1:00 PM - 1:15 PM
[R17-O-1] Super-Resolution of DEM based on Slope and Aspect using Deep Learning
Keywords:DEM, Super-resolution, Deep learning, Slope, Aspect
1.はじめに
DEM(Digital Elevation Model: 数値標高モデル)は,地球科学分野の基本情報として広く利用されている.DEMは高分解能なものほど,精度の高い表現や解析が可能である.近年,深層学習(Deep learning)による超解像技術の応用として,DEMの高分解能化が試みられている(Chen et al., 2016; 日高ほか, 2021など).本研究では,SRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network: Dong et al., 2014)による超解像技術を用いたDEMの高分解能化手法の開発について述べる.
2.原理と手法
SRCNNは特徴抽出,非線形マッピング,再構築の3層のCNNを用いて,低解像度の画像と高解像度の画像の関係性を学習し,低解像度の画像から高解像度の画像を得る手法である.本研究で開発した手法では,DEMから求めた傾斜方位と傾斜量を合成したイメージの高分解能化にSRCNNを用いた.データには,1 mメッシュの航空レーザ測量データから作成された「兵庫県_全域DEM(2010年度~2018年度)」を使用した.兵庫県中部の20×20 kmの範囲を200×200 mに分割した分解能1 mの高分解能DEM(200×200セル)と,それを分解能5 mに間引いた低分解能DEM(40×40セル)とのセットを10000セット作成し,学習・検証用に9000セット(学習:検証=8:2),残りを評価用に用いた.
学習と高分解能化の流れをFigure 1(a)に示す.分解能5 mのDEMをBicubic法で1 mの分解能にリサイズ(アップサンプリング)し,傾斜方位と傾斜量を求める.傾斜方位をH(色相),傾斜量をV(明度)に割当て,S(彩度)を固定してHSV色空間モデルを作成し,RGB(各0.0~1.0)の3chに変換する.実際には,情報の劣化を防ぐために画像化はしていない.高分解能DEMも同様に変換し,これらを用いてSRCNNで学習して,学習モデルを構築する.学習は損失関数(平均二乗誤差)とPSNR(ピーク信号対雑音比)で最適化した.
構築した学習モデルを用いて,評価用の5 m分解能のDEMを同様に変換したものから,高分解能のHSVモデルを得る.このHSVモデルを各座標での傾斜方位と傾斜量に変換して200×200=40000点の地点データとする.また,5 m分解能のDEMの標高値を40×40=1600点の地点データとする.面推定プログラムBS-Horizon(野々垣ほか,2008)のVisual Basic版であるTerramod-BS(坂本ほか,2012)を用いて,これらの2種類の地点データから分解能1 mのDEMを推定する.
3.結果
高分解能化の例として,Fig. 1(b)の分解能1 mのDEMを間引いて作成した(c)の分解能5 mのDEMを用いた結果を(d)と(e)に示す.Fig. 1(d)は補間(Bilinear,Bicubic,BS-Horizon)による結果であり,(e)はSRCNNによりDEMの標高情報のみを高分解能化した結果,HSVモデルを高分解能化して得られた傾斜方位・傾斜量と分解能5 mのDEMの標高値から,直接計算した結果とTerramod-BSを用いて面推定した結果である.評価のための指針としてRMSE(Root Mean Square Error)とPSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio)も示した.これらの中では,ここで開発した手法が精度が一番よく,崖などの地形的特徴も最も良く再現できていることがわかった.なお,高分解能化の比較では,地形の標高が滑らかに連続して変化することを前提とする補間と標高の急な変化等を特徴として表すことを前提とする超解像との根本的な違いが表れていると考える.
4.おわりに
開発した手法により地形の特徴を表した高分解能化が概ね実現できた.今後,超解像の他の多様な方法での検討も行っていきたい.
文献
Chen et al., 2016, ISPRS-Archives, XLI-B3, 247-250.
Dong et al., 2014, Computer Vision – ECCV 2014, 184-199.
兵庫県, 2020, 兵庫県_全域DEM(2010年度~2018年度). G空間情報センター.
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/2010-2018-hyogo-geo-dem(2021年6月25日)
日髙弥子ほか, 2021, 情報地質, 32, 3-13.
野々垣進ほか, 2008, 情報地質, 19, 61-77.
