11:15 AM - 11:30 AM
[R1-O-11] Crust formation beneath the Japanese Islands viewed from Sr isotopes of the granitic and mafic roks
Keywords:crust formation, Sr isotope ratio, granitic rock, mafic rock, Japanese Islands
日本列島の花崗岩類はそのほとんどが中生代と新生代、中でも白亜紀から古第三紀と新第三紀中新世に形成されている。これらの起源を探るためSrやNdの同位体比が多くの岩体について測定されてきた。その大部分は花崗岩質岩についてであるが、量的には圧倒的に少ない苦鉄質岩類についても注目されるようになってきた。苦鉄質岩類の利点は、上部地殻物質との混合が花崗岩質岩より少ないので玄武岩質初生マグマとの関連が見やすいこと、Sr同位体比初生値を求める際に年代による補正幅が非常に小さくなるので年代値が不正確な岩体でもある程度扱えることである。今回は苦鉄質岩類と花崗岩質岩のSr同位体比初生値(以下SrIと表示)を併せて検討し、日本列島の花崗岩マグマの起源を考察する。
北海道日高帯で、地表露出した地殻断面に貫入したトッタベツ岩体では最深部に相当する斑れい岩のSrIが 0.7027 で、そこから岩体上部に向かって 0.7040 まで連続的に変化し、岩体上部を構成する花崗岩はSrI = 0.70407+/-0.00005, 年代 19.8+/-0.9 Ma の見事なアイソクロンを形成する(Kamiyama et al., 2007)。この最深部斑れい岩のSrI 0.7027はMORB の87Sr/86Sr同位体比に近く、岩体の下位に露出する海洋地殻相当ユニットに移化する産状と調和的である。同帯の斑れい岩から同様の値を得た Maeda & Kagami (1996) は海嶺衝突の証拠と主張した。
同じく中新世の背弧海盆拡大があった西南日本では、13.5〜15 Maの期間限定同時多発的な珪長質火成活動が起こった。それら外帯花崗岩は0.7054~0.7096と内帯の白亜紀花崗岩と同等のSrIをもち、付加体から成る上部地殻物質の関与が想定されるが、太平洋に張り出した潮岬、室戸岬、足摺岬などに露出する苦鉄質岩体ではそれが0.7031~ 0.7036と低く、上部地殻物質の関与が少ないことがわかる。
西南日本において、地表露出する花崗岩類の75%を占める白亜紀花崗岩類のSrIは0.705~ 0.7115、その大部分は0.706~ 0.710である。それに対して苦鉄質岩のSrIも0.706~ 0.710とほぼ同じ高い値を示すことから、その起源物質は海嶺や海洋地殻そのものではなく島弧下の同位体的にエンリッチしたソースに由来していることがわかる。当時のアジア大陸東縁の地下には長期の沈み込みに起因するサブアーク型リソスフェリックマントルが存在した可能性がある。
一方、古第三紀の花崗岩類のSrIは0.704~ 0.7052で、隣接し一部重複して分布する白亜紀花崗岩類との間には有意の差があり、この間で初期のリフト活動などによるマグマソースの変換があったと推定される(Imaoka et al., 2011)。しかし古第三紀花崗岩類はその分布が山陰地方に限られており、量的にも白亜紀の花崗岩類よりずっと少なく、その活動規模は限定的であったと思われる。
<文献> Imaoka, T. et al. (2011) J. Asian Earth Sci. 40, 509-533. Kamiyama, H. et al. (2007) J. Geol. 115, 295-314. Maeda, J. & Kagami, H. (1996) Geology, 24, 31-34.
北海道日高帯で、地表露出した地殻断面に貫入したトッタベツ岩体では最深部に相当する斑れい岩のSrIが 0.7027 で、そこから岩体上部に向かって 0.7040 まで連続的に変化し、岩体上部を構成する花崗岩はSrI = 0.70407+/-0.00005, 年代 19.8+/-0.9 Ma の見事なアイソクロンを形成する(Kamiyama et al., 2007)。この最深部斑れい岩のSrI 0.7027はMORB の87Sr/86Sr同位体比に近く、岩体の下位に露出する海洋地殻相当ユニットに移化する産状と調和的である。同帯の斑れい岩から同様の値を得た Maeda & Kagami (1996) は海嶺衝突の証拠と主張した。
同じく中新世の背弧海盆拡大があった西南日本では、13.5〜15 Maの期間限定同時多発的な珪長質火成活動が起こった。それら外帯花崗岩は0.7054~0.7096と内帯の白亜紀花崗岩と同等のSrIをもち、付加体から成る上部地殻物質の関与が想定されるが、太平洋に張り出した潮岬、室戸岬、足摺岬などに露出する苦鉄質岩体ではそれが0.7031~ 0.7036と低く、上部地殻物質の関与が少ないことがわかる。
西南日本において、地表露出する花崗岩類の75%を占める白亜紀花崗岩類のSrIは0.705~ 0.7115、その大部分は0.706~ 0.710である。それに対して苦鉄質岩のSrIも0.706~ 0.710とほぼ同じ高い値を示すことから、その起源物質は海嶺や海洋地殻そのものではなく島弧下の同位体的にエンリッチしたソースに由来していることがわかる。当時のアジア大陸東縁の地下には長期の沈み込みに起因するサブアーク型リソスフェリックマントルが存在した可能性がある。
一方、古第三紀の花崗岩類のSrIは0.704~ 0.7052で、隣接し一部重複して分布する白亜紀花崗岩類との間には有意の差があり、この間で初期のリフト活動などによるマグマソースの変換があったと推定される(Imaoka et al., 2011)。しかし古第三紀花崗岩類はその分布が山陰地方に限られており、量的にも白亜紀の花崗岩類よりずっと少なく、その活動規模は限定的であったと思われる。
<文献> Imaoka, T. et al. (2011) J. Asian Earth Sci. 40, 509-533. Kamiyama, H. et al. (2007) J. Geol. 115, 295-314. Maeda, J. & Kagami, H. (1996) Geology, 24, 31-34.