11:15 AM - 11:30 AM
[T12-O-1] Geology of the obsidian lithofacies of the Shiroyama lava on Himeshima Island, Japan
Keywords:Obsidian, Himeshima, Rhyolite, Lava, Geopark
<はじめに> 黒曜石の形成を伴う流紋岩溶岩の噴出は事例の少ない現象である。そのため詳細を理解するには過去の噴出物を用いた地質学的な研究が求められる。そこで本研究では、大分県姫島に分布する、黒曜石相を含む流紋岩組成の城山溶岩の研究を行った。この黒曜石は国の天然記念物および日本ジオパークに認定されている。城山溶岩は10-30万年の噴出年代が報告されている (兼岡・鈴木, 1970; 鎌田, 1988; 松本ほか, 2010)。基本的な地質学、岩石学的な研究成果は伊藤ほか (1989)に記されている。
<地質調査結果> 城山溶岩は最大層厚52mで基底は露出していない。観音崎を北端にして南に約480mに渡り分布している。観音崎周辺の城山溶岩下部にはペペライトや多角形割れ目、パーライトが発達しており、水との接触があったことが推測される。ただし溶岩上部や観音崎以南にはそのような特徴は見られないため、観音崎周辺でのみ浅海環境で流動し、大部分は陸上を流動したと考えられる。黒曜石 (obsidian lithofacies)は観音崎北端にわずかに分布があるのみで、その南側で観音崎火砕岩と接する (伊藤ほか, 1989)。またobsidian lithofaciesは、溶岩の大部分を構成する発泡する岩相 (vesicular lithofacies)に漸移する。Obsidian lithofaciesは構造の違いから東西方向に伸びる3つの帯状領域に分けられ、観音崎火砕岩に接する南側から、brecciated zone (BZ), sheared brecciated zone (SZ), massive to brecciated zone (MZ)とした。観音崎火砕岩と接するBZは1m以内の幅で、主に数cm程度の黒曜石クラストと同質マトリクスから成る。また観音崎火砕岩のクラストも混在している。クラストの長軸は鉛直方向に配列することが多い。SZは13m程の幅で、帯状構造の伸びに平行な概ね東西走向の面構造が発達する。面構造は、鉛直方向に長軸を持ち各々長さ20cm程度の偏平な黒曜石で規定されている。この黒曜石の表面には、鉛直方向に平行に発達する多数の細い溝でできた線構造が確認できる。MZは22m程の幅で、主に塊状の黒曜石から成る。塊状の黒曜石には割れ目のネットワークがよく発達する。黒曜石は全体的に細かく発泡しており灰白色を呈するが、割れ目沿いの幅数cm程度の領域は発泡しておらず黒色を呈する。この割れ目を含む領域が塑性変形することもあり、そのような部分では発泡度および色の異なる領域が流紋岩に特徴的な流理構造に遷移している。
<考察> Obsidian lithofaciesのBZに発達するクラストの鉛直方向の定向配列やSZの鉛直方向の線構造は、セントへレンズ山の露出した火道 (Pallister et al., 2012)でも観察されることから、城山溶岩のobsidian lithofaciesは侵食された火道であると考えられる。火道の北側の境界は海で確認できないが、南では観音崎火砕岩を母岩にしてマグマが上昇し、母岩に接する部分では火道マグマの脆性破壊が起き角礫化したのだろう (BZ)。このマグマ上昇により、接している観音崎火砕岩も侵食されクラストは火道内に取り込まれた。BZのクラストは、火道上昇時に母岩との剪断により鉛直方向に配列したと考えられる。BZより内側でも火道マグマの脆性破壊は起きたが、歪み速度が減少もしくは温度上昇した時にクラストは塑性変形に転じて偏平化し、面構造や線構造が発達した (SZ)。火道の中心部では、歪み速度の上昇もしくは温度下降した時に割れ目ネットワークが発達したと考えられる。その割れ目に接したマグマからは拡散や気泡の崩壊により脱ガスが進行することが期待される (Tuffen et al., 2003)。それにより割れ目沿いでは気泡が消失し、その後、歪み速度の減少もしくは温度上昇により割れ目は癒着した。さらにその部分が塑性変形することで、発泡度の異なる組織が流理構造に発達したと考えられる (MZ)。
<引用文献> 伊藤ほか (1997) 5万分の1地質図幅「姫島」. 兼岡・鈴木 (1970)地質学雑誌, 76, p309-313. 鎌田 (1988), 月刊地球, 10, p568-574. 松本ほか (2010) 火山学会要旨, p132. Pallister et al., (2012) Geological Society of America Bulletin, 125, p359-376. Tuffen et al. (2003) Geology, 31, p1089-1092.
