4:00 PM - 6:30 PM
[R4-P-17] Gap of the metamorphic condition recognized at Menipa area, Sør Rondane Mountains, East Antarctica.
Keywords:Metamorphism, Menipa, Sør Rondane Mountains, East Antarctica
東南極セール・ロンダーネ山地は,ゴンドワナ超大陸形成に伴う造山活動によって形成された高度変成岩類や貫入岩から構成される(Shiraishi, 1997 Antarctic Geol. Map Ser.).当山地を構成する変成岩類は,変成履歴および砕屑性ジルコンの年代分布によって北東テレーンと南西テレーンに区分されており,両テレーンはMain Tectonic Boundaryを境界として接していると考えられている(Osanai et al., 2013 Precambrian Res.).北東テレーンは時計回りの,南西テレーンは反時計回りのP-Tパスでそれぞれ特徴づけられ,650-600Maに北東テレーンが南西テレーンに衝上することで形成されたと考えられている(Osanai et al., 2013 同上).両テレーンには,グラニュライト相に達する変成条件の痕跡を残す岩石と,角閃岩相以下のピーク変成条件を示す岩石が分布している.これまで後者は前述の衝上運動時に地殻浅部にあったためにグラニュライト相変成作用を免れたと考えられてきたが,最近前者が後者の構造的上位に分布し,さらに両者のP-Tパスと変成年代が異なる例がブラットニーパネ地域で見いだされた(Adachi et al., 2020 NIPR sympo., 2021 JpGU).本研究では,ブラットニーパネ地域の東方に位置するメーニパ地域において,同様の関係性が認められるかを検証した.
メーニパ地域は山地中央部に位置する露岩域であり,珪長質変成岩や泥質変成岩が分布し,全体として東西方向の走向と低角の傾斜を示す.本発表では,メーニパ地域において構造的上位に位置する泥質片麻岩2試料(ザクロ石-黒雲母-珪線石片麻岩(試料番号1302B)およびザクロ石-黒雲母片麻岩(1301B))と,構造的下位に分布するザクロ石-黒雲母片麻岩(1901A-1)の解析結果を示す.
構造的上位に分布する1302Bはザクロ石,黒雲母,珪線石,斜長石,石英からなり,少量のルチル,燐灰石,ジルコン,モナズ石を含む.石英は離溶起源と考えられる多量の針状ルチルを含む.ザクロ石は核部から縁辺部にかけてMnが減少しMgが増加する明瞭な組成累帯構造を示す.さらにこの組成変化に伴って,包有物の鉱物組み合わせや鉱物組成が変化する.Mgが低い核部にはチタン鉄鉱,ルチル,斜長石(An=55-65)が含まれるが,Mgが高い縁辺部ではチタン鉄鉱が消失し,ルチルと斜長石(An=35-60)のみとなる.これらの変化は,
チタン鉄鉱+灰長石+石英⇒鉄ばんザクロ石+灰ばんザクロ石+ルチル (1)
の反応でザクロ石の縁辺部が形成されたことを示唆する.この反応はdP/dTが小さく,左辺側の鉱物組み合わせが低圧側に位置する反応である(Ghent&Stout, 1984)ため,この岩石が圧力上昇を経てピーク変成条件に達したことを示唆する.
1301Bはザクロ石,黒雲母,斜長石,石英からなり,少量のチタン鉄鉱,燐灰石,ジルコン,モナズ石を含む.この試料でも石英は多量の針状ルチルを含む.ザクロ石は縁辺部やクラックに沿って細粒の斜長石や黒雲母に置換されることがある.またザクロ石はほぼ均質な組成を示すが,縁辺部でわずかにCaが増加する.
構造的下位に分布する1901A-1は,ザクロ石,黒雲母,斜長石,微斜長石,石英からなり,少量のチタン鉄鉱,燐灰石,ジルコン,褐簾石を含む.この試料の石英は包有物を含まない.ザクロ石は縁辺部やクラックに沿って黒雲母に置換されることがあるが,全体的に後退変成作用の影響は軽微である.ザクロ石はほぼ均質な組成を示すが,縁辺部でCaが増加する.
