129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G1-1.sub-Session 01

[1oral201-12] G1-1.sub-Session 01

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 12:00 PM oral room 1 (Build. 14, 501)

Chiar:Keishi Okazaki, Yoshihiro Nakamura, Nana Kamiya

9:00 AM - 9:15 AM

[G1-O-1] Multiple Types of porosity – P-wave velocity relationships for The Nankai Trough

*Suguru YABE1, Yohei HAMADA2, Manami KITAMURA1, Rina FUKUCHI3, Yoshitaka HASHIMOTO4 (1. Geological Survey of Japan, 2. JAMSTEC, 3. Naruto Univ. of Education, 4. Kochi Univ.)

Keywords:Nankai Trough, Accretionary prism, Porosity, P-wave velocity

堆積物の空隙率とP波速度の間の経験式はこれまで多くの提案がなされている.例えば,Erickson and Jarrard (1998)はグローバルなデータセットをコンパイルして,2種類の経験式(normal consolidationとhigh consolidationモデル)を提案した.特に西南日本の付加体に注目すると,さらに多くのモデルが提案されている.Hoffman & Tobin (2004)は室戸沖のデコルマ下盤の堆積物のデータを用いた経験式を提案した.Kitajima & Saffer (2012)は熊野沖のインプット堆積物の圧密実験の結果がHoffman & Tobin (2004)と調和的であることを示した.一方,Tudge and Tobin (2013)は,スメクタイト含有量の多いインプット堆積物はErickson and Jarrard (1998)やHoffman & Tobin (2004)の経験式よりも低速であることを提案した.また,Hashimoto et al. (2010)は熊野沖のIODP掘削サイトC0001のデータから,スロープ堆積物と付加体がそれぞれ異なる関係式に従うことを提案した.Kitajima et al. (2017) は,熊野沖のIODP掘削サイトC0002のデータから独自の経験式を得た.このように西南日本付加体における空隙率とP波速度の間の経験式は多くの提案がなされているが,これらの研究は対象とするローカルな地質構造内での関係に着目しており,俯瞰的な視点による経験式と地質体の関係は整理されていなかった.そこで本研究では,西南日本熊野沖におけるインプット堆積物から前弧海盆に至るまでの様々な地質環境のIODP掘削サイトのデータをコンパイルすることで,経験式と地質体の関係の俯瞰的な整理を試みた.

コンパイルの結果,複数の空隙率とP波速度の間の経験式が確認され,スメクタイトの含有割合と沈み込みによる圧縮応力場を経験したかどうかが付加体堆積物の物性を決める大きな要因となっていることが明らかになった.
(1)高スメクタイト含有地質体における超低P波速度スメクタイト含有量が40-60wt%に達するインプット堆積物(Middle Shikoku Basin・Lower Shikoku Basin)で見られる,最もP波速度の低い経験式.Tudge and Tobin (2013)が提案した経験式に対応する.
(2)非圧縮場における低P波速度スメクタイト含有量の低いインプット堆積物(Upper Shikoku Basin)やトレンチ堆積物,スロープ堆積物など,沈み込みによる圧縮応力を経験していない地質体で見られる,P波速度の低い経験式.Erickson and Jarrard (1998)のnormal consolidationモデルに対応する.
(3)圧縮場における高P波速度付加体に取り込まれ,圧縮場を現在もしくは過去に経験した堆積物に見られる,P波速度の速い経験式.Erickson and Jarrard (1998)のhigh consolidationモデルに対応する.

空隙率とP波速度の間の経験式は,地震探査で得られたP波速度構造から付加体の物性を推定する際によく使用される.これまでのようにローカルなデータセットに基づいた経験式を使用する場合,広域の構造に対して経験式を適用することの妥当性が明らかではなかった.本研究が明らかにした俯瞰的な付加体物性と地質体の関係に基づいて,広域な付加体の構造に対して経験式を使い分けて物性の推定を行うことが可能となり,地震探査の速度構造から推定される付加体物性の正確性が向上すると期待される.

【引用文献】
Erickson, S. N., & Jarrard, R. D. (1998), JGR, doi:10.1029/98JB02128
Hoffman, N. W., & Tobin, H. J. (2004), Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, 190/196, 1–23.
Hashimoto, Y., Tobin, H. J., & Knuth, M. (2010), Geochem. Geophys. Geosyst., doi:10.1029/2010GC003217
Kitajima, H., & Saffer, D. M. (2012), GRL, doi:10.1029/2012GL053793
Kitajima, H., Saffer, D., Sone, H., Tobin, H., & Hirose, T. (2017). GRL, doi: 10.1002/ 2017GL075127
Tudge, J., and H. J. Tobin (2013), Geochem. Geophys. Geosyst., doi:10.1002/2013GC004974.