128th JGS: 2021

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R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

[3poster15-23] R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R4-P-16] Two-stage fluid infiltration during retrograde metamorphism: an example from Perlebandet, Sør Rondane Mountains, East Antarctica

*Fumiko Higashino1, Tetsuo Kawakami1, Tatsuro Adachi2, Masaoki Uno3 (1. Kyoto University, 2. Kyushu University, 3. Tohoku University)

Keywords:metamorphic fluid, high-temperature metamorphic rock, CO2- and Cl-bearing fluid

CO2や塩素を含むH2Oアクティビティ(aH2O)の低い流体の存在は、中部~下部地殻からたびたび報告されてきた (例えば Newton et al., 1998 Precam. Res.; Touret & Huizenga, 2011 GSA Memoir)。H2O-CO2-NaCl(KCl, CaCl2)系において、CO2に富む流体と塩素に富む流体は、高温下でも不混和領域が大きく、二相共存可能である (Shmulovich & Graham, 2004 CMP)。そのため、天然試料から一方の流体組成が認識できた場合でも、両者が共存していた可能性を考慮する必要がある。
東南極セール・ロンダーネ山地では、原生代後期からカンブリア紀の中部~下部地殻に相当する高温変成岩類が広く露出する (例えば Shiraishi et al., 2008 GSL Sp. Pub.; Osanai et al., 2013 Precam. Res.)。同山地では、塩素に富む黒雲母および角閃石が東西 200 km に渡って産することが報告され、大規模な塩水活動が示唆されている (Higashino et al., 2013 Precam. Res.; 2019 J. Pet.)。しかし、塩素に富む流体とCO2を含む流体の共存関係はこれまで議論されてこなかった。パーレバンデは、同山地最西部に位置する、約10km規模のヌナタクである。北部のザクロ石―珪線石―黒雲母片麻岩からは反時計回りの温度圧力履歴が報告され、昇温期に塩素に富む流体流入が起きたと報告されている (Kawakami et al., 2017 Lithos)。本研究では、パーレバンデ南部に産するザクロ石―珪線石―黒雲母片麻岩を用いて、流体活動を読み解き、CO2と塩素に富む流体の共存関係の制約を試みた。
本研究試料の主要構成鉱物は、ザクロ石+珪線石+黒雲母+斜長石+カリ長石+石英であり、片麻状構造を切る幅 < 1㎜の黒いクラックが存在する。クラックは塩素に富む黒雲母 (~0.7 wt% Cl) から成り、後退変成期に塩素を含む流体が局所的に流入することで形成されたと考えられる。また、母岩のザクロ石のリムには菫青石と黒雲母 (0.2-0.3 wt% Cl) のインターグロウスが観察され、以下の反応が起きたと考えられる。
ザクロ石+カリ長石+H2O→菫青石+黒雲母 (1)
反応(1)の温度圧力条件は、ザクロ石がXFe = ~0.8の組成を持つことから、NaKFMASH系で~750 ºC、~0.3 GPa と見積もられた (Spear et al., 1999 CMP)。インターグロウス中の菫青石には、ラマン分光分析でH2OとCO2のピークが見られ、H2O-CO2流体共存下で菫青石が形成したことを示唆する。また、同組織内の黒雲母に塩素が含まれることから、反応(1)は、H2O-CO2-Cl流体の流入で起きたと考えられる。Kaindl et al. (2006 EJM) の手法を用いると、菫青石に含まれるCO2濃度はラマン分光分析により1.3-1.7 wt% と見積もられた。これは、Harley et al. (2002 JMG) で報告された流体中のaCO2が1の場合に菫青石に入り得るCO2濃度よりも高く、より精査する必要はあるものの、菫青石がaCO2の高い流体と共存したことを示す。さらに、インターグロウス中に産する黒雲母と共存する流体組成は、メルト不在下でXNaCl = ~0.06と見積もられた (750 ºC、0.5 GPa; Aranovich, 2017 Petrology)。個々に見積もったCO2および塩素を含む流体組成をH2O-CO2-NaCl系の相図 (Shmulovich & Graham, 2004 CMP) と比較すると、~750 ºC、~0.3 GPaの条件下では、両者は一相で存在していた可能性がある。
また、片麻状構造を切る黒いクラックの一部には、黒雲母+カリ長石+紅柱石から成るインターグロウス組織が見られる。これは、反応(1)で形成した黒雲母よりも低温で、反応(1)よりも塩素濃度の高い黒雲母が形成したことを示す。メルト不在下における流体―黒雲母間の塩素の分配係数の温度依存性は不明であるが、おそらく高aClの流体共存下で形成したのであろう。以上より、本試料では後退変成期にH2O-CO2-Cl流体の流入によってザクロ石の分解反応が起きた後、より低温で塩素を含む流体が流入するという、複数段階の流体活動が記録されていると分かった。