128th JGS: 2021

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R14 [Regular Session]Tectonics

[3poster47-56] R14 [Regular Session]Tectonics

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R14-P-6] (entry) Estimation of fault formation environment in the eastern part of Yonaguni Island in the Southern Ryukyu Arc by paleotemperture and mineral paragenesis

*Haruya MIYAKI1, Kiyokazu OOHASHI1 (1. Yamaguchi Univ.)

Keywords:fault, Yonaguni Island, paleotemperture, Okinawa Trough, mineral paragenesis

はじめに
琉球列島はユーラシアプレートとフィリピン海プレートの間に位置し,フィリピン海プレートの沈み込み域に琉球海溝が分布する.また,琉球列島の南西部は台湾との衝突が認められる.与那国島周辺には琉球海溝,沖縄トラフと大規模なテクトニクスが発達し,島内には断層・傾動などの地質構造が発達している(坂井ほか,1978).与那国島の傾動は第四紀以降の変動地形であり,断層の一部は更新世後期に形成された地形面を明瞭に変位させ,正断層地形が顕著に発達する.本研究の目的は,これら与那国島の断層の構造発達史を明らかし,島周辺のテクトニクスとの関係性を議論することである.そこで,断層が広域的に露出する島の東部(サンニヌ台周辺)で,断層帯構造と熱構造,鉱物組合せを明らかにし,発達史や形成環境の解明を試みた.
研究手法
断層帯構造を調べるため,断層中軸部からクラック密度,断層岩分布,各面構造の走向傾斜を測定・記載した.また,周辺の被熱構造を調べるため,八重山層群からビトリナイトを含む岩石試料の採取とビトリナイト反射率(Ro%)の測定を行い,最高被熱温度の推定にはEASY%Ro (Sweeney & Burnham, 1990)を用いた.断層岩および母岩の鉱物組合せを調べるため,XRD測定およびRockJock (Eberl, 2003) を用いた定性分析と定量分析を行った.
結果
断層帯の記載 与那国島東部の断層帯は,断層ガウジと断層角礫は断層中軸部から南側に20 mの幅で局所的に分布しており,カタクレーサイトは断層中軸部から南側に50 mの広範囲に分布している.
ビトリナイト反射率測定結果 八重山層群のRo(%)は断層中軸部付近の値が高く,断層帯から約60 m離れると最高被熱温度が一定値(バックグラウンド)を示した.上盤側のバックグラウンドはRo(%) = 0.72(最高被熱温度に換算すると134 ℃)を示し,下盤側ではRo(%) = 0.97(同163 ℃)を示した.
XRD測定およびRockJock結果 断層岩(断層ガウジ)および母岩(弱変形および非変形)の鉱物組合せは,石英,アルバイト,緑泥石,サニディン,イライトであった.カタクレーサイトはこれらに加え方解石が認められた.
考察
固結度のちがいや現地形面に変位を与えているかどうかを考慮し,カタクレーサイトが広範囲に分布する断層帯を古期の変形(ステージ1),断層ガウジ・断層角礫を伴う断層帯を新期の変形(ステージ2)に区分した.ステージ1とステージ2の断層コアの構造は,それぞれmultiple fault coreとsingle fault core (Mitchell and Faulkner, 2009)に区分でき,ステージ1で形成された複数の断層コアの一部を再利用する形でステージ2の断層コアが形成されたと考えられる.また,ビトリナイト反射率測定より,上盤側と下盤側での断層の変位による温度差は約29 ℃であった.仮に地温勾配が40 ℃/kmであると仮定すると変位量は約725 m必要であるのに対し,琉球層群–八重山層群の不整合面の鉛直隔離は約70 mである.これは,後期更新世の琉球層群堆積以前から断層運動が繰り返されたことに起因すると考えられる. また,断層中軸部の高被熱温度が認められる範囲はカタクレーサイトの分布域と重複しており,カタクレーサイト中にのみ方解石脈が認められることから,下盤側に高温流体が流れ込み,熱構造を改変した可能性が考えられる.
以上をふまえると,与那国島東部の断層帯は,八重山層群の堆積以降multiple fault core の構造を有するカタクレーサイト帯が形成(ステージ1)した.その後,single fault coreの構造を有する断層ガウジ帯の形成(ステージ2)が開始し,ステージ2は琉球層群の堆積以降も変形が続く.また,東部の断層露頭はNE-SW走向の正断層であるため,沖縄トラフ拡大によるNW-SE引張(10-2 Ma; 古川, 1991)によって初生的な構造が形成された可能性がある.
謝辞
本研究の実施にあたり,産業技術総合研究所の大坪 誠博士に助言や資料提供をいただきました.記して感謝申し上げます.
引用文献
Mitchell, T. and Faulkner, D. (2009) J Struct Geol, v. 31, no. 8, 802-816.
古川雅英 (1991) Jour of Geograph, 100(4), 552-564 1991.
Sweeney, J. and Burnham, K. (1990) AAPG Bulletin (1990) 74 (10): 1559–1570.
Eberl, D. (2003) USGS Report 2003-78.
坂井卓・浜田正平・辻和毅・鈴木勲・黒川睦生(1978) 八重山群島与那国島の地質.琉球列島の地質学研究,3,p.61-79.