4:00 PM - 6:30 PM
[R16-P-2] (entry) Stratigraphical changes of sandstone compositions in the Lower Jurassic Kuruma Group along the Odokoro River, Itoigawa City, Niigata Prefecture, central Japan
Keywords:Kuruma Group, Lower Jurassic, depositional environments, sandstone compositions, stratigraphy, Itoigawa City, Niigata Prefecture
【はじめに】砕屑岩の組成は後背地の検討において重要な指標となるが, 砕屑物の運搬過程や堆積環境などの要因によって組成が変化することが知られている (千々和, 1992).
富山県・長野県・新潟県の三県にわたって分布する下部ジュラ系来馬層群について, 砂岩組成の層位変化について報告する. 来馬層群は, 犬ヶ岳地域,小滝・大所地域, 来馬地域の3地域に分かれて分布する. 白石 (1992) は小滝・大所地域と来馬地域の本層群を下位より, 蒲原沢層, 大所川層, ヨシナ沢層に区分した. 長森ほか (2010) は, 大所川流域の岩相から白石 (1992) がヨシナ沢層と区分した部分が大所川層にあたるとし, 大所川層を下部, 中部, 上部に細分した.
新潟県糸魚川市に分布する来馬層群は, 堆積相の検討により河川成堆積物からなるとされている (長森ほか, 2010). しかしながら, Hayami (1957) は小滝川流域および大所川流域より海生二枚貝化石の産出を報告しており, 本地域において海成層が存在することは明らかである. 本報告では大所川流域の大所川層に着目して砕屑物組成の層位的変化を示すとともに, 産出化石により推定される堆積環境との関連について議論する. 砂岩のモード組成については, Gazzi-Dickinson法を採用し, 一枚の薄片につき500ポイント測定した. 砂岩のモード組成の測定結果をもとにQm-F-Ltダイアグラムを作成した.
【調査結果】大所川流域の来馬層群について柱状図を作成し, 下位から蒲原沢層, 大所川層下部, 大所川層中部, 大所川層上部に区分した. また, 汽水生二枚貝化石の密集層を大所川層下部より1層準, 大所川層上部より2層準発見した. Hayami (1957) による海生二枚貝化石の産出層準は, 大所川層中部に相当する. 本地域の砂岩は, Qm-F-Ltダイアグラム上ではTransitional Arc からDissected Arcにプロットされる. 砂岩のモード組成における層位的変化は以下の通りである. 蒲原沢層から大所川層下部にかけてはLtが減少し, QmとFが増加する. 大所川層下部から中部にかけてはQmとFがやや減少し, Ltがやや増加する. 大所川層中部から上部にかけてはFがやや減少し, QmとLtが増加する.
【考察】蒲原沢層から大所川層下部にかけての組成変化は, 火成弧の削剥の進行を示す. 大所川層下部から中部にかけての堆積環境は, 上位に向かって氾濫原堆積物 (長森ほか, 2010) から汽水生二枚貝化石密集層, 海生二枚貝産出層準付近 (Hayami, 1957) へと変化することから, 河川, 汽水, 浅海と移り変わっていったと考えられる. 砂岩組成変化はQmとFがやや減少し, Ltがやや増加する. ところが, この変化は後背地の成熟にともないQm, Fが増加する (Dickinson et al. 1983) というとらえ方では説明できない. 加えて, 高エネルギー環境下ではLtが減少しQm, Fが増加することが報告されているが (千々和, 1992), この結果とは逆の傾向を示している. よって, 本検討の結果は堆積環境が砂岩組成に与える影響よりもテクトニックな要因が強くはたらいていることを示唆している. 竹内ほか (2017) は来馬層群の堆積速度が速いことを指摘しており, 高エネルギー環境下で物理的に不安定な岩片が石英・長石に分解されるよりも速く砕屑物が供給されたと考えられる. 大所川層中部から上部にかけての組成変化は, Dickinson et al. (1983) や千々和 (1992) のとらえ方では説明できない.
