2:00 PM - 2:15 PM
[G1-O-15] Characteristics of Fault Gouges and Mineral Filling in the Shallow Fault Zone of the Neodani Fault
Keywords:fault gouge, mineral filling, shallow fault zone, Neodani Fault
原子力規制庁が行った孔井掘削により得られたボーリングコアを用いて,1891年濃尾地震で活動した根尾谷断層の地下浅部における断層ガウジのX線CT観察,粉末X線回折(XRD)分析,蛍光X線(XRF)分析,微小部蛍光X線(XGT)分析,走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)分析を行った.これらより根尾谷断層の地下浅部における最新すべり面およびその近傍の断層ガウジの特徴を明らかにすることにより,断層浅部における鉱物充填過程を検討することが本研究の目的である.
調査対象地は濃尾地震の際に6 mの垂直変位を生じた岐阜県本巣市根尾水鳥であり,圧縮性断層ジョグに位置している.本研究では,2019年に原子力規制庁が掘削したパイロット孔であるNDFP-1と本孔であるNDFD-1-S1のボーリングコアを調査対象とする.NDFP-1孔は傾斜井であり,掘削長140.0 m,孔底深度106.8 mである.NDFD-1-S1はほぼ鉛直に掘削された孔井であり,掘削長524.8m,孔底深度516.9 mである(原子力規制庁, 2019).
X線CT観察では,最新すべり面と想定されるせん断面内部はきわめて低いCT値を示し,低密度となっている.一方で,他の断層ガウジでは低いCT値は認められず,断層角礫等の他の断層岩類と同様の値を示す.XRD分析では,最新すべり面の有無にかかわらず断層ガウジに方解石とスメクタイトが含まれる.XRF分析では,NDFP-1の最新すべり面とその近傍でCaの濃度が高い値を示す.XGT分析では,最新すべり面のごく近傍でCaの濃度が高いのに対して,最新すべり面そのものでは相対的に低い値を示す.SEM-EDX分析では,方解石と思われるCaの濃集が認められ,最新すべり面ではフラグメント化しているのに対して,それ以外では脈状や面構造に沿って配列するような分布を示す.
Scaringi et al.(2018)は低封圧下の600 kPaで地すべり粘土のリングせん断試験を行い,変位速度が大きい場合には変位量が大きいほど地すべり粘土の体積膨張が大きくなることを示している.よって,最新すべり面では圧縮性断層ジョグであるにもかかわらず濃尾地震の際に最新すべり面に沿って断層ガウジの体積膨張が生じ,密度が低くなったと考えられる.また,断層ガウジ試料全般からスメクタイトが検出されることから,最新すべり面の断層ガウジで密度が低くなることは,スメクタイトの膨潤作用によって生じた可能性は低いといえる.一方で,他のガウジではCT値が高く密度が大きいことから,鉱物充填が進み,すべり面の密度回復が十分に生じていると考えられる.過去のすべりによって生じた最新すべり面近傍の断層ガウジでは,最新すべり面に比べてCaの濃度が高いこと,Caの濃集部は最新すべり面以外では脈状や面構造に沿って配列するような分布を示すことから,方解石が鉱物充填に重要な役割を果たしているといえる.一方で,最新すべり面ではCaの濃集部はフラグメントとしてのみ認められるため,濃尾地震から約130年が経過した現在でも鉱物充填はまだ進んでいないといえる.なお最新すべり面の断層ガウジは,他の断層ガウジと同様にスメクタイトを含むため,形成条件は類似していることが考えられる.よって,いまだ低密度のままである最新すべり面の断層ガウジは,これから時間をかけて方解石による鉱物充填が進むことが予想される.一方で,今回対象としているボーリングコアは地下浅部であり封圧が小さいことから,次の地震に向けて歪エネルギーをこの深度で蓄積する必要はない.よって,次の断層運動までに断層強度は完全には回復しない可能性がある.
原子力規制庁(2019)平成30年度原子力規制庁請負成果報告書, 断層活動性評価手法の構築に係る破砕帯掘削調査.
Scaringi et al. (2018) Geophysical Research Letters, 45, 766–777.
調査対象地は濃尾地震の際に6 mの垂直変位を生じた岐阜県本巣市根尾水鳥であり,圧縮性断層ジョグに位置している.本研究では,2019年に原子力規制庁が掘削したパイロット孔であるNDFP-1と本孔であるNDFD-1-S1のボーリングコアを調査対象とする.NDFP-1孔は傾斜井であり,掘削長140.0 m,孔底深度106.8 mである.NDFD-1-S1はほぼ鉛直に掘削された孔井であり,掘削長524.8m,孔底深度516.9 mである(原子力規制庁, 2019).
X線CT観察では,最新すべり面と想定されるせん断面内部はきわめて低いCT値を示し,低密度となっている.一方で,他の断層ガウジでは低いCT値は認められず,断層角礫等の他の断層岩類と同様の値を示す.XRD分析では,最新すべり面の有無にかかわらず断層ガウジに方解石とスメクタイトが含まれる.XRF分析では,NDFP-1の最新すべり面とその近傍でCaの濃度が高い値を示す.XGT分析では,最新すべり面のごく近傍でCaの濃度が高いのに対して,最新すべり面そのものでは相対的に低い値を示す.SEM-EDX分析では,方解石と思われるCaの濃集が認められ,最新すべり面ではフラグメント化しているのに対して,それ以外では脈状や面構造に沿って配列するような分布を示す.
Scaringi et al.(2018)は低封圧下の600 kPaで地すべり粘土のリングせん断試験を行い,変位速度が大きい場合には変位量が大きいほど地すべり粘土の体積膨張が大きくなることを示している.よって,最新すべり面では圧縮性断層ジョグであるにもかかわらず濃尾地震の際に最新すべり面に沿って断層ガウジの体積膨張が生じ,密度が低くなったと考えられる.また,断層ガウジ試料全般からスメクタイトが検出されることから,最新すべり面の断層ガウジで密度が低くなることは,スメクタイトの膨潤作用によって生じた可能性は低いといえる.一方で,他のガウジではCT値が高く密度が大きいことから,鉱物充填が進み,すべり面の密度回復が十分に生じていると考えられる.過去のすべりによって生じた最新すべり面近傍の断層ガウジでは,最新すべり面に比べてCaの濃度が高いこと,Caの濃集部は最新すべり面以外では脈状や面構造に沿って配列するような分布を示すことから,方解石が鉱物充填に重要な役割を果たしているといえる.一方で,最新すべり面ではCaの濃集部はフラグメントとしてのみ認められるため,濃尾地震から約130年が経過した現在でも鉱物充填はまだ進んでいないといえる.なお最新すべり面の断層ガウジは,他の断層ガウジと同様にスメクタイトを含むため,形成条件は類似していることが考えられる.よって,いまだ低密度のままである最新すべり面の断層ガウジは,これから時間をかけて方解石による鉱物充填が進むことが予想される.一方で,今回対象としているボーリングコアは地下浅部であり封圧が小さいことから,次の地震に向けて歪エネルギーをこの深度で蓄積する必要はない.よって,次の断層運動までに断層強度は完全には回復しない可能性がある.
原子力規制庁(2019)平成30年度原子力規制庁請負成果報告書, 断層活動性評価手法の構築に係る破砕帯掘削調査.
Scaringi et al. (2018) Geophysical Research Letters, 45, 766–777.