4:00 PM - 6:30 PM
[R5-P-10] Provenance of the Plio-Pleistocene Nakatsu Group in the central part of Kanagawa Prefecture, central Japan
Keywords:provenance, conglomerate, clast composition, Nakatsu Group, Kanagawa Prefecture
はじめに
関東平野西縁部には上部鮮新〜下部更新統の海成〜河成層が分布し,鮮新世以降の関東平野西部の地形発達史を考察する上で重要な鍵を握る.これらの地層のうち,中津層群は最も南に分布する海成層であり,伊豆-小笠原弧と本州弧の会合部の近くに位置するため,伊豆-小笠原弧北端部の衝突・付加過程の解明にも重要な役割を果たすと考えられる.演者らは中津層群の礫岩の後背地解析を進めてきたが(例えば,河尻・柏木,2012;河尻,2014),本発表ではこれまで得られたデータを再検討し,中津層群の後背地について考察する.
地質概説
中津層群は神奈川県中央部,相模川および中津川沿いにみられ,古第三紀の四万十累帯相模湖層群を不整合で覆い,後期更新世の段丘堆積物に不整合に覆われる.下位より,小沢層,神沢層,清水層,大塚層,塩田層に区分される(Ito, 1985).下部は礫岩を挟在する砂岩を主体とし,上位に向かって細粒となり,上部はパミスやスコリア質のテフラ層を頻繁に挟在する泥岩を主体とする.堆積年代は,石灰質ナンノ化石などにより後期鮮新世(岡田,1987;斉藤,1988),古地磁気層序より3.4〜1.8 Maとされている(植木,2007).
礫種組成と主な礫の特徴
本研究では小沢層と神沢層の礫岩について検討した.小沢層の礫種組成は砂岩(約62 %),チャート(約25 %),珪長質凝灰岩類(約9 %)で,礫岩,砂岩頁岩細互層,花崗斑岩,花崗岩質岩,石英脈岩,千枚岩,ホルンフェルスがごく少数認められる(河尻,2016).一方で,神沢層の礫種組成は砂岩(約65 %),粘板岩(約19 %),チャート(約9 %)で,礫岩,凝灰岩,流紋岩,珪岩が少数含まれる(長谷川ほか,1991).
小沢層の砂岩礫は主に石英,斜長石,カリ長石,珪長質火山岩片により構成される.石英に富むグループと岩片に富むグループに分けられる(河尻,2014).小沢層のチャート礫からは,三畳紀中世Ladinian最前期,ジュラ紀中世Bajocian~Bathonian,および,ジュラ紀中世Callovian末~新世Oxfordianを示す放散虫化石が,神沢層の泥質チャート礫からは,ジュラ紀中世Callovian末~新世Oxfordianを示す放散虫化石が得られている(河尻・柏木,2012).珪長質凝灰岩には,二次鉱物としてセラドン石を含むものが認められ,また,火山ガラスは完全に石英化していないものが多い(河尻,2016).
礫の後背地
中津層群小沢層のチャート礫および神沢層の泥質チャート礫の供給源は,放散虫化石年代より秩父南帯斗賀野ユニットまたは三宝山ユニットと考えられる(河尻・柏木,2012).小沢層の砂岩礫のうち,石英に富むグループは秩父南帯もしくは四万十累帯相模湖層群から,岩片に富むグループは四万十累帯小河内層群または小仏層群より供給された可能性が高い(河尻,2014).一方で,中津層群に含まれる珪長質凝灰岩礫は完全に石英化していない火山ガラスやセラドン石を含む.このような珪長質凝灰岩は,伊豆-小笠原弧北端部の新第三系に認められる.また,ホルンフェルス礫と花崗岩質岩礫が少量含まれる.甲府盆地西方の甲斐駒ヶ岳岩体は3.3 Ma以降に急上昇したとされている(Watanabe et al., 2020).また,富士川流域の後期中新世の身延層には,砂岩礫,頁岩礫,花崗岩質岩礫が含まれ,関東山地から供給されたとされている(尾崎,2018).したがって、中津層群堆積時に甲府盆地周辺の花崗岩質岩体は露出していた可能性が高い.以上のことから,中津層群の後背地は四万十累帯と秩父南帯を主体とし,これらに貫入した深成岩および伊豆-小笠原弧北端部を一部に含んでいたと推定される.
引用文献
長谷川ほか, 1991, 神奈川県博調査研報(自然科学), No.6, 1-98. Ito, 1985, Jour. Geol. Soc. Japan, 91, 213-232.
河尻, 2014, 相模原市博研報, No.22, 109-115.
河尻, 2016, 相模原市博研報, No.24, 16-23.
河尻・柏木, 2012,相模原市博研報, no. 20, 65-74.
岡田, 1987, 化石, 43, 5-8.
尾崎, 2018, 身延地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 78-109.
斉藤, 1988, 昭和62年度文部省科学研究報告書, 日本産海生哺乳類化石の研究, 140-148.
