11:45 AM - 12:00 PM
[G1-O-12] Cross sections of a surface deformation that is not explained by tectonic events
Keywords:Volume expansion, Normal fault, Weathering, Shimonoseki subgroup
1、はじめに
風化作用にともなう岩石の体積変化の有無はよくわかっていない。 White(2002)は岩盤のサプロライト化において浅部の土壌化した部分を除き体積はほとんど変化しないと考えている。一方、Noe et al.(2007)らは吸水膨張によってベントナイト層が体積膨張し、建物が傾斜した例を示している。大山ほか(1998)は石膏の結晶成長により建物が傾斜した例を示しており、中田ほか(2012)は硫酸塩鉱物の晶出により坑道坑壁が剥離する可能性を指摘した。 風化作用によって形成された粘土鉱物による吸水膨張を考える場合、膨張性粘土鉱物が風化作用によって大量に形成される必要がある。一般的に日本のような湿潤で地下水位が高い地域では岩石の体積を変化させるほどの大量の膨張性粘土鉱物は形成されない。加えて大気中のCO2を取り込んだ雨水によって風化帯内の膨潤性粘土鉱物は溶解、消失する。すなわち風化作用では蒸発などで間隙水中の鉱物の飽和度が上昇し、結晶が成長する場合を除き、体積の増加は起きないと推測できる。 現在、山口県下関市では長門市街-豊田町を結ぶ縦貫道が建設されており、赤色強風化した法面が多く開削されている。今回、一つの法面において上に凸の撓みと撓みを切る正断層群を確認した。地層の短縮と引張を説明するためにいくつかのモデルを紹介する。
2、地質
調査地は豊田町西市付近にある。本地域では長門構造線から西に向かって白亜紀前期に堆積した関門層群が分布している。関門層群は下位から礫主体で砂、泥層の互層状に挟む脇野亜層群、上位に安山岩溶岩、火砕岩からなる下関亜層群からなる。下関亜層群の下部は礫層、赤紫泥岩層、砂層の互層からなり、安山岩質火砕岩へと移り変わっている。堆積環境は東から西に向かって海から浅海、陸へと移り変わっている。 今回調査した法面は下関亜層群の下部で赤紫泥岩層と礫層の互層が認められる。地層の走向はN20E、傾斜は20度で西に緩く傾斜している。法面は約45°の勾配で概ね地層の走向と並行に開削されている。
3、露頭状況
図1に法面状況を示す。法面の高さは11 mである。法面下部には礫層が水平に認められる。法面中部では赤紫泥岩層と砂層の互層が認められ、上部では再び赤紫泥層が優勢となる。中部の互層はマウンド状に50 ㎝程度盛り上がっている。その上部には南に落ちる正断層群が認められる。この断層は法面下部の礫岩層まで達していない。法面では赤紫泥岩層中に幅15cmの砂岩の貫入岩が認められ、厚さ5cmの凝灰岩層で南に30cm水平にずらされている。
4、考察
法面中部で地層の南北圧縮、その上に南北伸張の断層が認められた。この状況から本法面での地質状況を説明する6つのモデルを考えた。①強風化に伴う岩盤の体積膨張による上に凸状のマウンドの形成とその膨張により正断層群が生成。②地震に伴う受動的な地すべりにより正断層群が生成。③層面すべりによる圧縮とすべり慣性により正断層群が生成。⑤法面手前方向への地すべり。⑥法面中部と上部とで異なる時期で変状が発生。現状でこの地質状況を明確に説明する解は見つかっていない。
引用文献
中田ほか(2012)トンネル坑壁表面で認められる高溶解度結晶(硫酸ナトリウム)について. 平成24年度研究発表会講演論文集, 205-206. Noe et al. (2007) Steeply Dipping Heaving Bedrock, Colorado: Part 1—Heave Features and Physical Geological Framework. Environmental and Engineering Geoscience 13, 89-308. 大山ほか(1998)泥岩の化学的風化による住宅基礎の盤ぶくれ.応用地質, 39, 261-272. White (2002) Determining mineral weathering rates based on solid and solute weathering gradients and velocities: application to biotite weathering in saprolites. Chemical Geology 190, 69-89.
