129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

G1-1.sub-Session 01

[1oral201-12] G1-1.sub-Session 01

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 12:00 PM oral room 1 (Build. 14, 501)

Chiar:Keishi Okazaki, Yoshihiro Nakamura, Nana Kamiya

10:45 AM - 11:00 AM

[G1-O-8] Active fault outcrops and activity of the Shimojyo-sanroku fault, southern Nagano Prefecture, Southwest Japan

*Masao KAMETAKA1, Kota SHIMOGAMA1, Masaaki IWASAKI1, Toru SAKAI1,2, Kazuhiko OKAZAKI1, Eiji NAKATA3, Kotaro AIYAMA3, Ryo HAYASHIZAKI3, Takahiro IIDA4 (1. Dia Consultants, 2. Waseda Univ., 3. CRIEPI, 4. CERES)

Keywords:Inadani fault zone, Shimojyo-sanroku fault, active fault, fault outcrop, Quaternary

下条山麓断層は長野県南部に位置し,北東-南西方向に広がる伊那谷と南西側の山地の境界をなし,北西-南東方向に延びる活断層である.有井(1958)は下條村親田の牛ヶ爪川沿いの2ヶ所で,段丘礫層を切って花崗岩が衝上する露頭を見出し新田断層と名付けたが,露頭の詳細については記載していない.仁科ほか(1985)は,この断層を長さ10 kmの下条山麓断層としている.岡田ほか(2003)及び鈴木ほか(2010)は,下条山麓断層に相当する並走した2条の「推定活断層(地表)(位置やや不明確)」を図示している.調査地域の北部では,津久井・小林(2019a,b)によって断層の構造解析が行われている.今回の調査では下條地域の地形判読を行い,地表踏査によって下条山麓断層の断層露頭を数カ所で確認したので,それらの概要を報告する.
【牛ヶ爪川露頭】
 入登山神社北方の牛ヶ爪川左岸に活断層露頭が露出しており,有井(1958)が記載した露頭とみられる.花崗岩とそれを覆う礫層が断層に切られており,これらを含礫シルト層及び含礫腐植質シルト層が覆っている.花崗岩中の断層は幅5〜30 cm程度の断層ガウジを伴い,上盤及び下盤は主に花崗岩質の断層角礫からなる.断層面の走向はN20〜32°W,傾斜は32〜70°Wで露頭上方へ向かって低角化し,レイク60°北落ちの不明瞭な条線が認められる.断層は礫層基底を鉛直方向に1.5 m程度,逆断層センスに変位させている.この礫層は周辺に分布する中位段丘面を開析して堆積したとみられるため,より新しい時代の礫層と考えられる.断層を覆う含礫腐植質シルト層からは,813±19 cal.yr.BCなどの14C年代が得られた.
【牛ヶ爪川支流露頭】
 牛ヶ爪川露頭の北西約100 mの沢沿いの両岸に断層が露出している.露頭では鮮新—更新統伊那層群と考えられる礫層に,花崗岩の破砕帯が大規模に衝上している.断層は2条認められ,それぞれ幅約5 cmの断層ガウジを伴う.上盤側の花崗岩は破砕され風化が著しく,右岸側では大規模な崩壊地を形成している.下盤側は褐色のクサリ礫主体の巨礫礫層からなる.この露頭では,断層と新期の地層との関係は観察できていない.
【鶯巣川支流露頭 】
 鶯巣川支流の極楽沢右岸に活断層露頭が露出している.花崗岩の破砕帯及び上載する礫層を断層が切断している.花崗岩中の断層は幅2〜4 cm程度の断層ガウジを伴い,上盤及び下盤は主に花崗岩質の断層角礫からなる.断層面の走向はN38〜40°W,傾斜は25°SW,レイク60°北落ちの条線が認められる.礫層基底を鉛直方向に0.5 m程度,逆断層センスに変位させている.この礫層は周辺に分布する低位段丘を開析して沢沿いに亜段を形成していることから,さらに新しい時代の礫層と考えられる.
【増の沢露頭】
 阿智村中野の大沢川支流増の沢の右岸に断層露頭がみられる(田中・小泉,2012).この露頭では,中新統中野層の砂岩に破砕された花崗岩が衝上している.断層はNW-SE走向でSWに傾斜する逆断層である.露頭の位置や姿勢から,下条山麓断層の北西延長部にあたると考えられる.この露頭では,断層と新期の地層との関係は観察できていない.
【下条山麓断層の活動性】
 下条山麓断層は伊那谷の地形を規制し,鮮新—更新統の伊那層群を大規模に切ることなどから,過去には活発に活動していたことが示唆される.ところが,下条山麓断層の変動地形は非常に不明瞭であり,地形判読からは最近の活動性は高くないと推定される.一方で,鶯巣川支流露頭では新期の礫層を切断しており,ごく新しい活動もあったと考えられる.今後,下条山麓断層の第四紀における活動履歴を明らかにする予定である.
【謝辞】
 本研究は,電力委託研究「破砕部性状等による断層の活動性評価手法の高度化に関する研究」及び「上載地層を必要としない断層活動性評価手法の開発に関する研究」の成果の一部である.ここに記して感謝の意を表する.
【引用文献】
有井琢磨,1958,地理学評論,vol.31,no.6,p.14-30.
仁科良夫ほか,1985,信州大学理学部紀要,no.20,p.171-198.
岡田篤正ほか,2003,1:25,000都市圏活断層図「時又」,国土地理院.
鈴木康弘ほか,2010,1:25,000 都市圏活断層図「妻籠」,国土地理院.
田中 良・小泉明裕,2012,伊那谷自然史論集,vol.13,p.19-24.
津久井脩平・小林健太,2019a,日本地球惑星科学連合2019年大会,SSS15-P09.
津久井脩平・小林健太,2019b,日本地質学会第126年学術大会講演要旨,R15-P-13.