4:00 PM - 6:30 PM
[R14-P-3] Study of Kaminada phase based on geological structure of the Median Tectonic Line, Futami town of Iyo city, Ehime Prefecture, Japan.
Keywords:Median Tectonic Line , Paleogene, Kaminada Phase, Kinematic history
1.上灘フェーズの研究経緯
中央構造線の運動史のうち後期白亜紀以降の既往研究によれば,市之川フェーズ(59 Ma)と先砥部フェーズ(47-46Ma),砥部フェーズ(15Ma),石鎚フェーズ(14-10Ma),菖蒲谷フェーズ(2-0Ma)に区分される(Kubota and Takeshita 2008, Kubota et al. 2020).特に古第三紀の運動像は詳細な研究により,市之川フェーズは中央構造線が大規模な正断層運動を行う運動時相であること,その後の先砥部フェーズは,中央構造線に平行~雁行配列する内帯の断層群が左横ずれ逆断層運動により形成された運動時相であることが示された(Kubota and Takeshita 2008; Kubota et al. 2020). これに対して永井(1971, 1973)が示した上灘フェーズは、上部白亜系和泉層群の堆積後、始新統久万層群堆積前の時期に、南から北への衝上断層の運動時階であるとされる。これは、愛媛県伊予市双海町内に分布する中央構造線よりも北側の内帯側において和泉層群の上位に三波川変成岩類が位置する露頭関係から考察されたものである。この研究以降に上灘フェーズに関する研究は行われておらず、詳細な地質学的な情報がない。近年に再構築された中央構造線の運動史において、上灘フェーズは未解明の運動であるため、詳細な研究を実施した。研究方法は現地踏査、研磨片・薄片による構造地質学的な手法による変形構造の解析を行った。
2.検討結果
永井(1971)が上灘フェーズの根拠として示した3地区の他、周辺まで現地踏査をおこなって地質構造を検討した。3地区の地質構造の概要は以下の通りである。
・高野川地区 緑色片岩からなる三波川変成岩類は厚み10m程度の岩体が北へ約30°程度で傾斜して分布しており、上位に和泉層群が分布する。和泉層群との接触面は認められない。三波川変成岩類の下位は貫入した中新統の安山岩が分布する。
・小網地区 緑色片岩および結晶質石灰岩からなる三波川変成岩類は厚み10m程度の岩体が北へ約30°程度で傾斜して分布しており、上位に和泉層群が分布する。接触面は幅0.5m程度のカタクレーサイトからなる破砕帯である。N30°E 30°Wの断層面に対して、top to the westの変形構造が解析される。三波川変成岩類の下位は貫入した中新統の安山岩が分布する。
・岡地区 三波川変成岩類の緑色片岩が上灘川の右岸側に河床より比高差30m付近の位置に厚さ20m以下の層厚で水平に分布する。この岩体の上下盤側は中新統の安山岩に貫入を受けており、和泉層群との接触関係は認められない。
3.考察
中央構造線より北側に位置する三波川変成岩類は、いずれもその下位に和泉層群が分布する露頭関係は認められなかった。特に永井(1971)が示した露頭関係の高野川・小網地区では、三波川変成岩類の岩体が北へ30度程度で傾斜して分布する状況を周辺の露頭を追跡して確認したことから、三波川変成岩類の下位は中新統の安山岩が分布するのみであると把握した。このため、永井(1971)が考察した三波川変成岩類が和泉層群の上位に分布する構造は認められなかった。 三波川変成岩類の岩体が上灘川沿いの中央構造線より北側に位置する点については、中新統の安山岩に貫入を受ける以前の時期に、断層運動により中央構造線の形状が改変されている可能性も考えられるため、今後詳細な研究を進める予定である。
(引用文献) Kubota, Y., & Takeshita, T., 2008, Isl. Arc, 17, 129-151. https://doi.org/10.1111/j.1440‐1738.2007.00607.x; Kubota, Y., Takeshita, T., Yagi, K., & Itaya, T., 2020, Tectonics, 39, e2018TC005372. https://doi.org/10.1029/2018TC005372; 永井浩三, 1971, 四国西部の中央構造線についての新事実, 地学雑誌, 80, 1-10.; 永井浩三, 1973, 愛媛県の中央構造線, 杉山隆二編, 中央構造線, 東海大学出版会, 東京, 197-207.
