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[T1-O-2] 釜石スカルン鉱床中のザクロ石U-Pb年代とスカルンの地球化学的特徴
キーワード:ザクロ石U-Pb年代、LA-ICP-MS、スカルン、ザクロ石、釜石
銅・鉄スカルン鉱床である釜石鉱山は,北上山地の中央東部,早池峰構造線の南西に位置し,中・古生代堆積岩中の石灰岩と白亜紀初期の蟹岳複合岩体との接触部にスカルンを形成している.釜石鉱山周辺で主に分布するのは,石炭系・二畳系の堆積岩,蟹岳複合岩体,栗橋花崗閃緑岩,ひん岩であり,蟹岳複合岩体の周囲にスカルン及び鉱床が胚胎される.過去の地質学的研究や酸素・炭素同位体の研究,古地磁気学的研究から,閃緑岩及び閃緑ひん岩の貫入後に蟹岳花崗閃緑岩が貫入し,蟹岳花崗閃緑岩の貫入に伴ってスカルン化及び鉱化作用が起こったことが明らかとなっている.本研究では,釜石鉱山に産する火成岩類及びスカルンの化学的特徴を検討し,火成活動とスカルン鉱化作用の時期を明らかにするため,LA-ICP-MSを用いてスカルン中のザクロ石のU-Pb年代測定を行った. 本研究で検討した釜石鉱山新山鉱床中のザクロ石スカルン中のザクロ石の組成範囲はGrs50-60And32-43Hgr4-6Pyp0-2Sps1とグロシュラー成分に富み,また佐比内鉱床中のザクロ石の組成範囲はAnd66-80Grs16-33Pyp0-3Sps0-1Hgr0-1とアンドラダイト成分に富む.これらグロシュラー成分に富むザクロ石とアンドラダイト成分に富むザクロ石の年代測定を試みると共に微量元素を含む化学的特徴を検討した.U-Pb年代測定では,放射壊変で生じた鉛を測定するため,初生鉛は少ない又は含有しないほうがよいが,ジルコンのような珪酸塩鉱物に比べ,ザクロ石は初生鉛を多く含む.ウランの放射性壊変で生じた鉛に比較して初生鉛が多いと,精度の良い年代測定は困難となる.そのため,ウランがある程度含有される必要がある.ザクロ石中のウラン濃度の分布は一般的に不均質であることから,ウラン濃度の高い領域を測定することが望ましい.そのため,ザクロ石中のウラン濃度とその他の元素の相関も検討した.秋田大学理工学研究科に設置されたLA-ICP-MS(ESI NWR193UCとAgilent 7700x)を使用した.一次標準物質には,91500ジルコン,QC04ザクロ石を用い,二次標準物質としてIUC-1ザクロ石を用いて分析を行なった.ザクロ石のU-Pb年代は,120.7 ± 8.7 Ma(U濃度0.1-4.3 ppm)と116.3 ± 3.8 Ma(U濃度 0.2-2.2 ppm)と得られ,これらの結果は蟹岳花崗閃緑岩から得られたジルコンのU-Pb年代値(123.43±0.70Ma)と誤差範囲で一致した結果を示した.またザクロ石中のウラン濃度はチタンと正の相関を示し,ザクロ石中のチタン濃度がウラン濃度の指標となる可能性がある.