128th JGS: 2021

Presentation information

Poster

R2 [Regular Session]Petrology, mineralogy and economic geology

[3poster10-14] R2 [Regular Session]Petrology, mineralogy and economic geology

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R2-P-8] Petrology and intrusion age of alkali basalt dikes from the Toon City, Ehime Prefecture

Rika Shimada1, *Shunsuke Endo1 (1. Shimane University)

Keywords:Miocene, Alkali basalt, Shikoku

はじめに 約18 Maの西南日本前弧のアルカリ玄武岩岩脈が愛媛県新宮(Uto et al. 1987)と種子島(小笠原1997)に産し,新宮の単斜輝石捕獲結晶からはダイヤモンドが報告されている(Mizukami et al. 2008).深部で発生するアルカリ玄武岩マグマが前弧地殻に貫入する状況は,日本海拡大期のテクトニクスを考える際に重要である.新宮の西方約60 km,愛媛県東温市のMTL桜樹屈曲部の三波川変成岩に,単斜輝石とかんらん石の大型斑晶に富むアンカラマイト様岩脈が貫入しており,この岩脈の記載岩石学的特徴と年代を報告する.

岩脈の産状 東温市落出に東西走向・高角傾斜,幅1 m以下の岩脈を3地点で確認した.これらの岩脈に記載岩石学上の差異はない.岩脈は細粒周縁相をもち,中央部は,単斜輝石(緑色,褐色),かんらん石,石英の大型斑晶(1.5 cm以下)を多量に含む.篩状組織をもつ斜長石斑晶も少量含まれる.また捕獲岩として斑れい岩やホルンフェルス化した珪質岩がみられるが,新宮の岩脈と異なり,かんらん岩は確認していない.

岩石記載 石基は完晶質で,長石,単斜輝石,黒雲母,シリカ鉱物,チタン磁鉄鉱,炭酸塩からなる.長石は長さ1 mm以下の短冊形で顕著な累帯を示し,コアは斜長石(An76Ab23Or1~An44Ab49Or7),マントルはアノーソクレース(Ab6770Or1519An1315),リムはサニディン(Or5162Ab3544An35)である.シリカ鉱物は填間状に存在する.石基全体の化学組成は,粗面玄武岩~玄武岩質粗面安山岩に相当する. 大型斑晶に関して,単斜輝石やかんらん石は結晶ごとに異なる化学組成や累帯構造をもち,一部結晶化したメルト包有物(角閃石,黒雲母,炭酸塩,ガラスなどからなる)を含む.緑色単斜輝石は高Mg#でCrに富む(Mg# 0.88-0.90, Cr2O3 < 1.6 wt%).褐色単斜輝石は低Mg#でTiに富む.すべての単斜輝石大型斑晶は,石基の単斜輝石と同様な組成の薄いリムをもつ.Mgに富むかんらん石は大型自形で,クロムスピネル(Cr# = 0.65-0.72)を包有し,コア(Mg# 0.89, NiO = 0.26 wt%)からリムに向かってMg#とNiOが減少する.一方,褐色単斜輝石と複合結晶をなすかんらん石は比較的Feに富み(コアはMg# 0.80, NiO = 0.07 wt%),逆累帯を示す.両タイプのかんらん石はリム組成が一致する.石英斑晶は高温型石英の形態を示し,炭酸塩の反応縁をもつ. 捕獲岩としてみられる斑れい岩はTiに富む褐色単斜輝石,斜長石(An87),かんらん石仮像からなる.斑れい岩の鉱物化学組成は大型斑晶として見られる褐色単斜輝石・篩状斜長石と同様である.

年代 石基の長石のK-Ar年代として15.70 ± 0.45 Maが得られた(蒜山地質年代学研究所に依頼).年代測定には,ある程度均質な化学組成の長石粒子を集めるため,重液により比重2.60-2.64未満の長石粒子を除去している.

議論 大型斑晶の,結晶ごとの化学組成のばらつきとリムでの収束は,これらが捕獲結晶であることを意味する.一方,石基の化学組成や炭酸塩の存在から,ホストマグマはアルカリ岩質でCO2に富んでいたと考えられる.その活動年代は15.70 ± 0.45 Maで新宮の岩脈より若く,フィリピン海プレートの沈み込みに関係する瀬戸内火山活動の直前である.四国海盆のスラブウィンドウが上昇経路となった可能性が考えられる.
 捕獲結晶のうち,大量に存在する緑色単斜輝石,Mgに富む大型かんらん石,高Cr#のスピネルは,地殻マントル遷移帯の非アルカリ玄武岩マグマからの集積岩に由来すると考えられる.一方,褐色単斜輝石,篩状斜長石,Feに富むかんらん石の斑晶の少なくとも一部は斑れい岩捕獲岩と同源の捕獲結晶とみなせる.斑れい岩や褐色単斜輝石などの捕獲結晶は先行するアルカリ玄武岩マグマから結晶化したと考えられ,新宮と同時期のマグマ活動かもしれない. 四国山地の三波川変成岩および四万十付加体の下に斑れい岩下部地殻やかんらん石単斜輝石集積岩層が存在することは地震波探査から示唆されていることと整合的である.

引用文献 Mizukami et al. (2008) Geology, 36, 219-222. 小笠原 (1997) 岩鉱, 92, 454-464. Uto et al. (1987) Geochemical Journal, 21, 283-290.