中央構造線の運動史のうち後期白亜紀以降の既往研究によれば,市之川フェーズ(59 Ma)と先砥部フェーズ(47-46Ma),砥部フェーズ(15Ma),石鎚フェーズ(14-10Ma),菖蒲谷フェーズ(2-0Ma)に区分される(Kubota and Takeshita 2008, Kubota et al. 2020).特に古第三紀の運動像は詳細な研究により,市之川フェーズは中央構造線が大規模な正断層運動を行う運動時相であること,その後の先砥部フェーズは,中央構造線に平行~雁行配列する内帯の断層群が左横ずれ逆断層運動により形成された運動時相であることが示された(Kubota and Takeshita 2008; Kubota et al. 2020). これに対して永井(1971, 1973)が示した上灘フェーズは、上部白亜系和泉層群の堆積後、始新統久万層群堆積前の時期に、南から北への衝上断層の運動時階であるとされる。これは、愛媛県伊予市双海町内に分布する中央構造線よりも北側の内帯側において和泉層群の上位に三波川変成岩類が位置する露頭関係から考察されたものである。この研究以降に上灘フェーズに関する研究は行われておらず、詳細な地質学的な情報がない。近年に再構築された中央構造線の運動史において、上灘フェーズは未解明の運動であるため、詳細な研究を実施した。研究方法は現地踏査、研磨片・薄片による構造地質学的な手法による変形構造の解析を行った。
2.検討結果
永井(1971)が上灘フェーズの根拠として示した3地区の他、周辺まで現地踏査をおこなって地質構造を検討した。3地区の地質構造の概要は以下の通りである。
・高野川地区 緑色片岩からなる三波川変成岩類は厚み10m程度の岩体が北へ約30°程度で傾斜して分布しており、上位に和泉層群が分布する。和泉層群との接触面は認められない。三波川変成岩類の下位は貫入した中新統の安山岩が分布する。
・小網地区 緑色片岩および結晶質石灰岩からなる三波川変成岩類は厚み10m程度の岩体が北へ約30°程度で傾斜して分布しており、上位に和泉層群が分布する。接触面は幅0.5m程度のカタクレーサイトからなる破砕帯である。N30°E 30°Wの断層面に対して、top to the westの変形構造が解析される。三波川変成岩類の下位は貫入した中新統の安山岩が分布する。
・岡地区 三波川変成岩類の緑色片岩が上灘川の右岸側に河床より比高差30m付近の位置に厚さ20m以下の層厚で水平に分布する。この岩体の上下盤側は中新統の安山岩に貫入を受けており、和泉層群との接触関係は認められない。
3.考察
中央構造線より北側に位置する三波川変成岩類は、いずれもその下位に和泉層群が分布する露頭関係は認められなかった。特に永井(1971)が示した露頭関係の高野川・小網地区では、三波川変成岩類の岩体が北へ30度程度で傾斜して分布する状況を周辺の露頭を追跡して確認したことから、三波川変成岩類の下位は中新統の安山岩が分布するのみであると把握した。このため、永井(1971)が考察した三波川変成岩類が和泉層群の上位に分布する構造は認められなかった。 三波川変成岩類の岩体が上灘川沿いの中央構造線より北側に位置する点については、中新統の安山岩に貫入を受ける以前の時期に、断層運動により中央構造線の形状が改変されている可能性も考えられるため、今後詳細な研究を進める予定である。
(引用文献) Kubota, Y., & Takeshita, T., 2008, Isl. Arc, 17, 129-151. https://doi.org/10.1111/j.1440‐1738.2007.00607.x; Kubota, Y., Takeshita, T., Yagi, K., & Itaya, T., 2020, Tectonics, 39, e2018TC005372. https://doi.org/10.1029/2018TC005372; 永井浩三, 1971, 四国西部の中央構造線についての新事実, 地学雑誌, 80, 1-10.; 永井浩三, 1973, 愛媛県の中央構造線, 杉山隆二編, 中央構造線, 東海大学出版会, 東京, 197-207.