128th JGS: 2021

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Poster

R14 [Regular Session]Tectonics

[3poster47-56] R14 [Regular Session]Tectonics

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R14-P-8] (entry) The latest slip zone with low density and mineral precipitation from borehole survey of the Neodani Fault

*Kazuma Yatabe1, Tomoyuki Ohtani2, Takashi Mori2 (1. Gifu University, 2. Gifu Univ.)

Keywords:latest slip zone, X-ray Diffraction, X-ray CT, Neodani Fault, mineral precipitation, fault gouge

原子力規制庁が根尾谷断層で行った活断層ボーリングにより,1891年濃尾地震で変位を生じた最新すべり面を含むコア試料が得られている.これを用いて,X線CT観察と粉末X線回折分析を行い,根尾谷断層の地下における最新すべり面の特徴を明らかにすることが本研究の目的である.
根尾谷断層は岐阜・福井県境の能郷白山付近から岐阜県本巣市根尾水鳥をへて岐阜市北西部付近にかけて分布する全長35 kmの左横ずれ断層である.このうち,根尾水鳥では断層が2本に分岐する断層ジョグにおいて,1891年に起きた濃尾地震の際に6 mの縦ずれ変位を生じた地域である.この根尾水鳥において,原子力規制庁により根尾谷断層を貫く2本のボーリング孔が2019年に掘削された(原子力規制庁,2019).ボーリング孔のうち1本はパイロット孔であるNDFP-1である.NDFP-1は傾斜井であり,掘削長140.0 m,孔底深度106.8 mである.もう1本は本孔であるNDFD-1,及びそのサイドトラック孔井であるNDFD-1-S1である(以下,両者をあわせてNDFD-1と呼ぶ).NDFD-1はほぼ鉛直に掘削された孔井であり,掘削長524.8 m,孔底深度516.9 mである.いずれの孔井もジュラ紀付加体の美濃帯付加コンプレックスである泥岩基質メランジュを貫いており,最新すべり面は,NDFP-1では掘削深度110.75mと想定され玄武岩と泥岩の両方を起源とする断層ガウジが,NDFD-1では掘削深度387.7mと想定され玄武岩起源断層ガウジが認められる.
ボーリングコアのX線CT撮影を行い,CT画像ビューワーソフトHorosによる任意の2次元断面の観察を行った.比較的変形の弱い泥岩,チャート,玄武岩の平均CT値はそれぞれ1799,1777,2248であり,有色鉱物を多く含む玄武岩のCT値が比較的高い.一方で,NDFP-1の最新すべり面である泥岩起源断層ガウジでは平均CT値が1362,NDFD-1の最新すべり面である玄武岩起源断層ガウジでは平均CT値が1286ときわめて低い.
NDFP-1およびNDFD-1で51試料の粉末X線回折分析を行った.その結果,NDFP-1とNDFD-1の最新すべり面では,いずれもスメクタイトと方解石が含まれる.ただし,NDFD-1の最新すべり面の方が,スメクタイトと方解石をより明瞭に確認することができる.また,最新すべり面ではない玄武岩起源断層ガウジでも同様に,スメクタイトと方解石を含む.一方で,泥岩起源断層ガウジでは,スメクタイトがわずかに認められ,方解石は検出されない.よって,最新すべり面のみに着目すると,NDFD-1の玄武岩起源断層ガウジでは,スメクタイトと方解石が明瞭に認められるのに対して,NDFP-1では玄武岩と泥岩の両方を起源とする断層ガウジであり,泥岩起源断層ガウジが混入することにより,スメクタイトと方解石のピークがやや不明瞭になると考えられる.
最新すべり面ではCT値がきわめて低くなっている.これは,せん断面内部では密度が低くなっていることを示唆している.Scaringi et al.(2018)は,低封圧下での地すべり粘土のリングせん断試験より変位量が大きいほど地すべり粘土の体積膨張が大きくなることを示している.また,津留ほか(2020)は根尾谷断層破砕帯の地表露頭2地点で基盤岩中に認められる最新すべり面の直上に分布する礫が混入し配列することを報告している.よって,濃尾地震の際に最新すべり面に沿って断層ガウジの体積膨張が生じ,密度が低くなったとともに,地表付近では開口が生じて礫が混入したと考えられる.断層ガウジでは,最新のすべりの有無にかかわらずスメクタイトと方解石が検出された.断層ガウジの形成に伴ってスメクタイトと方解石の晶出が生じたと考えられる.最新すべり面である断層ガウジでは密度が低いことから,掘削時点では濃尾地震から128年が経過しているものの,鉱物による間隙の充填がまだ十分に行われておらず,今後さらなる間隙の充填により密度が回復し,断層の強度回復が進んでいくと考えられる.また,最新すべり面である断層ガウジからもスメクタイトと方解石が見いだされることから,ここでは過去にもすべりを生じ,間隙をスメクタイトと方解石が充填した後に,再度濃尾地震のときにすべりを生じたものと考えられる.

引用文献:
Scaringi et al. (2018) GRL, 45, 767-777.
津留ほか(2020) JpGU-AGU Joint Meeting講演要旨集,SSS16-P05.
原子力規制庁(2019)平成30年度原子力規制庁請負成果報告書, 断層活動性評価手法の構築に係る破砕帯掘削調査.