10:00 AM - 10:15 AM
[T7-O-4] Petrogenesis of Takada granodiorite in Okuizumo area, Shimane prefecture, SW Japan
Keywords:Metaluminous Granitoids, San'in batholith, SW Japan, Takada granodiorite
西南日本内帯の山陰帯には, 白亜紀~古第三紀の花崗岩類が広く分布して山陰バソリスを形成する. 大部分がパーアルミナス花崗岩で,小規模なメタアルミナス花崗岩を伴う.パーアルミナス花崗岩は地殻のリサイクルによる成因が議論されている (薬師寺他, 2012; 岩田ほか, 2013).一方,メタアルミナス花崗岩の成因論はまだよく分かっていない. 本研究では,山陰バソリスのメタアルミナス花崗岩のうち,バソリス中央部の高田花崗閃緑岩を研究対象とした. 本発表では地質調査, 岩石記載,および全岩化学分析の結果について報告する.
高田花崗閃緑岩は西田ほか (2005) により命名され,石英閃緑岩,トーナル岩,および花崗閃緑岩の様々な岩相を有する.薬師寺ほか (2012) は岩体の西部において石英閃緑岩とトーナル岩とがミングリングで接することを示し, 両者の化学組成から異なるマグマに由来することを示した.石英閃緑岩は既存研究の記載を参考に小木石英閃緑岩に対比され, トーナル岩は尾原トーナル岩と呼称された. 一方,岩体東部では主に花崗閃緑岩が産する.本研究の地質調査では, この地域の岩石が普通角閃石黒雲母花崗閃緑岩, 斑状普通角閃石含有黒雲母花崗閃緑岩, および斑状黒雲母花崗閃緑岩の三岩相に区分されることが明らかとなった.
本研究では山陰バソリスのメタアルミナス花崗岩の成因を考察するため,微量元素を用いたバッチ融解モデルを検討した.今回は同地の石英閃緑岩を起源物質の代表例として設定した.トーナル岩はDefant and Drummond (1990) の横軸がY, 縦軸がSr/Yの図から高圧下で生産されるアダカイトのようなものではないと判断された. そこで,地殻内部でのマグマ生成を考え,Beard and Lofgren (1991) が1~6.9kbの圧力で行った融解実験をモデル計算の参考にした.彼らは,水に飽和した融解では角閃石が溶け残り, 水に不飽和な融解では斜長石が溶け残ることを示した. 角閃石と斜長石は微量元素の分配係数が異なるため, 両条件でモデルを検討した. モデル計算で得られた微量元素をMORBで規格化したスパイダー図では,水に飽和した条件ではLIL元素,HFS元素,および希土類元素のいずれもトーナル岩に比較的近い組成を示す.水に不飽和な条件ではトーナル岩に比べてLIL元素, および希土類元素がやや高い組成を示す. ただし,水に飽和した条件と不飽和な条件のいずれも,トーナル岩の組成パターンに対して大きな違いは認められない.
ここでBeard and Lofgren(1991)の実験で得られたメルトの主成分元素を見ると, 水に飽和した条件では相対的にAl2O3に富んでMgOに乏しく,水に不飽和な条件ではその逆になる.これは,水に飽和な条件では斜長石が溶け残らないためにメルトが高Al2O3となり,角閃石が溶け残るため低MgOとなることで起こる.高田花崗閃緑岩のトーナル岩のAl2O3とMgOの量は,水に不飽和な条件でのメルトに近い.以上よりこのトーナル岩マグマは比較的に水に不飽和な条件で苦鉄質岩が融解して発生したことが予想される.
参考文献: 薬師寺ほか, 2012, 地質学雑誌, 118, 1, 20-38 岩田ほか, 2013, 地質学雑誌, 119, 3, 190-204 西田ほか, 2005, 地質学雑誌, 111, 123-140 Marc J. Defant and Mark S. Drummond, Science, 1990, 347, 662-665. Beard, J.S. and Lofgren, G.E., 1991, Journal of Petrology, 1991, 32, 365-401
高田花崗閃緑岩は西田ほか (2005) により命名され,石英閃緑岩,トーナル岩,および花崗閃緑岩の様々な岩相を有する.薬師寺ほか (2012) は岩体の西部において石英閃緑岩とトーナル岩とがミングリングで接することを示し, 両者の化学組成から異なるマグマに由来することを示した.石英閃緑岩は既存研究の記載を参考に小木石英閃緑岩に対比され, トーナル岩は尾原トーナル岩と呼称された. 一方,岩体東部では主に花崗閃緑岩が産する.本研究の地質調査では, この地域の岩石が普通角閃石黒雲母花崗閃緑岩, 斑状普通角閃石含有黒雲母花崗閃緑岩, および斑状黒雲母花崗閃緑岩の三岩相に区分されることが明らかとなった.
本研究では山陰バソリスのメタアルミナス花崗岩の成因を考察するため,微量元素を用いたバッチ融解モデルを検討した.今回は同地の石英閃緑岩を起源物質の代表例として設定した.トーナル岩はDefant and Drummond (1990) の横軸がY, 縦軸がSr/Yの図から高圧下で生産されるアダカイトのようなものではないと判断された. そこで,地殻内部でのマグマ生成を考え,Beard and Lofgren (1991) が1~6.9kbの圧力で行った融解実験をモデル計算の参考にした.彼らは,水に飽和した融解では角閃石が溶け残り, 水に不飽和な融解では斜長石が溶け残ることを示した. 角閃石と斜長石は微量元素の分配係数が異なるため, 両条件でモデルを検討した. モデル計算で得られた微量元素をMORBで規格化したスパイダー図では,水に飽和した条件ではLIL元素,HFS元素,および希土類元素のいずれもトーナル岩に比較的近い組成を示す.水に不飽和な条件ではトーナル岩に比べてLIL元素, および希土類元素がやや高い組成を示す. ただし,水に飽和した条件と不飽和な条件のいずれも,トーナル岩の組成パターンに対して大きな違いは認められない.
ここでBeard and Lofgren(1991)の実験で得られたメルトの主成分元素を見ると, 水に飽和した条件では相対的にAl2O3に富んでMgOに乏しく,水に不飽和な条件ではその逆になる.これは,水に飽和な条件では斜長石が溶け残らないためにメルトが高Al2O3となり,角閃石が溶け残るため低MgOとなることで起こる.高田花崗閃緑岩のトーナル岩のAl2O3とMgOの量は,水に不飽和な条件でのメルトに近い.以上よりこのトーナル岩マグマは比較的に水に不飽和な条件で苦鉄質岩が融解して発生したことが予想される.
参考文献: 薬師寺ほか, 2012, 地質学雑誌, 118, 1, 20-38 岩田ほか, 2013, 地質学雑誌, 119, 3, 190-204 西田ほか, 2005, 地質学雑誌, 111, 123-140 Marc J. Defant and Mark S. Drummond, Science, 1990, 347, 662-665. Beard, J.S. and Lofgren, G.E., 1991, Journal of Petrology, 1991, 32, 365-401