–Pb年代を用いた研究により,三波川変成岩類の陸源砕屑岩がジュラ紀の秩父付加体を越えて,その南方に分布する白亜紀の四万十付加体の陸源砕屑岩と同じ堆積年代を示すことが明らかになった(例えば, Aoki et al., 地質雑, 2007; Hara et al., Isl. Arc, 2017; Nagata et al., Isl. Arc, 2019; Tokiwa et al., J. Asian Earth Sci., 2021).すなわち,白亜紀当時の日本列島が位置していたプレート収束域においては,深部で三波川変成岩類が,浅部で四万十付加体が形成されていたことが想定できる.プレート収束型テクトニクスを理解する上で,同時期の高圧型変成岩類(三波川)と付加体(四万十)がどのように形成し,上昇の後,陸上に露出したのかを明らかにすることは重要である.これまで演者らは,三波川変成岩類と四万十付加体の境界が陸上で観察できる紀伊半島中央部において,野外での岩相・地質構造・変形構造の把握,炭質物ラマン分光分析に基づく変成温度の見積もり,および砕屑性ジルコンU–Pb年代測定に基づく陸源砕屑岩の堆積年代の制約を行ってきた.本講演では上記の研究結果を紹介すると共に,三波川変成岩類と四万十付加体を含めた白亜紀沈み込みメガコンプレックスの形成・上昇テクトニクスについて議論する.
【地質区分の再検討】紀伊半島中央部に分布する白亜紀メガコンプレックスに関しては,1970年代より精力的に研究が行われてきた(例えば, 大和大峯研究グループ, 地球科学, 1976; 栗本, 地質雑, 1982; 佐々木・磯﨑, 地質雑, 1992; 竹内, 地調月報, 1996).しかし,先行研究の間で地質区分の踏襲や対比が行われず混乱を招いていた.演者らは,岩相と構造的位置に基づき,構造的上位から下位へ,香束・色生・麦谷・高原川・赤滝・槙尾コンプレックスの6つに区分することを提案する.
【変形構造・変成温度・堆積年代】上記のコンプレックスは,変形構造の特徴に基づき,三波川タイプ(香束・色生)・麦谷タイプ(麦谷)・四万十タイプ(高原川・赤滝・槙尾)の3タイプに大分できる.三波川タイプでは片理面・伸長線構造・褶曲といった三波川変成岩類の上昇に関連した変形構造(例えば, Wallis, 地質雑, 1990)が,麦谷タイプでは四万十付加体の付加過程に関連したblock-in-matrix構造(例えば, Needham, Geol. Mag., 1987)とそれをオーバープリントする三波川変成岩類の上昇に関連した変形構造が,四万十タイプではチャート-砕屑岩シーケンスの繰り返しや四万十付加体の付加過程に関連した変形構造が認められる(Shimura et al., Isl. Arc, 2020; Shimura et al., J. Asian Earth Sci., 2021; 本研究).これら変形構造の違いに応じて,三波川タイプでは280~440 °Cおよび麦谷タイプでは280~290 °C(Shimura et al., J. Asian Earth Sci., 2021),四万十タイプでは280 °C以下(Awan and Kimura., Isl. Arc, 1996のイライト結晶度より)の変成温度が得られる.また,三波川タイプの陸源砕屑岩は後期白亜紀末期~暁新世初期,麦谷タイプの陸源砕屑岩は前期白亜紀末期~後期白亜紀末期,四万十タイプの陸源砕屑岩は前期白亜紀末期~暁新世初期の最若ジルコン年代を示す(例えば, 大藤ほか, 地学雑誌, 2010; 志村ほか, 地質雑, 2017, 2020; 太田ほか, 地質雑, 2019; Shimura et al., Isl. Arc, 2019, 2020; 本研究).麦谷タイプと四万十タイプでは下位ほど若くなる年代極性が認められる.
【議論】以上の研究結果より,日本列島が位置していたプレート収束域では,前期白亜紀末期~暁新世初期に沈み込んだ物質が深部ほどより構造的上位に上昇したと考えられる.また,本テクトニクスが生じた時期は少なくとも暁新世初期以降であるといえる.四国西部の三波川変成岩類(三波川タイプ)には,始新世前期のひわだ峠層(成田ほか, 地質雑, 1999)が被覆している.白亜紀メガコンプレックスの上昇イベントが西南日本外帯の広域にわたって同時期に起きたとすると,本テクトニクスは近年提案されている60~50 Maのイザナギ-太平洋海嶺の沈み込み(例えば, Seton et al., Geophys. Res. Lett., 2015)と関連している可能性がある.