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[T1-O-1] カナダスレーブ地質区アカスタ片麻岩の黒雲母と角閃石のK-Ar及び40Ar/39Ar年代
キーワード:スレーブ地質区、アカスタ片麻岩、黒雲母-角閃石、K-Ar年代、40Ar/39Ar年代
カナダのSlave地質区は、カナディアンシールドの北西端にある始生代の花崗岩-表成岩の分布地帯である。表成岩の岩石は、主に変成されたタービダイトと苦鉄質から珪長質の変成火山岩で構成されている。Slave地質区には、2.7〜2.5 Gaの火成・変成岩だけでなくより古い片麻岩も分布している。その東はThelon変動帯(2.0〜1.9 Ga)、西はWopmay変動帯(1.9〜1.8 Ga)に境されている。アカスタ片麻岩はSlave地質区の最西端のWopmay変動帯と接する部分とそれより地質区内部に露出している。Bowring et al. (1989, Geology)のジルコンSHRIMP U-Pb分析により、スレーブ地質区のAkasta片麻岩の源岩は地球表層岩としては最も古い(3.96Ga)とされた。Wopmay変動帯とAkasta片麻岩の境界を通る東西18 kmに及ぶトラバースに沿って27個の岩石試料を系統的に採集し、その岩石から黒雲母と角閃石を分離しK-Ar(40Ar / 39Ar)年代測定を実施した。その目的はWopmay変動がAkasta片麻岩に影響を与えたかどうかを見るためである。もし与えたとすればその影響の強さと範囲を明らかにするためである。そのためにWopmay変動帯からも4試料採集しその黒雲母のK-Ar年代測定を実施した。Bowring et al. (1989)の研究で採集された試料付近からも試料を採集し、年代測定を実施した。 Wopmay変動帯の黒雲母K-Ar年代は1810〜1854Maでありこれまでに知られていた年代と誤差の範囲で一致した。Akasta片麻岩の黒雲母K-Ar年代は特に若い1試料(1711Ma)を除くと1779〜1884 Maであり、年代のばらつきの範囲はWopmay変動帯のそれより少し広いが誤差の範囲で大きな差がない。Wopmay変動帯から14〜18km東側のAkasta片麻岩の黒雲母K-Ar年代はWopmay変動帯の黒雲母K-Ar年代と誤差の範囲で一致する。Akasta片麻岩の角閃石K-Ar年代は1685〜1952Maであり、黒雲母の年代幅より大きい。より古い試料とより若い試料の存在がその幅を広くしている。しかしながら誤差の範囲内でWopmay変動の年代と大きな差はない。 レーザー段階加熱40Ar/39Ar 単結晶年代測定も実施した。Wopmay変動帯の3試料からの黒雲母40Ar/39Ar年代スペクトルはプラトー年代が定義された(1826±21, 1885±13, 1866±18 Ma)。このプラトー年代はK-Ar年代と誤差の範囲で一致している。Akasta片麻岩の5試料中2試料からの黒雲母40Ar/39Ar年代スペクトルもプラトー年代が定義された(1935±14, 1951±11 Ma)。このプラトー年代はWopmay変動帯の黒雲母プラトー年代より少し古い結果であった。角閃石の年代スペクトルはイレギュラーであった。しかし13試料中の1試料でプラトー年代が定義された(1847±15 Ma)。このプラトー年代はWopmay変動帯の黒雲母プラトー年代に一致している。 Wopmay変動帯に近いAkasta片麻岩はWopmay変動(1.9〜1.8 Ga)の影響を強く受け、黒雲母と角閃石のK-Ar系がリセットされたと結論される。一方、Wopmay変動以降の局所的な熱源の影響で部分的な若返り現象もあったと言える。