128th JGS: 2021

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Poster

R15 [Regular Session]Paleontology

[3poster57-61] R15 [Regular Session]Paleontology

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R15-P-1] Measurement of vertebrate fossils by 3D model using 3D data scale assignment program

*Yoichi Kondo1, Kiyoshi TANAKA2, Kazuyuki TAKEMAE3, Hiroo AZRGAMI3 (1. Nojiriko Museum, 2. Shinshu Univ., 3. AB.do Co., Inc.)

Keywords:Photogrammetry, data scale assignment program, Measurement , vertebrate fossils

脊椎動物化石の研究では,正確な計測値が重要であることは論を待たない.従来から計測法については多くの解説があるが,そのほとんどは化石に計測ポイントを決めておき,ポイント間の長さをノギスや棹状計などで計測する方法である.長さの測定には必ず誤差が生ずるが,化石の計測の場合,機械誤差や自然誤差より個人誤差が大きいとされる.たとえば,長鼻類の臼歯の計測の場合,ミリ単位での計測値では大きな問題にはならないが,エナメルの厚さの計測値では小数点1桁単位の数値の違いでは,この個人誤差は大きくなる.近年,自然史系博物館資料におけるデジタル化がすすみ,3Dデータを作成するにあたりさまざまな手法が開発されてきた.その主なものは,CTスキャン,3Dスキャナ,フォトグラメトリーなどである.CTスキャンは機器が高価であまり大きな化石には使えない.3Dスキャナでは機器が高価でなおかつ解像度が低いという課題がある.そこでフォトグラメトリーを用いた標本の3Dモデル化が多く用いられるようになってきた.日本では古生物の復元(新村,2020)や足跡化石研究(柴田ほか,2021)などに利用されてきている.しかし,三次元画像による計測は絶対的なスケールが存在しないため,画像上のスケールから計測し実際の計測値との比較を行う必要があるが,それでも数%の誤差が生じる.これは3Dモデルにスケールを与えるための目盛りの選択を人間がおこなっているため,選択誤差が生じるためである. 信州大学と株式会社Ab.doでは,3Dモデルにコンピューターによる論理的で正確なスケール付与をあたえるプログラムを共同で開発して,特許を出願中である.このプログラムを使用し,実際にナウマンゾウの臼歯化石を使って化石を計測し,実際の計測値との違いについて検討してみたので報告する.
1 資料 野尻湖産ナウマンゾウ臼歯化石
2 方法 1)標本を撮影する際,標本を取り囲むように2個1組のマーカーを複数配置する.2)写真撮影を行う.撮影にはデジタルカメラCanonEOSKissX2を使用した.3)標本を頬側面,舌側面,歯根側面の3方向から,なるべく画像が重複するように注意して撮影した.総計で298枚の写真を撮影した.4)3Dモデルの作成 撮影した写真からフォトグラメトリーソフトウェアAgisoft Metashape Professional v1.7.2を使用して,3Dモデルを作成する.5)三次元データスケール付与プログラムで,2個1組のマーカーごとに,中心点間の距離を11cmになるようにスケールを与える.6)作成した3DモデルをAgisoft Viewerで計測し,実物を計測した値と比較する.
3 結果 ノギスで実物の標本を測定した値と3Dモデルをコンピューター上で計測した値は,1%以内の誤差で一致した.この誤差は測定ポイントを手動で設置するために生じるものと考えられる.測定ポイントを決定するために,コンピューター上の画像位置のX軸,Y軸,Z軸を求めて,その間の値を測定するようにすれば誰が測定しても測定値は一意的に決まることになる.
4 三次元データスケール付与プログラムによる測定の意義と課題   
 メリットとしては,デジタルカメラのデータで3Dモデルを作成することは費用も少なくすみ時間もかからない.また,貴重な標本を非接触で観察することができ,必要なところの詳細な観察が可能である.カメラとソフトとコンピューターがあれば,計測したいところが自由に計測・観察ができる.とくに詳しく知りたい部位は撮影枚数を増やすことにより詳細な観察が可能となる.課題としては,当然ながら写真に写らない映像のデータは反映されない.化石の凹凸が激しく,奥まで光が届かないような部位の映像データは空白になる.少なくても化石の3方向からの撮影が必要で,この時の撮影の方法については今後改良する必要があろう.撮影された画像データの変換に人的な作業が必要で,そのための費用はかかるが,今後撮影の方法などを工夫することで低価格での使用も可能となるだろう.このプログラムは古生物学の研究に有用な方法であると考えられる.
引用文献  新村・田中・甲能・山田・佐々木(2016)北海道産鰭脚類化石のデジタル生体復元-フォトグラメトリーおよび3D CGソフトによる制作-.化石,99,85-92. 柴田・松川・ロックレイ・ミルナー(2021)SfM多視点ステレオフォトグラメトリーによる恐竜化石の三次元的な記録.横須賀市博研報(自然)(68)1-13.