風化作用にともなう岩石の体積変化の有無はよくわかっていない。 White(2002)は岩盤のサプロライト化において浅部の土壌化した部分を除き体積はほとんど変化しないと考えている。一方、Noe et al.(2007)らは吸水膨張によってベントナイト層が体積膨張し、建物が傾斜した例を示している。大山ほか(1998)は石膏の結晶成長により建物が傾斜した例を示しており、中田ほか(2012)は硫酸塩鉱物の晶出により坑道坑壁が剥離する可能性を指摘した。 風化作用によって形成された粘土鉱物による吸水膨張を考える場合、膨張性粘土鉱物が風化作用によって大量に形成される必要がある。一般的に日本のような湿潤で地下水位が高い地域では岩石の体積を変化させるほどの大量の膨張性粘土鉱物は形成されない。加えて大気中のCO2を取り込んだ雨水によって風化帯内の膨潤性粘土鉱物は溶解、消失する。すなわち風化作用では蒸発などで間隙水中の鉱物の飽和度が上昇し、結晶が成長する場合を除き、体積の増加は起きないと推測できる。 現在、山口県下関市では長門市街-豊田町を結ぶ縦貫道が建設されており、赤色強風化した法面が多く開削されている。今回、一つの法面において上に凸の撓みと撓みを切る正断層群を確認した。地層の短縮と引張を説明するためにいくつかのモデルを紹介する。
2、地質
調査地は豊田町西市付近にある。本地域では長門構造線から西に向かって白亜紀前期に堆積した関門層群が分布している。関門層群は下位から礫主体で砂、泥層の互層状に挟む脇野亜層群、上位に安山岩溶岩、火砕岩からなる下関亜層群からなる。下関亜層群の下部は礫層、赤紫泥岩層、砂層の互層からなり、安山岩質火砕岩へと移り変わっている。堆積環境は東から西に向かって海から浅海、陸へと移り変わっている。 今回調査した法面は下関亜層群の下部で赤紫泥岩層と礫層の互層が認められる。地層の走向はN20E、傾斜は20度で西に緩く傾斜している。法面は約45°の勾配で概ね地層の走向と並行に開削されている。
3、露頭状況
図1に法面状況を示す。法面の高さは11 mである。法面下部には礫層が水平に認められる。法面中部では赤紫泥岩層と砂層の互層が認められ、上部では再び赤紫泥層が優勢となる。中部の互層はマウンド状に50 ㎝程度盛り上がっている。その上部には南に落ちる正断層群が認められる。この断層は法面下部の礫岩層まで達していない。法面では赤紫泥岩層中に幅15cmの砂岩の貫入岩が認められ、厚さ5cmの凝灰岩層で南に30cm水平にずらされている。
4、考察
法面中部で地層の南北圧縮、その上に南北伸張の断層が認められた。この状況から本法面での地質状況を説明する6つのモデルを考えた。①強風化に伴う岩盤の体積膨張による上に凸状のマウンドの形成とその膨張により正断層群が生成。②地震に伴う受動的な地すべりにより正断層群が生成。③層面すべりによる圧縮とすべり慣性により正断層群が生成。⑤法面手前方向への地すべり。⑥法面中部と上部とで異なる時期で変状が発生。現状でこの地質状況を明確に説明する解は見つかっていない。
引用文献
中田ほか(2012)トンネル坑壁表面で認められる高溶解度結晶(硫酸ナトリウム)について. 平成24年度研究発表会講演論文集, 205-206. Noe et al. (2007) Steeply Dipping Heaving Bedrock, Colorado: Part 1—Heave Features and Physical Geological Framework. Environmental and Engineering Geoscience 13, 89-308. 大山ほか(1998)泥岩の化学的風化による住宅基礎の盤ぶくれ.応用地質, 39, 261-272. White (2002) Determining mineral weathering rates based on solid and solute weathering gradients and velocities: application to biotite weathering in saprolites. Chemical Geology 190, 69-89.