129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T11.[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

[1oral411-17] T11.[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Sun. Sep 4, 2022 1:30 PM - 3:30 PM oral room 4 (Build. 14, 401)

Chiar:Dan MATSUMOTO(AIST), Miwa Yokokawa

2:15 PM - 2:30 PM

[T11-O-4] The origin of changes in sedimentary structures in hybrid event beds: Estimation of the flow processes based on grain fabric analysis

*Ryogo TANAKA1, Hajime NARUSE1 (1. Kyoto Univ.)

Keywords:flow transformation, convolutional neural network, Otadai Formation, early Pleistocene

深海の重力流堆積物には,多様な堆積構造区分が内部に発達することが知られている.Haughton et al. (2009) は大型の泥質礫を多く含む粗粒重力流堆積物の堆積構造を記載し,それらが標準的にはH1-H5の5つに区分されるとした.そして,重力流が移動中に土石流から混濁流(もしくはその逆)に移行するflow transformation現象によりこれら不連続な堆積構造区分が形成されると解釈し,このような層をハイブリッドイベント層と呼んだ.しかしながら,上記のような肉眼観察による区分の成因がflow transformationと一対一で対応するのかについては,十分に実証されてはいない.特に,砂岩中の塊状構造は土石流でも混濁流でも形成されうるため,肉眼観察から堆積構造区分の成因を判断することは難しい.
 そこで,本研究は,粗粒重力流堆積物の各堆積構造区分がflow transformationにより形成される現象なのか,粒子配列に基づき検証することを試みた.既存研究から,一見して塊状であっても,粒子配列から流れのプロセスを判別できることが指摘されている(Naruse and Masuda, 2006).粒子配列解析にあたっては,樹脂で固定した砂岩試料の研磨断面をデスクトップスキャナーで撮影した.そして,研磨断面画像から自動的に粒子を識別する畳み込みニューラルネットワークを作成し,粒子長軸の方向分布を測定した.
 検討対象とされた大田代層は,千葉県房総半島に分布する海底扇状地堆積物である.本研究では,大田代層の火山灰鍵層O7近傍の層準に見られる2枚の砂層を検討の対象とする(Fukuda and Naruse, 2020).
 本研究で解析した2枚の堆積層には,下位から順に以下の四つの堆積構造区分が観察された.区分I: 厚さは約20 cmであり,主に粗粒砂〜極粗粒砂で構成され,貝破片を含む.塊状または弱い級化構造を示し,最下部では下位の層を侵食する.区分Ⅱ:厚さ15 cmで,区分Iとの境界は粒度の急激な細粒化によって明瞭に識別される.堆積物の淘汰は悪く,主に細粒砂〜中粒砂であり,粒子支持の大型(直径10 cm程度)の泥質礫を多数含む.区分Ⅲ:主に極細粒砂〜細粒砂で,小型(直径約2 mm以下)の泥質礫のみが散在的に含まれている.塊状または弱い級化を示し,厚さは15 cm程度である.区分Ⅱとの境界は明瞭である.区分Ⅳ:砂層の最上部10 cm程度を占め,主に極細粒砂〜細粒砂で構成され,葉理構造が観察される.
 粒子配列を解析した結果,区分Ⅲ下部の特徴が他とは大きく異なることが明らかになった.区分Ⅰの粒子配列は10–20°の低角で上流あるいは下流に傾いたインブリケーションを示すのに対して,区分Ⅲは下部では40–60°の高角なインブリケーション角を示す.この区分Ⅲの上部では,インブリケーション角が10–20°と再び低角になる.
 粒子配列の特徴から,区分Ⅰは高密度混濁流堆積物であるのに対し,区分ⅡおよびⅢの下部は土石流堆積物と推定される.Naruse and Masuda (2006) は,土石流堆積物の粒子インブリケーション角が基底部では低角であるのに対し上部では40–80°と高角になることを示した.一方,タービダイトの粒子配列は一貫して低角(10-20°)であった.すなわち,区分Ⅱおよび区分Ⅲ下部の粒子配列はどちらも土石流堆積物と類似し,区分IとIII上部はタービダイトの粒子配列の特徴と一致する.
 本研究の結果は,粗粒重力流堆積物の堆積構造区分の成因が必ずしもflow transformationとは限らないことを表す.区分Ⅱと区分Ⅲ下部の境界は明瞭だが,粒子配列はどちらも土石流堆積物のものであり,flow transformationとは無関係に区分境界が形成されていることがわかる.また,肉眼では一連の区分Ⅲだが,下部と上部で流れの状態が異なる可能性は高い.すなわち,flow transformationが起こっても堆積構造区分には反映されない場合もあることが伺える.今後は,flow transformation現象と堆積構造区分の関係を理解するため,実験や理論に基づく検討が必要となるだろう.

文献
Fukuda, S. and Naruse, H., 2020, Jour. Sed. Res., 90, 1410–1435.
Haughton, P., Davis, C., McCaffrey, W., and Barker, S., 2009, Mar. and Petr. Geol., 26, 1900–1918.
Naruse, H. and Masuda, F., 2006, Jour. Sed. Res., 76, 854–865.