坂本正徳ほか, 2012, 情報地質, 23, 169-178.
DEM(Digital Elevation Model: 数値標高モデル)は,地球科学分野の基本情報として広く利用されている.DEMは高分解能なものほど,精度の高い表現や解析が可能である.近年,深層学習(Deep learning)による超解像技術の応用として,DEMの高分解能化が試みられている(Chen et al., 2016; 日高ほか, 2021など).本研究では,SRCNN(Super-Resolution Convolutional Neural Network: Dong et al., 2014)による超解像技術を用いたDEMの高分解能化手法の開発について述べる.
2.原理と手法
SRCNNは特徴抽出,非線形マッピング,再構築の3層のCNNを用いて,低解像度の画像と高解像度の画像の関係性を学習し,低解像度の画像から高解像度の画像を得る手法である.本研究で開発した手法では,DEMから求めた傾斜方位と傾斜量を合成したイメージの高分解能化にSRCNNを用いた.データには,1 mメッシュの航空レーザ測量データから作成された「兵庫県_全域DEM(2010年度~2018年度)」を使用した.兵庫県中部の20×20 kmの範囲を200×200 mに分割した分解能1 mの高分解能DEM(200×200セル)と,それを分解能5 mに間引いた低分解能DEM(40×40セル)とのセットを10000セット作成し,学習・検証用に9000セット(学習:検証=8:2),残りを評価用に用いた.
学習と高分解能化の流れをFigure 1(a)に示す.分解能5 mのDEMをBicubic法で1 mの分解能にリサイズ(アップサンプリング)し,傾斜方位と傾斜量を求める.傾斜方位をH(色相),傾斜量をV(明度)に割当て,S(彩度)を固定してHSV色空間モデルを作成し,RGB(各0.0~1.0)の3chに変換する.実際には,情報の劣化を防ぐために画像化はしていない.高分解能DEMも同様に変換し,これらを用いてSRCNNで学習して,学習モデルを構築する.学習は損失関数(平均二乗誤差)とPSNR(ピーク信号対雑音比)で最適化した.
構築した学習モデルを用いて,評価用の5 m分解能のDEMを同様に変換したものから,高分解能のHSVモデルを得る.このHSVモデルを各座標での傾斜方位と傾斜量に変換して200×200=40000点の地点データとする.また,5 m分解能のDEMの標高値を40×40=1600点の地点データとする.面推定プログラムBS-Horizon(野々垣ほか,2008)のVisual Basic版であるTerramod-BS(坂本ほか,2012)を用いて,これらの2種類の地点データから分解能1 mのDEMを推定する.
3.結果
高分解能化の例として,Fig. 1(b)の分解能1 mのDEMを間引いて作成した(c)の分解能5 mのDEMを用いた結果を(d)と(e)に示す.Fig. 1(d)は補間(Bilinear,Bicubic,BS-Horizon)による結果であり,(e)はSRCNNによりDEMの標高情報のみを高分解能化した結果,HSVモデルを高分解能化して得られた傾斜方位・傾斜量と分解能5 mのDEMの標高値から,直接計算した結果とTerramod-BSを用いて面推定した結果である.評価のための指針としてRMSE(Root Mean Square Error)とPSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio)も示した.これらの中では,ここで開発した手法が精度が一番よく,崖などの地形的特徴も最も良く再現できていることがわかった.なお,高分解能化の比較では,地形の標高が滑らかに連続して変化することを前提とする補間と標高の急な変化等を特徴として表すことを前提とする超解像との根本的な違いが表れていると考える.
4.おわりに
開発した手法により地形の特徴を表した高分解能化が概ね実現できた.今後,超解像の他の多様な方法での検討も行っていきたい.
文献
Chen et al., 2016, ISPRS-Archives, XLI-B3, 247-250.
Dong et al., 2014, Computer Vision – ECCV 2014, 184-199.
兵庫県, 2020, 兵庫県_全域DEM(2010年度~2018年度). G空間情報センター.
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/2010-2018-hyogo-geo-dem(2021年6月25日)
日髙弥子ほか, 2021, 情報地質, 32, 3-13.
野々垣進ほか, 2008, 情報地質, 19, 61-77.
坂本正徳ほか, 2012, 情報地質, 23, 169-178.