<地質調査結果> 城山溶岩は最大層厚52mで基底は露出していない。観音崎を北端にして南に約480mに渡り分布している。観音崎周辺の城山溶岩下部にはペペライトや多角形割れ目、パーライトが発達しており、水との接触があったことが推測される。ただし溶岩上部や観音崎以南にはそのような特徴は見られないため、観音崎周辺でのみ浅海環境で流動し、大部分は陸上を流動したと考えられる。黒曜石 (obsidian lithofacies)は観音崎北端にわずかに分布があるのみで、その南側で観音崎火砕岩と接する (伊藤ほか, 1989)。またobsidian lithofaciesは、溶岩の大部分を構成する発泡する岩相 (vesicular lithofacies)に漸移する。Obsidian lithofaciesは構造の違いから東西方向に伸びる3つの帯状領域に分けられ、観音崎火砕岩に接する南側から、brecciated zone (BZ), sheared brecciated zone (SZ), massive to brecciated zone (MZ)とした。観音崎火砕岩と接するBZは1m以内の幅で、主に数cm程度の黒曜石クラストと同質マトリクスから成る。また観音崎火砕岩のクラストも混在している。クラストの長軸は鉛直方向に配列することが多い。SZは13m程の幅で、帯状構造の伸びに平行な概ね東西走向の面構造が発達する。面構造は、鉛直方向に長軸を持ち各々長さ20cm程度の偏平な黒曜石で規定されている。この黒曜石の表面には、鉛直方向に平行に発達する多数の細い溝でできた線構造が確認できる。MZは22m程の幅で、主に塊状の黒曜石から成る。塊状の黒曜石には割れ目のネットワークがよく発達する。黒曜石は全体的に細かく発泡しており灰白色を呈するが、割れ目沿いの幅数cm程度の領域は発泡しておらず黒色を呈する。この割れ目を含む領域が塑性変形することもあり、そのような部分では発泡度および色の異なる領域が流紋岩に特徴的な流理構造に遷移している。
<考察> Obsidian lithofaciesのBZに発達するクラストの鉛直方向の定向配列やSZの鉛直方向の線構造は、セントへレンズ山の露出した火道 (Pallister et al., 2012)でも観察されることから、城山溶岩のobsidian lithofaciesは侵食された火道であると考えられる。火道の北側の境界は海で確認できないが、南では観音崎火砕岩を母岩にしてマグマが上昇し、母岩に接する部分では火道マグマの脆性破壊が起き角礫化したのだろう (BZ)。このマグマ上昇により、接している観音崎火砕岩も侵食されクラストは火道内に取り込まれた。BZのクラストは、火道上昇時に母岩との剪断により鉛直方向に配列したと考えられる。BZより内側でも火道マグマの脆性破壊は起きたが、歪み速度が減少もしくは温度上昇した時にクラストは塑性変形に転じて偏平化し、面構造や線構造が発達した (SZ)。火道の中心部では、歪み速度の上昇もしくは温度下降した時に割れ目ネットワークが発達したと考えられる。その割れ目に接したマグマからは拡散や気泡の崩壊により脱ガスが進行することが期待される (Tuffen et al., 2003)。それにより割れ目沿いでは気泡が消失し、その後、歪み速度の減少もしくは温度上昇により割れ目は癒着した。さらにその部分が塑性変形することで、発泡度の異なる組織が流理構造に発達したと考えられる (MZ)。
<引用文献> 伊藤ほか (1997) 5万分の1地質図幅「姫島」. 兼岡・鈴木 (1970)地質学雑誌, 76, p309-313. 鎌田 (1988), 月刊地球, 10, p568-574. 松本ほか (2010) 火山学会要旨, p132. Pallister et al., (2012) Geological Society of America Bulletin, 125, p359-376. Tuffen et al. (2003) Geology, 31, p1089-1092.