129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G1-1.sub-Session 01

[1oral201-12] G1-1.sub-Session 01

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 12:00 PM oral room 1 (Build. 14, 501)

Chiar:Keishi Okazaki, Yoshihiro Nakamura, Nana Kamiya

9:30 AM - 9:45 AM

[G1-O-3] Thermal history, strain and deformation mechanism in a fossil seismogenic fault: the Yokonami melange, the Cretaceous Shimanto Belt

*Yoshitaka Hashimoto1, Mako Kawaji1, Jinpei Mitani1, Taizo Uchida1 (1. Kochi University)

Keywords:accretionary complex, seismogenic fault, thermal history, strain, deformation mechanism

●はじめに
過去の断層のすべり挙動を制約することは、地球物理学的に観測されている多様なすべり速度を持つ断層の物質科学的理解につながる。この制約が広くなされれば、異なるすべり速度の断層群の相互作用も明らかになるだろう。これはスロー地震と通常地震の相互作用の理解へ発展していく可能性がある。 本研究は1)断層からの距離に応じた被熱減衰パターンが断層摩擦発熱を起因とした時のすべり挙動の制約(例えばHamada et al., 2015)、2) 延性変形に敏感な帯磁率異方性(AMS)によるひずみ解析(Greve et al., 2020)、および3)段階熱消磁実験によるイベント温度の同定と磁気方位の変化から、すべり速度、ひずみ、変形機構といった観点で総合的に断層挙動を理解しようとするものである。
●地質概説
対象は四国白亜系四万十帯横浪メランジュの北縁に位置する五色の浜断層である。断層帯の幅は2-3mで、破砕帯を伴う複数の断層からなる。一つの破砕帯の厚さは10-20cmで、石英質の砂岩ブロックを取り囲む泥質基質は流動的な組織を示す。石英は鏡下で波状消光し、場所によってバルジが見られる。母岩の輝炭反射率から最高被熱温度は約250˚Cである。また、1mm以下の厚さのシュードタキライトを伴うシャープな断層が破砕帯内部に見られ、過去の地震断層と認定される(Hashimoto et al., 2012)。
●摩擦発熱によるすべり挙動の制約
再結晶粒子サイズ温度計から破砕帯内部地震断層から1.5cmまでの被熱温度はほぼ一定で約370˚Cであり、母岩より有意に高い。また破砕帯から母岩の輝炭反射率分布には距離に応じた減少傾向が弱く見られた。この両者の温度分布が摩擦発熱のためだとすると、約20cmの破砕帯がすべり時間103.4乗秒、発熱量が104.43J/m2/s程度であることが制約された。このすべり時間と発熱量は観測されるスロー地震のスケーリング則に調和的であり、破砕帯はスロー地震の化石であることが示唆される。すなわち、スロー地震と地震断層は同じ断層帯を利用していることが考えられる。
●ひずみ解析
バルジの粒径から推定されるひずみ速度および変位速度はプレート運動よりも桁違いに遅く、泥質基質の流動が変位を賄っていることが示唆された。そこで延性変形に敏感なAMS解析からひずみの分布を検討した。その結果断層帯から十分遠い母岩のオブレートなひずみに断層帯内でのプロレートなひずみが重複して断層帯中心付近で平面ひずみとなる傾向が見られた。また断層帯内でプロレートなひずみの重複量が中程度まではひずみ軸の集中が見られるのに対し、重複量が大きいとひずみ軸がランダムな分布を示した。これは、プロレートのひずみの重複に伴って延性ひずみが脆性破壊へ変化したことを示唆している。
●段階熱消磁実験によるイベント温度の抽出
断層岩および母岩メランジュサンプルに段階熱消磁実験を行ったところ、250-300˚Cで磁気方位が変化した。これは、特定の磁性鉱物が熱イベントを被った温度と言える。この温度は母岩の過去の最高被熱と下限で調和的であるが、上限は断層摩擦発熱とする熱イベントとも調和的であるとも言える。ただし、断層岩と母岩メランジュの両者ともに同様の熱イベントが認定されることから、断層摩擦発熱による局所的な温度上昇とは言えない。現在は予察的な結果であり、今後データの精査が必要である。本手法は熱イベント温度の追認の意味だけでなく、熱イベント前後での岩体の回転も検討できることから、将来、ひずみやひずみ速度の制約につながることを期待している。
●まとめ
・四国白亜系四万十帯北縁に位置する五色の浜の破砕帯中にはバルジの動的再結晶が観察された。このひずみ速度は著しく遅く泥岩基質の流動が変位を賄っていることが示唆された。
・温度減少パターンから破砕帯のすべり速度・すべり時間が制約され、スロー地震に相当する。
・AMSから剪断ひずみ帯が制約され、ひずみが中程度までは延性的な変形機構が、ひずみが大きくなると脆性的な変形機構が示唆された。
・磁性鉱物の段階消磁実験から他の温度情報と調和的な熱イベントが得られた。
Hamada et al., 2015, Earth Planet and Space, 67:39: DOI 10.1186/s40623-015-0208-0/ Annika Greve et al., 2020, Earth and Planetary Science Letters, 542, https://doi.org/10.1016/j.epsl.2020.116322/Hashimoto, Y et al., 2012, Island arc, 2012, 53-56.