日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G1-1.ジェネラル サブセッション構造地質

[1oral213-20] G1-1.ジェネラル サブセッション構造地質

2022年9月4日(日) 13:30 〜 15:30 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:神谷 奈々(同志社大学)、高下 裕章(産業技術総合研究所)

14:15 〜 14:30

[G1-O-16] カルサイト双晶密度による多鉱岩石とセメント材料の歪・応力の推定方法

*坂口 有人1 (1. 山口大学大学院・創成科学研究科)

キーワード:応力、歪み、カルサイト

カルサイトは応力と歪みの増加に伴って、結晶内部が双晶変形する特性がある.特に歪み2%以下程度以下の場合は,歪み硬化を伴いながら薄い双晶帯の数が増えていく.大理石のようなカルサイトだけの岩石の場合は,幅広い温度圧力領域で,様々な塑性変形機構を伴いながら岩石試料全体として延性変形するため議論が複雑になる.しかし硬質な粒子からなる多鉱岩中にカルサイトが散在し,試料全体が弾性変形する場合は,試料全体の歪みに応じてカルサイト粒子中に双晶変形が生じる.この場合の平均カルサイト双晶密度と試料全体に生じた応力とが比例することが,三軸圧縮試験および個別要素法シミュレーションで示された(坂口ほか,2011).ただしこの論文では,特定の硬質砂岩でのみ実験が行われたため,その実験で得られた関係式は,弾性率の異なる他の岩石に適用することはできなかった. 天然の岩石に含まれるカルサイトは,初生的に一定の双晶変形を被っており,特に低応力の圧縮試験による双晶密度変化をみるのが難しい.そこで初生的な双晶変形を有しない水熱合成カルサイト粒子を,高強度セメントによるモルタルに混ぜ込んだ試料で一軸圧縮試験を行った.セメント材料は添加する水の量によって弾性率や破壊強度が変化するので,任意の弾性率の試料を作成することができる. その結果,試料の弾性率によって平均双晶密度と応力との関係式はそれぞれ異なるが,一方でたとえ弾性率が変わっても,平均双晶密度は試料全体に生じた歪みと正比例することがわかった.この関係は、天然の砂岩を含めて一つの式で表される.この新しい式は天然岩石やモルタルの様々な材料に適用でき,カルサイトの双晶密度から歪みが得られる.もし当該試料が弾性変形を被ったと仮定できるなら,試料の弾性率と双晶密度から得られた歪の値から古応力を推定することができる(坂口・安藤,特願2020-118208).

引用文献
Sakaguchi A., Sakaguchi H., Nishiura D., Nakatani M. and Yoshida S., Elastic stress indication in elastically rebounded rock, Geophysical Research Letters, 38, L09316, doi:10.1029/2011GL047055, 2011.
坂口有人・安藤航平、セメントを主体とする複合材における応力・歪みの履歴推定方法、特願2020-118208