これらの岩石に,ザクロ石の縁辺部,マトリックスの黒雲母および斜長石の核部の化学組成を用いてザクロ石-黒雲母地質温度計(Holdaway, 2000 Am. Mineral.)およびザクロ石-黒雲母-斜長石-石英地質圧力計(Wu et al.,2004 J. Petrol.)を適用したところ,1302Bは730-790℃,8.1-9.9kbar,1301Bは800-840℃,10.3-11.3kbarを示すのに対し,1901A-1は720℃,8.0kbar程度を示す.
見積もられた結果はピーク変成作用付近の条件であると考えられ,構造的上位に分布する岩石が下位の岩石より相対的に高い変成温度条件を示すように見える.また構造的下位の岩石は微斜長石を含み,石英中の離溶ルチルが認められないなど,構造的上位の岩石とは変成条件が異なることが記載岩石学的にも示唆される.これらのことは,ブラットニーパネ地域で認められたものと同様の地質学的関係がメーニパ地域にも分布する可能性を示唆する.
メーニパ地域は山地中央部に位置する露岩域であり,珪長質変成岩や泥質変成岩が分布し,全体として東西方向の走向と低角の傾斜を示す.本発表では,メーニパ地域において構造的上位に位置する泥質片麻岩2試料(ザクロ石-黒雲母-珪線石片麻岩(試料番号1302B)およびザクロ石-黒雲母片麻岩(1301B))と,構造的下位に分布するザクロ石-黒雲母片麻岩(1901A-1)の解析結果を示す.
構造的上位に分布する1302Bはザクロ石,黒雲母,珪線石,斜長石,石英からなり,少量のルチル,燐灰石,ジルコン,モナズ石を含む.石英は離溶起源と考えられる多量の針状ルチルを含む.ザクロ石は核部から縁辺部にかけてMnが減少しMgが増加する明瞭な組成累帯構造を示す.さらにこの組成変化に伴って,包有物の鉱物組み合わせや鉱物組成が変化する.Mgが低い核部にはチタン鉄鉱,ルチル,斜長石(An=55-65)が含まれるが,Mgが高い縁辺部ではチタン鉄鉱が消失し,ルチルと斜長石(An=35-60)のみとなる.これらの変化は,
チタン鉄鉱+灰長石+石英⇒鉄ばんザクロ石+灰ばんザクロ石+ルチル (1)
の反応でザクロ石の縁辺部が形成されたことを示唆する.この反応はdP/dTが小さく,左辺側の鉱物組み合わせが低圧側に位置する反応である(Ghent&Stout, 1984)ため,この岩石が圧力上昇を経てピーク変成条件に達したことを示唆する.
1301Bはザクロ石,黒雲母,斜長石,石英からなり,少量のチタン鉄鉱,燐灰石,ジルコン,モナズ石を含む.この試料でも石英は多量の針状ルチルを含む.ザクロ石は縁辺部やクラックに沿って細粒の斜長石や黒雲母に置換されることがある.またザクロ石はほぼ均質な組成を示すが,縁辺部でわずかにCaが増加する.
構造的下位に分布する1901A-1は,ザクロ石,黒雲母,斜長石,微斜長石,石英からなり,少量のチタン鉄鉱,燐灰石,ジルコン,褐簾石を含む.この試料の石英は包有物を含まない.ザクロ石は縁辺部やクラックに沿って黒雲母に置換されることがあるが,全体的に後退変成作用の影響は軽微である.ザクロ石はほぼ均質な組成を示すが,縁辺部でCaが増加する.
これらの岩石に,ザクロ石の縁辺部,マトリックスの黒雲母および斜長石の核部の化学組成を用いてザクロ石-黒雲母地質温度計(Holdaway, 2000 Am. Mineral.)およびザクロ石-黒雲母-斜長石-石英地質圧力計(Wu et al.,2004 J. Petrol.)を適用したところ,1302Bは730-790℃,8.1-9.9kbar,1301Bは800-840℃,10.3-11.3kbarを示すのに対し,1901A-1は720℃,8.0kbar程度を示す.
見積もられた結果はピーク変成作用付近の条件であると考えられ,構造的上位に分布する岩石が下位の岩石より相対的に高い変成温度条件を示すように見える.また構造的下位の岩石は微斜長石を含み,石英中の離溶ルチルが認められないなど,構造的上位の岩石とは変成条件が異なることが記載岩石学的にも示唆される.これらのことは,ブラットニーパネ地域で認められたものと同様の地質学的関係がメーニパ地域にも分布する可能性を示唆する.