植木, 2007, 日本第四紀学会演旨, 37, 66-67.
Watanabe et al., 2020, Jour. Mineral. Petrol. Sci., 115, 276-285.
関東平野西縁部には上部鮮新〜下部更新統の海成〜河成層が分布し,鮮新世以降の関東平野西部の地形発達史を考察する上で重要な鍵を握る.これらの地層のうち,中津層群は最も南に分布する海成層であり,伊豆-小笠原弧と本州弧の会合部の近くに位置するため,伊豆-小笠原弧北端部の衝突・付加過程の解明にも重要な役割を果たすと考えられる.演者らは中津層群の礫岩の後背地解析を進めてきたが(例えば,河尻・柏木,2012;河尻,2014),本発表ではこれまで得られたデータを再検討し,中津層群の後背地について考察する.
地質概説
中津層群は神奈川県中央部,相模川および中津川沿いにみられ,古第三紀の四万十累帯相模湖層群を不整合で覆い,後期更新世の段丘堆積物に不整合に覆われる.下位より,小沢層,神沢層,清水層,大塚層,塩田層に区分される(Ito, 1985).下部は礫岩を挟在する砂岩を主体とし,上位に向かって細粒となり,上部はパミスやスコリア質のテフラ層を頻繁に挟在する泥岩を主体とする.堆積年代は,石灰質ナンノ化石などにより後期鮮新世(岡田,1987;斉藤,1988),古地磁気層序より3.4〜1.8 Maとされている(植木,2007).
礫種組成と主な礫の特徴
本研究では小沢層と神沢層の礫岩について検討した.小沢層の礫種組成は砂岩(約62 %),チャート(約25 %),珪長質凝灰岩類(約9 %)で,礫岩,砂岩頁岩細互層,花崗斑岩,花崗岩質岩,石英脈岩,千枚岩,ホルンフェルスがごく少数認められる(河尻,2016).一方で,神沢層の礫種組成は砂岩(約65 %),粘板岩(約19 %),チャート(約9 %)で,礫岩,凝灰岩,流紋岩,珪岩が少数含まれる(長谷川ほか,1991).
小沢層の砂岩礫は主に石英,斜長石,カリ長石,珪長質火山岩片により構成される.石英に富むグループと岩片に富むグループに分けられる(河尻,2014).小沢層のチャート礫からは,三畳紀中世Ladinian最前期,ジュラ紀中世Bajocian~Bathonian,および,ジュラ紀中世Callovian末~新世Oxfordianを示す放散虫化石が,神沢層の泥質チャート礫からは,ジュラ紀中世Callovian末~新世Oxfordianを示す放散虫化石が得られている(河尻・柏木,2012).珪長質凝灰岩には,二次鉱物としてセラドン石を含むものが認められ,また,火山ガラスは完全に石英化していないものが多い(河尻,2016).
礫の後背地
中津層群小沢層のチャート礫および神沢層の泥質チャート礫の供給源は,放散虫化石年代より秩父南帯斗賀野ユニットまたは三宝山ユニットと考えられる(河尻・柏木,2012).小沢層の砂岩礫のうち,石英に富むグループは秩父南帯もしくは四万十累帯相模湖層群から,岩片に富むグループは四万十累帯小河内層群または小仏層群より供給された可能性が高い(河尻,2014).一方で,中津層群に含まれる珪長質凝灰岩礫は完全に石英化していない火山ガラスやセラドン石を含む.このような珪長質凝灰岩は,伊豆-小笠原弧北端部の新第三系に認められる.また,ホルンフェルス礫と花崗岩質岩礫が少量含まれる.甲府盆地西方の甲斐駒ヶ岳岩体は3.3 Ma以降に急上昇したとされている(Watanabe et al., 2020).また,富士川流域の後期中新世の身延層には,砂岩礫,頁岩礫,花崗岩質岩礫が含まれ,関東山地から供給されたとされている(尾崎,2018).したがって、中津層群堆積時に甲府盆地周辺の花崗岩質岩体は露出していた可能性が高い.以上のことから,中津層群の後背地は四万十累帯と秩父南帯を主体とし,これらに貫入した深成岩および伊豆-小笠原弧北端部を一部に含んでいたと推定される.
引用文献
長谷川ほか, 1991, 神奈川県博調査研報(自然科学), No.6, 1-98. Ito, 1985, Jour. Geol. Soc. Japan, 91, 213-232.
河尻, 2014, 相模原市博研報, No.22, 109-115.
河尻, 2016, 相模原市博研報, No.24, 16-23.
河尻・柏木, 2012,相模原市博研報, no. 20, 65-74.
岡田, 1987, 化石, 43, 5-8.
尾崎, 2018, 身延地域の地質. 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 78-109.
斉藤, 1988, 昭和62年度文部省科学研究報告書, 日本産海生哺乳類化石の研究, 140-148.
植木, 2007, 日本第四紀学会演旨, 37, 66-67.
Watanabe et al., 2020, Jour. Mineral. Petrol. Sci., 115, 276-285.