千々和, 1992, 地質雑, 38, 311-327. Dickinson et al., 1983, Geol. Soc. Amer. Bull., 94, 222-235. Hayami, 1957, Trans. Proc. Palaeont. Soc. Japan, N. S., 28, 119-127. 熊崎・小嶋, 1996, 地質雑, 102, 285-302. 長森ほか, 2010, 図幅「小滝」, 産総研地質調査総合センター, 134p. 白石, 1992, 地球科学, 46, 1-20. 竹内ほか, 2017, 地質雑, 123, 5, 335-350.
富山県・長野県・新潟県の三県にわたって分布する下部ジュラ系来馬層群について, 砂岩組成の層位変化について報告する. 来馬層群は, 犬ヶ岳地域,小滝・大所地域, 来馬地域の3地域に分かれて分布する. 白石 (1992) は小滝・大所地域と来馬地域の本層群を下位より, 蒲原沢層, 大所川層, ヨシナ沢層に区分した. 長森ほか (2010) は, 大所川流域の岩相から白石 (1992) がヨシナ沢層と区分した部分が大所川層にあたるとし, 大所川層を下部, 中部, 上部に細分した.
新潟県糸魚川市に分布する来馬層群は, 堆積相の検討により河川成堆積物からなるとされている (長森ほか, 2010). しかしながら, Hayami (1957) は小滝川流域および大所川流域より海生二枚貝化石の産出を報告しており, 本地域において海成層が存在することは明らかである. 本報告では大所川流域の大所川層に着目して砕屑物組成の層位的変化を示すとともに, 産出化石により推定される堆積環境との関連について議論する. 砂岩のモード組成については, Gazzi-Dickinson法を採用し, 一枚の薄片につき500ポイント測定した. 砂岩のモード組成の測定結果をもとにQm-F-Ltダイアグラムを作成した.
【調査結果】大所川流域の来馬層群について柱状図を作成し, 下位から蒲原沢層, 大所川層下部, 大所川層中部, 大所川層上部に区分した. また, 汽水生二枚貝化石の密集層を大所川層下部より1層準, 大所川層上部より2層準発見した. Hayami (1957) による海生二枚貝化石の産出層準は, 大所川層中部に相当する. 本地域の砂岩は, Qm-F-Ltダイアグラム上ではTransitional Arc からDissected Arcにプロットされる. 砂岩のモード組成における層位的変化は以下の通りである. 蒲原沢層から大所川層下部にかけてはLtが減少し, QmとFが増加する. 大所川層下部から中部にかけてはQmとFがやや減少し, Ltがやや増加する. 大所川層中部から上部にかけてはFがやや減少し, QmとLtが増加する.
【考察】蒲原沢層から大所川層下部にかけての組成変化は, 火成弧の削剥の進行を示す. 大所川層下部から中部にかけての堆積環境は, 上位に向かって氾濫原堆積物 (長森ほか, 2010) から汽水生二枚貝化石密集層, 海生二枚貝産出層準付近 (Hayami, 1957) へと変化することから, 河川, 汽水, 浅海と移り変わっていったと考えられる. 砂岩組成変化はQmとFがやや減少し, Ltがやや増加する. ところが, この変化は後背地の成熟にともないQm, Fが増加する (Dickinson et al. 1983) というとらえ方では説明できない. 加えて, 高エネルギー環境下ではLtが減少しQm, Fが増加することが報告されているが (千々和, 1992), この結果とは逆の傾向を示している. よって, 本検討の結果は堆積環境が砂岩組成に与える影響よりもテクトニックな要因が強くはたらいていることを示唆している. 竹内ほか (2017) は来馬層群の堆積速度が速いことを指摘しており, 高エネルギー環境下で物理的に不安定な岩片が石英・長石に分解されるよりも速く砕屑物が供給されたと考えられる. 大所川層中部から上部にかけての組成変化は, Dickinson et al. (1983) や千々和 (1992) のとらえ方では説明できない.
千々和, 1992, 地質雑, 38, 311-327. Dickinson et al., 1983, Geol. Soc. Amer. Bull., 94, 222-235. Hayami, 1957, Trans. Proc. Palaeont. Soc. Japan, N. S., 28, 119-127. 熊崎・小嶋, 1996, 地質雑, 102, 285-302. 長森ほか, 2010, 図幅「小滝」, 産総研地質調査総合センター, 134p. 白石, 1992, 地球科学, 46, 1-20. 竹内ほか, 2017, 地質雑, 123, 5, 335-350.