129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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symposium

S1. [Symposium] Geology of the Kanto Plain ーFrom outcrops to deep underground

[1oral301-06] S1. [Symposium] Geology of the Kanto Plain ーFrom outcrops to deep underground

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 12:00 PM oral room 3 (Build. 14, 102)

Chiar:Kiyoshi KATO, Tomohiro KASAMA

11:30 AM - 12:00 PM

[S1-O-6] Reconstruction of the emergence in the Kanto area deduced from the Quaternary Kazusa Group and tephras

*Takehiko Suzuki1 (1. Dept. of Geography, Tokyo Metropolitan University)

Keywords:Quaternary, tephra, Kanto

はじめに
 国内最大の平野である関東平野は,かつての海域(一部は深海域)が堆積と隆起により陸地に至った地域といえる.関東平野に先立つこの海域の一部は,海溝の陸側に発達する前弧海盆と考えられており,その凹地地形は上総トラフとよばれ海成層を主体とする堆積物により埋積されている(貝塚ほか,2000).上総トラフを埋積した堆積物のうち第四紀に堆積したものは下位から上総層群,下総層群,段丘構成層,沖積層などである.上総層群・下総層群の堆積期間は第四紀の大半を占め,関東平野の陸化過程を復元する上で必要な情報を多く含む.
 上総層群のおおよそ分布・構造・年代・堆積環境は明らかにされている.しかし各地地下に分布する上総層群の深度と年代,堆積環境については未解明な部分が多い.上総層群には年代を知る手がかりとなるテフラが多く含まれ,堆積環境を復元する微化石も含まれている.これらにより前弧海盆から平野への地形変化過程を詳細に復元することができる.本講演ではこうした研究をレビューし,関連する新たなデータを紹介する.

上総層群の類型化
 関東における海域から陸域への地形変化過程を整理する上で上総層群を層相に基づき類型化することが役立つ(多摩川中上流域上総層群調査研究プロジェクト実行委員会,2020).類型化はそれらの多くが揃う関東西部での模式的な累層名などから,友田層型,加住層型,北多摩層型,小山田層型,段丘礫層型に整理できる.この類型化は堆積環境に対応しており,地域や時代によるその変化は各地域の古地理変遷を反映している.友田層型,加住層型,段丘礫層型は陸成層からなり,友田層型は泥炭質シルトや角礫を含むシルト・砂の互層であり,局所的な分布を示す.加住層型・段丘礫層型は網状流河川により運搬された礫質堆積物からなり,堆積時に扇状地を出現させたと考えられる.
 これに対し北多摩層型,小山田層型は主体が海成層からなる.北多摩層型の典型例は,北多摩層(東京都土木技術研究所,1996)とよばれるシルト層を主体とした堆積物で,堆積環境は外洋性から半深海性と解釈されている.北多摩層型堆積時の水深は氷河性海面変動幅よりも深いために継続的に海域であった.小山田層型は礫層,泥層,砂層からなる堆積物であり多摩丘陵西部において6 サイクルが存在し,氷河性海面変動の影響を受けて形成されたことが示されている(高野,1994).小山田層型の層相変化は氷河性海面変動により陸域(礫層堆積時)と海域(泥層,砂層堆積時)が交互に出現したことを示しており,相対的な高海面期には大陸棚であった地形環境が推定される.

海域から陸域への地形変化過程
 前弧海盆から平野への変化過程を示すもっとも単純な図式は,北多摩層型→小山田層型→段丘礫層型への変化である.房総半島中部の上総層群が北多摩層型,下総層群が小山田層型に相当するのは同地域が外洋性~半深海性から陸棚環境に変化してきたことを示す.こうした変化は前弧海盆における堆積の進行や隆起で説明できる.一方で小山田層型の存在,とくに地下に小山田層型の累重が見られる場合,沈降運動が継続してきたことを示唆し,長期にわたる地殻変動を復元する上で欠かせない.房総半島中部を除くと,小山田層型は多摩丘陵西部に加えて,東京西部の立川・狭山丘陵付近でおよそ2.0 Ma~1.4 Ma頃まで形成されたと考えられる.この小山田層型の出現年代は西方ほど古く東方ほど新しい傾向にあり,その傾向は房総半島に続く.講演ではその中間域にあたる武蔵野台地北東部から東京低地にかけてのデータを紹介する.
 ところで納谷ほか(2017)によれば埼玉県北東部地下では小山田層型を示すと考えられるサイクリックな堆積物が地下に厚く伏在し,その年代は少なくとも1.6 Ma以降最終間氷期最盛期MIS 5e 堆積物まで累重するとされた.MIS 5e海成面の高度は関東平野中央部の埼玉県北東部付近で海成層上面高度が10 ~20 m(小池・町田,2001)であり関東平野でもっとも低く,小山田層型累重傾向にあることに調和的である.一方でMIS 5e海成面がプラスであることは既に隆起傾向に転じており,関東平野全域において小山田層型,すなわち沈降域が消滅していることを示唆するのかもしれない.

引用文献:貝塚ほか(2000)日本の地形4関東・伊豆小笠原,東大出版会.多摩川中上流域上総層群調査研究プロジェクト実行委員会(2020) 同プロジェクト報告書.東京都土木技術研究所(1996)東京都(区部)大深度地下地盤図 —東京都地質図集6—.高野 (1994) 地質学雑誌, 100, 675-691.納谷ほか(2017)地質学雑誌,123,637-652.小池・町田(2001)日本の海成段丘アトラス,東大出版会.