3:15 PM - 3:30 PM
[R24-O-8] High-resolution dating of ferromanganese nodules around Minamitorishima Island based on osmium isotopic ratio
Keywords:ferromanganese nodule, Os isotopic dating, depositional age, MCMC Bayesian inference, Minamitorishima EEZ
マンガンノジュールは,マンガンと鉄の酸化物および酸化水酸化物を主成分とする,主に深海底で形成される化学堆積岩である.マンガンノジュール中には,マンガン・鉄の他に,コバルト,ニッケル,銅,希土類元素等の希少金属元素が高濃度で含まれており [1],海底鉱物資源として開発が期待されている.
2010年,南鳥島から約300km東方に位置する,日本の排他的経済水域内の海底に存在する小海山付近にマンガンノジュールの密集地帯が発見された [2].Machida et al. [3] は採取されたノジュールサンプルに対し化学組成分析を行い,南鳥島EEZ内のマンガンノジュールがCoやNiの新規国産資源として有望であることを指摘している.さらにこの発見を受けて,2016年にYK16-01航海,2017年にYK17-11C航海が実施され,マンガンノジュールが南鳥島EEZの東方から南方にかけての広大な範囲に分布していることが明らかにされるとともに,それぞれ8回ずつ合計16回の潜航調査により多くのノジュールサンプルが採取された [4,5].
これらのマンガンノジュールの資源としての採掘を行うためには,開発の採算性が保証される必要があり,資源価値の高いノジュールが高密度で分布する海域の特定が求められる.そこで重要となるのが,ノジュールの広域分布を支配する要因の解明である.これまで,南鳥島EEZのマンガンノジュールについては,その成因を解明するための鉱物学的・地球化学的な研究が行われてきている [3,6,7].一方,ノジュールの形成開始および成長を支配する要因を考察する上では,マンガンノジュールの年代を決定することが極めて重大な意義を持つと考えられる.しかしながら,南鳥島マンガンノジュールの形成年代を決定する試みは,これまでごく限られた事例しか存在しない [8].そこで本研究では,Os同位体比を用いて南鳥島マンガンノジュールの年代を高時間解像度で決定することを目的とした.
年代決定に用いる試料は,半割したノジュール試料の表層部分から核のある中心部に向かって約2 mm間隔で,タングステンカーバイドドリルを用いて削り出し,カリアスチューブ逆王水分解法によってOsを抽出した後,MC-ICP-MSを用いてOs同位体比分析を行った.そして,分析によって得られたOs同位体比を海水のOs同位体比変動曲線にフィッティングすることで,年代値を制約した.フィッティングに際しては,マルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) によるベイズ推定を用いて,可能性の高い年代値を絞り込んだ [9].またその際に,マンガンノジュールのXRF元素マッピングデータをもとに成長間隙が見られる部分を特定し,その部分に無堆積期間 (ハイエイタス) が存在する可能性も考慮した.
本発表では,年代測定の結果について報告し,南鳥島マンガンノジュールの成長履歴と成因について議論を行う.
<引用文献>
[1] Hein et al. (2013) Ore Geology Reviews 51, 1-14.
[2] 石井・平野 (2010) 深田地質研究所ニュース 109, 26-28.
[3] Machida. et al. (2016) Geochemical Journal 50, 539-555.
[4] 石井ほか (2016) 深田地質研究所年報 17, 1-28.
[5] Machida et al. (2021) Marine Georesources & Geothechnology, 39, 267–279.
[6] Shimomura et al. (2018) Goldschmidt 2018
[7] Machida et al. (2021) Island Arc 30, e12395. https://doi.org/10.1111/iar.12395.
[8] 野崎ほか (2014) 日本地質学会第121年学術大会
[9] Josso et al. (2019) Chemical Geology 513, 108-119.
2010年,南鳥島から約300km東方に位置する,日本の排他的経済水域内の海底に存在する小海山付近にマンガンノジュールの密集地帯が発見された [2].Machida et al. [3] は採取されたノジュールサンプルに対し化学組成分析を行い,南鳥島EEZ内のマンガンノジュールがCoやNiの新規国産資源として有望であることを指摘している.さらにこの発見を受けて,2016年にYK16-01航海,2017年にYK17-11C航海が実施され,マンガンノジュールが南鳥島EEZの東方から南方にかけての広大な範囲に分布していることが明らかにされるとともに,それぞれ8回ずつ合計16回の潜航調査により多くのノジュールサンプルが採取された [4,5].
これらのマンガンノジュールの資源としての採掘を行うためには,開発の採算性が保証される必要があり,資源価値の高いノジュールが高密度で分布する海域の特定が求められる.そこで重要となるのが,ノジュールの広域分布を支配する要因の解明である.これまで,南鳥島EEZのマンガンノジュールについては,その成因を解明するための鉱物学的・地球化学的な研究が行われてきている [3,6,7].一方,ノジュールの形成開始および成長を支配する要因を考察する上では,マンガンノジュールの年代を決定することが極めて重大な意義を持つと考えられる.しかしながら,南鳥島マンガンノジュールの形成年代を決定する試みは,これまでごく限られた事例しか存在しない [8].そこで本研究では,Os同位体比を用いて南鳥島マンガンノジュールの年代を高時間解像度で決定することを目的とした.
年代決定に用いる試料は,半割したノジュール試料の表層部分から核のある中心部に向かって約2 mm間隔で,タングステンカーバイドドリルを用いて削り出し,カリアスチューブ逆王水分解法によってOsを抽出した後,MC-ICP-MSを用いてOs同位体比分析を行った.そして,分析によって得られたOs同位体比を海水のOs同位体比変動曲線にフィッティングすることで,年代値を制約した.フィッティングに際しては,マルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) によるベイズ推定を用いて,可能性の高い年代値を絞り込んだ [9].またその際に,マンガンノジュールのXRF元素マッピングデータをもとに成長間隙が見られる部分を特定し,その部分に無堆積期間 (ハイエイタス) が存在する可能性も考慮した.
本発表では,年代測定の結果について報告し,南鳥島マンガンノジュールの成長履歴と成因について議論を行う.
<引用文献>
[1] Hein et al. (2013) Ore Geology Reviews 51, 1-14.
[2] 石井・平野 (2010) 深田地質研究所ニュース 109, 26-28.
[3] Machida. et al. (2016) Geochemical Journal 50, 539-555.
[4] 石井ほか (2016) 深田地質研究所年報 17, 1-28.
[5] Machida et al. (2021) Marine Georesources & Geothechnology, 39, 267–279.
[6] Shimomura et al. (2018) Goldschmidt 2018
[7] Machida et al. (2021) Island Arc 30, e12395. https://doi.org/10.1111/iar.12395.
[8] 野崎ほか (2014) 日本地質学会第121年学術大会
[9] Josso et al. (2019) Chemical Geology 513, 108-119.