4:00 PM - 6:30 PM
[R8-P-5] Submarine geological structure of northern offshore Oshima-Oshima volcano, Hokkaido, estimated from acoustic survey
Keywords:sector collapse, Oshima-Oshima, Tsunami, Reflection seismic survey
活動的な火山体の崩壊は,内部の圧力変化を通じてマグマ供給系や噴火様式に影響を及ぼすと考えられている(Longpré et al., 2009, Geochem. Geophys. Geosys. ほか).また,火山島の山体崩壊は津波災害発生の引き金となる場合があり(Paris et al., 2020, Earth Sci. Rev.),重要な地質現象である.北海道南西沖に位置する渡島大島火山では,1741年の噴火の際に北側斜面で山体崩壊が発生し,その際に発生した津波は周辺の日本海沿岸各地に大きな被害をもたらした(川上ほか, 2017, 地質雑).渡島大島北側の海底斜面には,海底観察により山体崩壊堆積物の存在が確認されている(加藤, 1997, JAMSTEC深海研究).しかしその空間分布や山体崩壊量の見積もりは,津波挙動の数値計算などの境界条件として重要にも関わらず,地質学的に十分制約されているとは言えない.
以上を踏まえて,火山体崩壊のマグマ供給系への影響と津波発生モデルに地質学的制約を与えるため,2020年8月に海洋研究開発機構所有の学術研究船「白鳳丸」を用いた調査航海が実施された(本学会,石塚ほか,針金ほかを参照).渡島大島北方海域において海底地形調査,磁気探査,マルチチャンネル反射法音波探査,サブボトムプロファイラー(SBP)による高分解能音波探査,および堆積物・岩石試料採取が実施された.本講演では,主に反射法音波探査により明らかになった調査海域の海底下地質構造,および新たに推定された山体崩壊堆積物の空間分布について紹介する.
反射法音波探査には,音源として355 cu. inchのG.I.ガン(Sercel社製)を,受信部として32チャンネル・400 m長のストリーマケーブル(Geometrics社製)をそれぞれ用いた.調査海域内に設定されたN–S系,E–W系およびNW–SE系の測線(総延長約270 km)において,発震間隔は概ね12.5 m(NW–SE系のみ25 m),収録長6秒(NW–SE系のみ9秒)で探査を実施した.取得したデジタルデータは,ジオメトリ編集,バンドパスフィルタ,ゲイン補償,デコンボリューション,速度解析,NMO補正,CMP重合,マイグレーションの順で波形処理を行った.調査海域の海底下には,渡島大島北側の斜面部から水深2000 m以深の平坦部にかけて連続する,音響的散乱によって特徴付けられる音響基盤と,最大往復走時1.6 秒程度の層厚でそれを覆う,堆積層と考えられる複数枚の成層した内部反射面が認められる.これらの内部反射面は部分的に不整合を示す接触関係をもつことから,堆積層は少なくとも2つ以上のユニットに区分できると考えられる.堆積盆内部には東西走向の正断層系が広く認められ,下位のユニットは変形構造を伴うのに対し,上位のユニットは比較的変形が少なく,水平な内部反射面を特徴とする.一方で表層に撓曲構造をもたらしている,活構造と考えられる逆断層系も部分的に認められる.
本調査の音波探査記録と海底地形データから,1741年の山体崩壊に伴う渡島大島北側斜面部の浸食域と粗粒な崩壊堆積物(流れ山,巨礫)の分布域が推定され,既往研究(Satake and Kato, 2001, Geophys. Res. Lett. ほか)とも整合的である.さらに本調査により,細粒部は斜面下部から北方の堆積盆中央部にかけて,表層に薄く広がりをもつ可能性があることが示唆された.今後,堆積物試料の分析結果と総合して検討していくことにより,山体崩壊に関連する物質移動・堆積過程をより詳細に解明できることが期待される.
以上を踏まえて,火山体崩壊のマグマ供給系への影響と津波発生モデルに地質学的制約を与えるため,2020年8月に海洋研究開発機構所有の学術研究船「白鳳丸」を用いた調査航海が実施された(本学会,石塚ほか,針金ほかを参照).渡島大島北方海域において海底地形調査,磁気探査,マルチチャンネル反射法音波探査,サブボトムプロファイラー(SBP)による高分解能音波探査,および堆積物・岩石試料採取が実施された.本講演では,主に反射法音波探査により明らかになった調査海域の海底下地質構造,および新たに推定された山体崩壊堆積物の空間分布について紹介する.
反射法音波探査には,音源として355 cu. inchのG.I.ガン(Sercel社製)を,受信部として32チャンネル・400 m長のストリーマケーブル(Geometrics社製)をそれぞれ用いた.調査海域内に設定されたN–S系,E–W系およびNW–SE系の測線(総延長約270 km)において,発震間隔は概ね12.5 m(NW–SE系のみ25 m),収録長6秒(NW–SE系のみ9秒)で探査を実施した.取得したデジタルデータは,ジオメトリ編集,バンドパスフィルタ,ゲイン補償,デコンボリューション,速度解析,NMO補正,CMP重合,マイグレーションの順で波形処理を行った.調査海域の海底下には,渡島大島北側の斜面部から水深2000 m以深の平坦部にかけて連続する,音響的散乱によって特徴付けられる音響基盤と,最大往復走時1.6 秒程度の層厚でそれを覆う,堆積層と考えられる複数枚の成層した内部反射面が認められる.これらの内部反射面は部分的に不整合を示す接触関係をもつことから,堆積層は少なくとも2つ以上のユニットに区分できると考えられる.堆積盆内部には東西走向の正断層系が広く認められ,下位のユニットは変形構造を伴うのに対し,上位のユニットは比較的変形が少なく,水平な内部反射面を特徴とする.一方で表層に撓曲構造をもたらしている,活構造と考えられる逆断層系も部分的に認められる.
本調査の音波探査記録と海底地形データから,1741年の山体崩壊に伴う渡島大島北側斜面部の浸食域と粗粒な崩壊堆積物(流れ山,巨礫)の分布域が推定され,既往研究(Satake and Kato, 2001, Geophys. Res. Lett. ほか)とも整合的である.さらに本調査により,細粒部は斜面下部から北方の堆積盆中央部にかけて,表層に薄く広がりをもつ可能性があることが示唆された.今後,堆積物試料の分析結果と総合して検討していくことにより,山体崩壊に関連する物質移動・堆積過程をより詳細に解明できることが期待される.