日本地質学会第129年学術大会

講演情報

シンポジウム

S1.[シンポ]関東の地質:露頭から大深度地下まで(一般公募なし)

[1oral301-06] S1.[シンポ]関東の地質:露頭から大深度地下まで(一般公募なし)

2022年9月4日(日) 09:00 〜 12:00 口頭第3会場 (14号館102教室)

座長:加藤 潔(駒澤大学)、笠間 友博(箱根ジオパーク推進協議会)

10:00 〜 10:30

[S1-O-3] 日本列島の第四紀東西圧縮の原因と房総前弧海盆の急激な隆起テクトニクス

*高橋 雅紀1 (1. 産総研地質調査総合センター)

キーワード:テクトニクス、日本列島、後期新生代、前弧海盆、地質

大部分がユーラシアプレートに属する日本列島には,南からフィリピン海プレートが,東から太平洋プレートが沈み込んでいる.日本列島のうち,本州(東北日本から西南日本)の広い範囲は東西圧縮応力場におかれ,内陸地震が頻発し,断層運動に伴って山地は隆起し内陸盆地は沈降している.この東西短縮テクトニクスの原因について,3つのプレートの運動と,3つの収束境界(海溝)が一点に集まる海溝型三重会合点の三次元幾何学を組み合わせた思考実験を行った.
 その結果,これまで,西に移動する太平洋プレートの運動そのものに起因すると考えられてきた東西短縮テクトニクスの原因が,北西に移動するフィリピン海プレートの運動によってコントロールされていることが判明した.すなわち,フィリピン海プレートの運動により三重会合点が西に移動し,追随するように日本海溝も西に移動する.その結果,東北日本も西に移動するが,日本海の海洋リソスフェアに阻まれるため,東北日本の島弧地殻は東西に短縮せざるを得ない.このことは,内陸地震の原因が,太平洋プレートの運動そのものではなく,沈み込み位置(日本海溝)の移動であることを意味している.
 一方,300万年前以降も沈降を続け,厚い上総層群を堆積させてきた房総前弧海盆は数十万年前から隆起に転じており,一様な東西圧縮でこの地殻変動の変化を説明することはできない.そこで,関東地方周辺のプレート運動について三次元幾何学的に再検討したところ,太平洋プレートに進路を遮られたフィリピン海プレートそのものの変形(座屈褶曲)で説明することが可能である.言い換えるならば,本来沈降場であり,深い海域であり続けるはずの房総半島は,フィリピン海プレートの変形によって急激に隆起し山地(清澄山系)が形成されていると考えられる.このように,地質学的に認識されている日本列島の第四紀テクトニクスは,陸側プレートに沈み込む太平洋プレートとフィリピン海プレートの運動によって,合理的に説明することが可能となった.