4:00 PM - 6:30 PM
[R22-P-6] Oceanic phosphorus inventory and atmospheric O2 levels during the Proterozoic and Phanerozoic eons constrained by a global redox budget model
Keywords:Atmospheric O2 level, Global redox budget, Biogeochemical cycles, Proterozoic, Phanerozoic
近年の地質学的・地球化学的手法の進展により、地球史を通じた大気中酸素濃度の変遷について大局的な描像が描かれるようになってきた.しかしながら、地質記録に基づく推定値には依然として大きな不確定性が残っており、オーダーレベルの議論に留まっているのが現状である.たとえば、原生代中期の時代(およそ18億年前から8億年前)の大気中酸素濃度については現在の0.1%~10%という程度でしか制約ができておらず、活発な議論が続いている.また、古生代カンブリア紀からオルドビス紀の酸素濃度についても、現在よりも有意に低かったという議論と現在と同程度であったという議論が対立している.氷床コアの存在しない100万年前よりも古い時代の大気組成を地質記録から復元することは難しく、また、たとえ正確な推定が可能になったとしても、その背後にある物質循環全体としての振る舞いを明らかにすることはできない.この点で、大気組成を規定する物質循環過程に着目した定量的研究が必要とされている.
大気中酸素濃度は、生成と消費の動的なバランス(酸化還元収支)によって決まっている.本研究では、大気中酸素量を規定する大気―海洋―地殻間での物質循環過程を包括的に考慮した数値モデルを開発し、酸素生成を規定するリン循環についての系統的な感度実験を行うことで、水圏でのリン濃度と大気中酸素濃度の間にどのような関係があるのかを定量的に調べた.開発された数値モデルは、海洋での生物地球化学過程を組み込んだモデルに大気光化学反応過程や陸域風化作用、および地殻リザーバーの応答が結合された全球酸化還元収支モデルである.このモデル開発によって、億年スケールで生じる地球表層環境の酸化還元状態を議論することが初めて可能となった.
陸域でのリン風化フラックスについての感度実験を行った結果、海洋リン濃度が低い状況ほど大気中酸素濃度が低くなることが示された.特に、両者の間には非線形関係が存在し、海洋中リン濃度が現在値の10%となる条件では大気中酸素濃度が現在値の1%程度にまで低下することが示された.また、海洋リン濃度が現在の3%を下回ると大気中酸素濃度が太古代レベルにまで低下することが示された.こうした結果は、海洋中リン濃度と大気中酸素濃度の間の関係を定量的に示した初めての結果であり、今後、地質記録から海洋中リン濃度の制約が進めば大気中酸素濃度に制約を与えることが可能となる. また、モデルの含むパラメータについてのモンテカルロシミュレーションを行った結果、大気中酸素濃度には典型的な二つの安定状態が存在する可能性が示された.一つは顕生代に対応する富酸素な大気海洋環境に対応しており、もう一つは現在の1%程度の大気酸素濃度に対応する.後者は原生代に想定される大気中酸素濃度に一致しており、原生代の低大気酸素濃度の状況が地球表層圏の物質循環の特性として説明できる可能性を示している.
発表では、上記結果に基づいて原生代から顕生代にわたる大気中酸素濃度変遷史について議論する予定である.
大気中酸素濃度は、生成と消費の動的なバランス(酸化還元収支)によって決まっている.本研究では、大気中酸素量を規定する大気―海洋―地殻間での物質循環過程を包括的に考慮した数値モデルを開発し、酸素生成を規定するリン循環についての系統的な感度実験を行うことで、水圏でのリン濃度と大気中酸素濃度の間にどのような関係があるのかを定量的に調べた.開発された数値モデルは、海洋での生物地球化学過程を組み込んだモデルに大気光化学反応過程や陸域風化作用、および地殻リザーバーの応答が結合された全球酸化還元収支モデルである.このモデル開発によって、億年スケールで生じる地球表層環境の酸化還元状態を議論することが初めて可能となった.
陸域でのリン風化フラックスについての感度実験を行った結果、海洋リン濃度が低い状況ほど大気中酸素濃度が低くなることが示された.特に、両者の間には非線形関係が存在し、海洋中リン濃度が現在値の10%となる条件では大気中酸素濃度が現在値の1%程度にまで低下することが示された.また、海洋リン濃度が現在の3%を下回ると大気中酸素濃度が太古代レベルにまで低下することが示された.こうした結果は、海洋中リン濃度と大気中酸素濃度の間の関係を定量的に示した初めての結果であり、今後、地質記録から海洋中リン濃度の制約が進めば大気中酸素濃度に制約を与えることが可能となる. また、モデルの含むパラメータについてのモンテカルロシミュレーションを行った結果、大気中酸素濃度には典型的な二つの安定状態が存在する可能性が示された.一つは顕生代に対応する富酸素な大気海洋環境に対応しており、もう一つは現在の1%程度の大気酸素濃度に対応する.後者は原生代に想定される大気中酸素濃度に一致しており、原生代の低大気酸素濃度の状況が地球表層圏の物質循環の特性として説明できる可能性を示している.
発表では、上記結果に基づいて原生代から顕生代にわたる大気中酸素濃度変遷史について議論する予定である.